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【連載開始3ヶ月でPV10万達成!&第三部開始!】病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第二部【王都陰謀編】

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第三十九話:王との面談とお転婆王女【後編】

「いまは客人を迎えている。後にせよ」

「そのお客様にお目にかかりたく参上したのです」

 ヴァレリウス王が俺とギデオン殿を見た。珍しく本当に困っている様子だった。


「どうも娘のリヴィアが来ているようだ」

「リヴィア殿下がですか。これはまたどのような訳で?」

 当惑顔のギデオン殿が答えると、陛下が俺を見て笑った。

「娘はお主に興味があるのだ」

「私にですか?」

「そうだ。大方どこかで今日、お主がここに来ることを知って来たのだろう。困った娘だ……」


 そんな陛下の様子に頓着することなく、扉を叩く音が大きくなる。

「陛下、陛下、……お父様! 入れてくださいませ。こちらにライル殿がいらっしゃるのは分かっております! どうしても開けないというなら、私は……」

 なおも言い募ろうとする扉の向こうの娘に向かって陛下は、

「分かった! その代わりライル殿に会うだけだぞ。無用な質問はしないと約束せよ」

「はい!分かりました!」

 すぐに元気な返事が返ってきた。ヴァレリウス王はため息を一つつくと、

「入れてやれ」と言った。


「すまぬな。我が娘ながらなかなか手強くてな。扉を壊されては敵わぬので、お主たちには悪いがもう少し付き合ってくれ」


 そう言い終わると同時に扉が開いた。勢いよく飛び込んできたのは一人の少女だった。柔らかな栗色の髪を揺らし、大きな瞳を好奇心に輝かせている。セレスたちと同じ年頃のように見えたが、彼女からは剣士や魔女の張り詰めた空気ではなく、もっと天真爛漫な、目に映る全てのものに興味を持ち、手を出さずにはいられない性格が伝わってきた。

 彼女は、部屋に入ると、ちらっと俺を見て、それからギデオン殿に気づいた。

「まあ、ギデオン様!」

 リヴィアは驚いたように声を上げ、慌ててギデオン殿に礼をした。

「これはご無礼を。ギデオン様もいらっしゃったのですね」

「リヴィア殿下。ご機嫌麗しゅう」ギデオン殿が丁寧に一礼する。

「ギデオン様、先日の騎士団での剣術指導、拝見させていただきました。素晴らしかったですわ!」

「恐れ入ります」

 リヴィアはにこやかにギデオン殿に挨拶を終えると、まず父であるヴァレリウス王に駆け寄った。王族らしく定まった挨拶をすると、ぱっと口調を変えて屈託なく話し始める。

「お父様、お加減はいかがですか!」

「見ての通りだ。このライル殿のおかげで、ずいぶん良くなった」

「まあ、本当ですのね! 顔色がとても良いですわ!」


 彼女、リヴィア王女は、そう言って喜ぶと、次の瞬間、その大きな瞳で、まっすぐに俺を射抜いた。

「あなたが、ライル・アッシュフィールドですわね!?」

「あ、はい」

 俺が戸惑いながら頷くと、彼女は俺の目の前まで詰め寄ってきた。

「お噂はかねがね伺っておりました!わたくしの父の命を救い、国の危機を救った、謎の英雄!一体どのような方かと思っておりましたの!」

 その距離の近さと、悪意のない純粋な好奇心に、俺はただ後ずさるしかなかった。


「こら、リヴィア。失礼であろう」

 王が呆れたような声が飛ぶ。

「ですが、お父様!」

 リヴィア王女は、少しも臆することなく振り返った。

「この方が、あの兄上が、わざわざご自分からお茶会に招待なさった、ライル殿ですのよ? わたくしでさえ、もう二年もお会いしていないのに。興味を持つなという方が無理ですわ!」


 彼女は、再び俺に向き直ると、興奮した様子で矢継ぎ早に尋ねてきた。

「本当に、どうして一人で処刑人たちを倒せたのですか? なぜ父上に触れただけでお元気に? どうしてお兄様はあなたに会いたがっているのですか? ねえ、あなたのその力は、一体――」


「リヴィア」

 王の、今度は少しだけ威厳のこもった声が、彼女の言葉を遮った。

「……はい」

 リヴィア王女は、不満そうに唇を尖らせたが、しぶしぶといった様子で一歩下がった。だが、その瞳は依然として俺を見つめていた。まるで、俺という存在が解けない謎であるかのように。

