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【連載開始3ヶ月でPV10万達成!&第三部開始!】病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第二部【王都陰謀編】

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第七十七話:襲いかかるゴーレムとメルルの驚愕【後編】

 私のゴーレムはヴァイスの泥人形(マッド・ドール)とは違う。堅牢な巨躯と耐久力を持ち、術式にも工夫を凝らしているため、比較的質の低い魔石でも生成可能だ。

 いまや二十体を超えるゴーレムがアレクシウスと護衛を囲おうとうごめいているのが見える。

 アレクシウスが一番近いゴーレムの腕を斬ったのが見えた。

 斬られて飛んだ腕が地面に落ちると、そこから新たなゴーレムが生まれる。冷え切った私の頭にも僅かに喜びが浮かぶ。

 ここが私の苦心のしどころだった。このゴーレムは相手の攻撃で体の一部が地面に触れる度に、そこからまた新たなゴーレムが生まれるのだ。また斬られた元のゴーレムの傷も再生され、何度でもこのゴーレムの再生産は繰り返される。つまり、このゴーレムを相手にした者は、自分の手でゴーレムを増やし、やがて力尽きその質量に圧殺されるのだ。

 ゴーレム自体の動きは遅く、火や氷といった特殊な能力はないが、いったん囲んでしまえば敵を逃すことはない。特に今回のような相手を生け捕りにする必要がある場合は有効だ。


 このゴーレムを倒すこと自体は、従来のものと同じで核を破壊すればいい。元のゴーレムの核が破壊されれば、それに連なるゴーレムも消える。しかし、それは容易ではない。古式のゴーレムの核は胸の中央と決まっていたが、このゴーレムたちの核は一体一体、違った場所にある。そのため簡単には核を破壊することができず、傷つければ傷つけるほど数が増えていくのだ。

 これはヴァイスの研究を応用したものだ。私はあの男を軽蔑しているが、良いものは認める。私の望みは、ガロン様に最強の兵器としてのゴーレムを捧げることだ。そのためには多少の屈辱はやむを得ない。

 私は熱くなりかけた頭に冷たい血を送り、改めて眼下の様子を見る。


 そこには信じられない光景があった。


 ✴︎✴︎✴︎


 折れた大剣を持った男が大きく飛び退り、相手と私の間に広い空間が生まれた。

 空中の女が何事か地上の男と言い争った後、その空間を埋めるように何かをばら撒いた。

 それは庭に種を蒔くようにも見えたが、現れたのは花や麦ではなかった。

 地面が蠢き、土が盛り上がっていく。


 一つ、二つ、三つ――。

 いや、もっとだ。あちこちで土が隆起し、ボコリ、ボコリと土の中から何かが次々現れる。

 それはゴーレムだった。


「殿下!」


 そう声を掛けてきたのは、生き残った護衛の一人、マクレだった。四十絡みの、普段は庭の草木の面倒をみている気の優しい男が、私の前に立った。剣を構えているが、その手は震えている。無理もない。仲間が次々と倒され、目の前には人ならざるものが迫って来ているのだ。


「館にお戻りください! ここは我々が食い止めます!」


 もう一人、こちらはまだ二十になったばかりだという女性の護衛、イリーナも剣を構えた。寝所の立番の際、恥ずかしそうに、恋に関する詩を読むのが好きだと微笑んだ顔が、いまは恐怖で歪んでいる。

 私は黙って二人の前に歩み出て剣を構えた。

 何か言おうとする彼らを振り返らず手で制する。


「お前たちは下がれ」


 そう言って、私は先頭のゴーレムに近づく。それに応じて、グウッと出してきた右腕を私の剣が斬り飛ばす。しかし、ゴーレムの動きは止まらない。それどころか斬り飛ばされた腕が落ちた地面が、さざ波のように震えると、そこからゆっくりと新しいゴーレムが湧き出てこようとしている。


「なに、これ!?」


 後ろのイリーナが悲鳴をあげる。

 私はその声を聞きながら、目の前のゴーレムが残った左腕を伸ばしてくるのを見ていた。これを不用意に斬るわけにはいかないようだ。


『全てには中心があります。それは形の中心でなく、動きの中心です』


 不意にライル様のこの言葉が頭に浮かんだ。というより降りてきた。


(ならば、このゴーレムにも――)


 そう思い目を凝らそうとした瞬間、


(違う)


 と思う。


(部分を見てもしょうがない、全体を捉えるのだ)


そう思ってゴーレムを見る。

 ゆっくり動くゴーレムの攻撃を躱すのは容易い。しかし、数が多い。またどうやらそれぞれが無軌道に動いているのではなく、ゆっくりとだが私たちを押し包もうとしているのが分かった。

 私はもう一度、ゴーレム全体を見回す。すると同じように見えるゴーレムだが、一体一体微妙に動きが違うのが分かった。と、同時に自然に先頭のゴーレムに向かって体が動き出した。

 背後でイリーナが何か言ったのが聞こえたが振り返らない。そのまま、体を伸びあがらせて、高い位置にあるゴーレムの喉のようなところへ剣を突き込む。


 カチン


 と硬い何かに、剣が当たった。

 その途端、ゴーレムは動きを止めるとボロボロと崩れる。私は素早く離れる。


「あっちのゴーレムも崩れている!?」


 マクレが驚いた声を上げる。見ると先ほど斬った腕から再生しようとしていたゴーレムが崩れていた。どうやら斬られたところから生まれるゴーレムは、元のゴーレムが倒されると消えるようだ。

 私は次のゴーレムに向かい、今度は右の胸の辺りに剣を繰り出す。またカチンと手応えがあり、あっという間にゴーレムが崩れる。

 考えることなく、まるで剣が答えを知っているように、迷いなく次のゴーレムに向かって突きを繰り出す。

 ずっと動き続けているのに不思議と疲れはない。むしろ、動くことが次の力になっているようだ。


 私は満開の花の中を飛び回る蜂のように、ゴーレムたちの間を飛び周り、考えるより早くその急所に突きを入れていた。


 この時私は、生まれてから初めて、自分が生きていることを実感していた。


(第七十七話 了)

お読みいただき、ありがとうございました。


メルルの渾身のゴーレムを無慈悲に瞬殺するアレクシウス。ちょっと地味努力系のメルルに同情します(笑)。ま、アレクシウスも苦労人ですからね。このくらいは許してもらいましょう。


「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークや、ページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります。


次回は明日の12時前後の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

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