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【連載開始3ヶ月でPV10万達成!&第三部開始!】病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第三部【深淵の盟約・北伐奪還編】

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第八十九話 繋がれた銀貨、影の招集【後編】

 エリオットが手元の魔石版をこちらに見せる。そこには、付近にいるゴーレムのうち一体がこちらに向かって歩いてきているのが示されていた。


「向こうから、こちらは見えているのですか?」

「遮蔽魔法をかけているので、それはありません。恐らく偶然こちらに向かってきているのだと思います」

「やり過ごせればいいですが、駄目なら倒すしかないか……」

「ええ。ただ、あまり騒ぎになると、中の敵に気づかれる懸念があります。気になるのはライル殿の話では、奴らのゴーレムは通常のものとは違い、下手に斬れば増えるということですね……」


 確かにあの男はそう言っていた。胸にある核を破壊すること自体はゴーレムを倒す定石だが、どうもそうではないようだ。ライルは増やさずに倒すためには、「動きの中心を斬れば良い」と説明していたのだが、それがいまひとつ分からない。

 説明している本人は考えることなく実行しているようなのだが……。一緒に聞いていたエリオットも戸惑っていた。

 そうしている間にもゴーレムの重量感のある足音が近づいてくる。

 私は目でエリオットに合図をすると、岩陰から身を起こし、腰のレイピアを抜いた。暗がりの中で、何か大きなものが周囲の木の枝をへし折り、地面を震わせて迫ってきていた。

 予想通りゴーレムがこちらを認識している様子はない。歩く方向に私たちが潜んでいた場所があっただけのようだ。


(動きの中心)


 そう思いながらゴーレムを見やる。実際に動くゴーレムを見るのはこれが初めてだった。定石であれば胸の真ん中にある核を狙うはずなのだが、そこには無いとなると……。岩陰から、岩陰へと移動しながらゴーレムの動きを見る。そのうちに動き始めにわずかだが左腰に溜めが生まれるように見える。


(あそこに核があるのか?)


 撃つなら一発で決めなければならない。近づくとその改めてその大きさに気づく。背丈だけではなく、腕や足など全てが大きい。グッとレイピアを握る手に力がこもる。


(よし!)と飛び出そうとした瞬間だった。


 ガズッ


 という音と共に、ゴーレムの左腰に金属の棒のようなものが生えていた。次の瞬間、ゴーレムは凍りつくように動きを止めると、垂直に地面へと膝を着き、呪縛を解かれたその体はボロボロと土塊へと変わり始めていた。


(何が起こった!?)


 動き出しの出鼻をくじかれた格好となった私が周囲を見やる。


「イザベルさん、お待たせしました」


 崩れたゴーレムが起こした土埃の後ろから現れたのはライルだった。私がゴーレムを撃とうとした寸前に、その背後から狙っていた箇所を突き通していたのだ。その手には相変わらず頑丈そうだが、飾り気のない刃引きの刀が握られていた。


「ラ、ライル殿!?」

「はい、私です。お父上の部下の皆さんも一緒に来ています」


 その言葉に応じるように、彼の背後からぞろぞろと人影が現れる。星明かりに照らされたその顔には見覚えがあった。そのうちの一人が私の前に歩み出る。


「イザベル様、ご無事で何よりです」


 そう言ったのは、父の部下の一人、アレスだった。私より一回り年上の男で、小柄な者が多い(王の影)の中では体が大きいが、その見た目によらず細かな仕事が得意で、父からも信頼されている。その他にも父の直属で、普段は王都にはあまりいない顔も揃っていた。


「アレス……、それに皆の者もよく来てくれた」

「何をおっしゃいますか。フォルカー様からのご命令であればどこへでも駆けつけるのが我々の仕事です」


 そう言い終わるや否や、全員の中に緊張感が走る。それは私の背後から現れた者に向けられていた。


「イザベル殿、応援が来たのですか?」

「そうです」


 彼にはそう答えた上で、


「タイドリアのエリオット殿だ」


 とアレスとその後ろの者たちに声をかける。エリオットは私の横に立つと、居並ぶ(王の影)に向かって、いつものように屈託なく、


「タイドリアのエリオットと申します。ご縁があり、今回は一緒に行動をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」


 と挨拶をする。アレスを含む全員の視線がエリオットに集まる。中にはタイドリアの密偵と命のやり取りをしたものもいるはずだが、当の本人はそれに動ずることなく、一同を見渡すと、目ざとくライルに声をかけた。


「ライル殿……ですな? 朝にお話しをしたエリオットです」

「あ、ライルです」


 エリオットの表情にごくわずかだが驚きの色が浮かんだ。恐らく想像以上に若く、さらに自分と同様か、それ以上に柔らかい物腰に驚いたのだろう。しかし、ほとんど表情を変えることなく話を続ける。


「早速ですが、フォルカー殿から預かった銀貨を見せていただけますか?」

「はい」


 予め父から聞いていた様子のライルは、懐からエリオットが持っていた物と同じ、黄色の魔石が埋め込まれた銀貨を出すと、それをエリオットに渡した。


「これは不思議な物ですね、持っている私にだけしか見えない光がずっとエリオットさんとイザベルさんのいる方向を指してくれて。お陰でここへ辿り着きました」


 エリオットは受け取った銀貨を調べつつ、微笑みながら応じた。


「これは古代魔道具のひとつで、大昔にもいた我々のような立場の人間が使っていたもので、簡単に言うと、空にある動かない星を経由して互いの場所を知ることができるというものです」