「リヴィア」王が静かに言った。「お前は、なぜそれほどまでにライル殿に興味を持つ?」

「だって!」リヴィアは即座に答えた。「父上の病を治すなど、普通の人にできることではありませんわ。それに、兄上が誰かをお茶会に招くなど、聞いたことがありません。一体どのような方なのか、この目で確かめたかったのです」

「確かめて、どうする?」

 リヴィアは少し言葉に詰まった。そして、俺を見て、今度は少し恥ずかしそうに言った。


「私、兄上にずっと会えていないんです。どんな様子なのか、元気にしているのか、何も教えてもらえなくて。でも、兄上がライル殿をお茶会に招くということは、きっと何か特別な理由があるのでしょう?」

 その言葉には、純粋な願いが込められていた。義兄に会えない寂しさと、それでも義兄のことを知りたいという切実な思いが、その声に滲んでいた。

「リヴィア」王が静かに、だが厳しく言った。「その話は、今はするな。お前は約束したはずだ。無用な質問はしないと」

「……はい」

 リヴィアは、明らかに不満そうだったが、それ以上は言わなかった。その表情には、諦めと、そして少しの寂しさが浮かんでいた。俺はその様子を見ながら、何か言葉をかけるべきか迷った。だが、王の視線がそれを制していた。


 王は俺に向き直ると、申し訳なさそうに言った。

「すまんな、ライル。娘が、無礼を働いた。……ライルたちは、もう下がってよい。アレクシウスの件、くれぐれも頼んだぞ」

「はっ」

 ギデオン殿が、深く頭を下げる。俺も、それに倣った。

「ええー! もう帰ってしまうのですか!?」

 リヴィア王女が不満そうな声を上げた。俺とギデオン殿は退出しようと席を立ったが、リヴィアは諦めきれないように、もう一度俺に向かって言った。


「ライル殿、お待ちください! せめて一つだけ、質問ではなく、お願いをしてもよろしいでしょうか?」

「リヴィア」王が警告するような声を出す。

「いえ、お父様、質問ではありません」リヴィアは慌てて言った。そして、俺を見て、真剣な表情で言った。

「ライル殿。私、兄上のことが……ずっと心配なんです。もう何年も会えていなくて、手紙も届かなくて。でも、ライル殿は兄上とお会いになるのでしょう? だから、もし……もしお会いになった時、兄上が元気にしているか、それだけでも、いつか教えていただけませんか?」

 その言葉には、嘘がなかった。彼女は本当に、義兄のことを心配しているのだ。俺は少し考えてから、頷いた。

「分かりました」


 リヴィアは、ほっとしたように微笑んだ。

「ありがとうございます。それから……」彼女は少し照れたように言った。

「また、お話しできたら嬉しいです。今度は、もっとゆっくりと」

「リヴィア、それ以上は――」

「はい、はい、分かっておりますわ、お父様!」リヴィアは手を振って、父の言葉を遮った。


「それでは」というギデオン殿の言葉とともに俺たちは立ち上がった。

 その時、一緒に立ち上がったヴァレリウス王が少し顔を寄せると、俺にだけ聞こえるように小さな声で俺に言った。

「ライル。行ってまいれ。あやつは少し変わっておるが、悪い人間ではない。だが、あまり心を許しすぎるなよ」

 俺は黙って頷くと教えてもらった通り立礼をして、ギデオン殿と部屋を出た。後ろの方で、

「じゃあ、わたくしも一緒に!」

 と言うリヴィアに向かい、

「リヴィア! お前は少しここに残れ!」

「え〜、お父様……」

 という声が聞こえてきた。


 廊下を歩きながら、ギデオン殿が小さく笑った。

「リヴィア殿下は、相変わらず元気ですな」

「ご存じなのですか?」

「ええ。わしは以前、騎士団の師範をやっていましたからな。幼い頃から、よく見ておりました。あの好奇心の強さは、小さい頃から変わりませんよ」

「そうなんですか」

「ただ……」ギデオン殿は少し表情を曇らせた。

「あの子は、アレクシウス殿下のことを、本当に慕っておられる。会えないことを、ずっと寂しく思っているのでしょう」

 俺は、先ほどのリヴィアの表情を思い出した。あの寂しさは、本物だった。


(第三十九話 了)

お読みいただき、ありがとうございました。

「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークや、ページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります。


次回は明日の11時の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

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