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【連載開始3ヶ月でPV10万達成!&第三部開始!】病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第三部【深淵の盟約・北伐奪還編】

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第九十九話:崩落する伽藍、奪われる希望【後編】

「ザックス! あの女をなんとかしろ!」


 ガロン様が私に向かって叫んだ。背後に控えていた私には、その肩越しに火球を錬成しつつあるルナリアの姿が見える。遠目にも、牢屋で話した時と同じ天才魔法使いらしい不敵な笑みが浮かんでいた。


(しかし火球とは、また随分初歩的な魔術を……)


 と思う間もなく、それはみるみるうちに大きくなってゆく。


(マズい!)


 そう確信した時には、すでに凄まじい熱量を湛えた「小型の太陽」が出現していた。周囲の塵を吸い込みながら白熱化したそれは、「ドン!!」という爆発音と共に放たれる。質量があまりに巨大すぎるためか、その飛来速度は通常に比べて遅いが、ゴーレムの制御で手一杯のガロン様は対応できず、また一人で防ぎきれる代物ではなかった。

 私は最大限の防御魔法を展開させながら、


「メルル!」


 と傍の女魔術師に声をかける。

 慄然とした表情で火球を見ていた彼女だが、私の声で我に返った様子で、慌てて私の展開した防御魔法に同調する。

 次の瞬間、


 ヴァグゥァン!!!


 という爆音と共に途轍もない熱感が皮膚を焼くのを感じる。なんとか展開できた防御魔法が火球を受け止めるが、


 パリン!!!


 という音を残して砕け散った。


「メルル!!」

「分かっている!!」


 普段は決して気心が知れている仲というわけではないが、生き残るという共通の目的のため息を合わせたように、我々の眼前に再び第二、第三の防御魔法が展開される。

 だが、ルナリアの放った劫火は、理屈も術式もねじ伏せるような純粋な魔力の暴力だった。


 ミシミシミシ……、パリン!!!


 再び防御魔法が破られる音に、私は思わず目を瞑ってしまった。熱気が肺を焦がし、死の恐怖が背筋を駆け上がる。轟音と共に左右の岩壁が溶岩のように融解し、崩れ落ちる音がした。

 やがて、熱波が引いていく。恐る恐る目を開くと、そこには、もうもうと立ち込める蒸気の向こうで、忌々しそうにルナリアを睨みつけるガロン様と、瓦礫の上に浮遊し、不敵に笑う銀髪の少女の姿があった。


「あら、肩慣らしにわざわざ効率の悪い火球を使ったんだけど、防げるとは思わなかったわ」


 彼女はそう言うとくすりと笑った。空中に浮遊したまま、我々を見下ろすその瞳には、警戒心など微塵もない。


「おのれ、小娘が……!」


 メルルが憎悪を剥き出しにして黒い茨の呪いを練り上げる。私も即座に泥人形を展開しようと術式を構築し始めた。

 その時、ガロン様が何事かをゴーレムに命じる声が私の耳に入った。


 ***


 私は目の前に迫った巨大な火球が、かろうじて防御魔法に防がれ霧散するのを見ていた。通常であれば私なら簡単に防げる程度のものだったが、いまはまだこの復活させたばかりの古のゴーレムを制御しなければならないのだ。


(それにしても)


 と改めて恐るべき魔法の使い手を見る。確かにザックスの進言は正しかった。まだ少女と言っていい容姿だが、その魔力の巨大さは規格外だ。この娘をそのまま炉心にしていれば間違いなくゴーレムは暴走していただろう。


(だが、お前がいなくともゴーレムはすでに起動している!)


 私は再び意識をゴーレムの制御に戻す。巨体に籠められた巨大な魔力を感じる。そこにはいまはゴーレムの糧となり、文字通りその体に擦り込まれた元の魔力の持ち主の残滓がさざ波のように伝わってくる。怒りや悲しみ、恨み辛みはもちろん、未だ自分が古の魔術の一部となったことを理解できていない彷徨える魂を感じ、その全てをアレクシウスという器を通し私の支配下に置く。


「焼き尽くせ!」


 ゴーレムが一声雄叫びを上げると、巨大な口を開きスウっと息を飲む。その口内に、赤黒い光が凝縮されていく。それは単なる火の魔術ではない。圧搾され、抽出された有象無象の絶望と怒りを、アレクシウスの王家の血を触媒にして純化した「破壊の奔流」なのだ。


「消え失せろ、不浄なる者ども!」


 私の叫びに応えるように、ゴーレムから極太の赤黒い熱線が放たれた。

 小娘の顔から先ほどまでの余裕の笑みが消えた。何事かの防御魔法を展開しようとしているのだろうが、もう遅い! 私を差し置いて「魔法の天才」を僭称した報いを受けさせてやるのだ!

 その時、それまでずっと黒い繭に収められたアレクシウスを見ていた男が口を開いた。


「……アレクシウス様」


 その呼びかけには、全くこの場に似つかわしくない響きで、まるで眠っている知り合いに対するような、なんの(てら)いもないものだった。

 しかし、それがもたらした反応は強烈だった。いままさに奴らに届かんとしていた極太の赤黒い熱線が、ほろほろと宙に溶けて消えてしまったのだ! それと同時に私の頭に、それまで感じたことのない想念が流れ込んできた。


(ライル様!)


 それは黒い繭の中に浮かんでいるアレクシウスのものだった。


 ***


 目を開けると、そこにはライル様がいた。ライル様だけではない、周りには十人以上の人がいる。知らない者ばかりだったが、その中にイザベルの顔を見つけた。会ったことは数回しかないが、その時の冷静な印象とは違い、いまはひどく驚いている様子だ。驚いているのは彼女だけではない。髪の毛と瞳の色が違う以外、瓜二つの少女たちや《王の影》の者たちと、灰色の髪をした外国人らしい男の人も驚いていた。

 後ろを振り返るとそこには、黒いローブを被った怪しげな男女がいた。彼らも何かひどく驚いた顔をして私のことを見上げていた。


 見上げている? そうだ、ライル様を含めた全員が私を見上げているのだ。

 そこで初めて私は気がついた。

 自分が巨大なゴーレムになっていることに。


(第九十九話 了)

こんにちは、佐藤峰樹です。


前回、セレス→イザベル→ルナと繋いできたリレーですが、今回はザックス→ガロン、と来て、最後はアレクシウスです。実はこの後の展開はまだ決めかねているところもあります。果たしてどうなるのか? 私もいまは皆さんと同じ気持ちです(笑)。


さて次回はいよいよ第百話です。ブックマークの方も100へと辿り着きたいものです(笑)。皆さんからの御祝儀をお待ちしております。


次回は明日の12時ごろの更新となります。お会いできることを楽しみにしています。

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