「なるほど、それで持った者にだけ空へと光が反射するように見えたのですか」

「それぞれの銀貨の魔石に登録した息の波動を星辰に共振させて……、と説明されましたが、実のところうちの研究者でも読み解くことができない術式のようです。ですので私も使い方しか知りません」


 エリオットはまだライルのことを掴みかねている様子があるものの、受け答えはいつもの通り普通にこなしていた。一方のライルの方は不思議なほど普段と変わらない。

 そんな二人のこの場に似つかわしくない世間話のような会話を聞いているうちに、私はルナが話していたことを思い出していた。古代魔法については、天才と呼ばれるルナでも分からないことが多く、彼女の研究テーマの一つでもあった。その時、彼女は、


「彼らいにしえの魔法使いの、星の運動に関する研究は、現在よりも進んでいて、どうやら星々の運行が、私たちの魔力に関係すると考えていたようなの。ただ、暴走したゴーレムの『炎の百年』のお陰でほとんど資料が残ってなくて……。流石の私でもまだまだ分からないことが多いというのが正直なところなの。でも、空の星と自分の魔力が繋がっているなんて、素敵だと思いませんこと!? それでこそ魔法だとわたくしは思うの!」


 と、金色の瞳を輝かせて熱っぽく話していた。


「イザベル様」


 気がつくとアレスが私の隣にいた。


「どうした?」

「……イザベル様。あの、ライルという御仁は一体何者なのですか?」


 アレスが声を潜めて言った。その声が微かに震えていた。怪訝に思い見返すと、ばつの悪そうな顔になったアレスが慌てたように口を開いた。


「いえ、私たちもクーデタの時の働きや、今回のことでも信じられないようなことをされているのは承知しています。しかし……」


 その様子に、私は答えを予想しながら尋ねた。


「何があった? いや、何人やられた?」


 私の返事に目を剥いたアレスが、観念したかのように口を開いた。


「五人です……。私も入れて」


 聞けば、王都の混乱はもちろん、父に加えてお祖父様の負傷の報で、殺気だっていた彼らの前に、ライルは前触れもなく現れたという。そもそも城内にあって、特に秘された(王の影)の集まる場所へ、部外者が現れること自体が異常なのだが、驚く彼らに向かってライルは、父の指示を淡々と伝えたそうだ。曰く「いまから竜背丘陵にいるイザベルと、タイドリアの密偵を助けにゆくので一緒にきてください」と。


「当然、我らもライル殿ことは存じております。ただその話には素直に頷くわけにはいきませんでした。素性のよく分からない食客の剣士が、長の認証である円盤を手にして、イザベル様と()()()()()()()()を助けに行けと言う。まさかとは思いますがフォルカー様から奪った可能性も考えられます。迷うことなく我々は彼を取り囲みました。……ですが、彼はこう言ったのです」


『いまは急いでいます。納得できないならお相手をしましょう。ただし時間がないので、皆さん一度にかかってきてください』


 アレスが苦渋に満ちた表情で語る。 結局、アレスを含む五人の精鋭が、一斉に彼に襲いかかった。だが、()()にすらならなかったと言う。


「気づいた時には、全員が床に転がされていました。武器を抜く暇さえ、術を編む隙さえありません。ただ、何が起きたのか理解できないまま、軽く打たれただけで体の自由を奪われていたのです。……彼は倒れた一人一人に手を貸して起こしながら、『これで一緒に行ってくれますね?』と言っていました」


 私は溜息を吐き、少し遠いところでエリオットとなにやら話しているライルの姿を見た。


「分かった、アレス。……気に病むな。相手が悪かったとしか言いようがない」


 私はそう言って、アレスの肩を軽く叩いた。

 その時、エリオットの持つ二枚の銀貨が輝き始めた。それぞれの魔石は呼吸するように明滅しながら同調し、色は青へと変じていく。そして最後に一度だけ強く発光すると、光はふいに消失した。それを見届けたエリオットが、


「これでいいでしょう。間違いなくこれはフォルカー殿に渡した物です。では改めて潜入作戦を立てましょう」


 と言った。私はアレスの顔を見て軽く頷くと、彼らに向き直った。

 なにはともあれ、これでルナと殿下を救う用意が整ったのだ。


「エリオット殿。中の様子を説明してください」


 全員の視線が、彼の持つ光る魔石版に注がれた。


(第八十九話 了)

こんにちは、佐藤峰樹です。


今回は前回に引き続きイザベル視点です。着々とライル被害者の会が広がりつつあります(笑)。

落ち着いた雰囲気のエリオットですが、実は厨二気質の持ち主ということが分かってきました。この出会いが何を産むのか? 著者も今後にも注目です。


さた、「七日までは松の内」と言います。新しい年の始まりに、ブックマークやページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります! よろしくお願いいたします。


昨日押した方も、今日押した方も、いつか押す方にも、本年一年が素敵な年になりますよう!

※昨日はお陰様でブックマークが一つ増えました!ありがとうございます!


次回は明日の12時前後の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

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