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【連載開始3ヶ月でPV10万達成!&第三部開始!】病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第二部【王都陰謀編】

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第六十九話:「冷たい紅茶と、分かたれた道」【前編】

 翌日の夕刻。

 城内の警備交代の鐘が、五つ(午後五時)を告げていた。

 私は詰め所での引き継ぎを終えると、足早にリヴィア様の部屋へと向かっていた。


(……やはり、気になるわ)


 昨夜、リヴィア様は笑顔で「諦める」と言った。その言葉に嘘はないと信じたかった。だけど、一日が過ぎ、手紙に書かれていた約束の刻限が迫るにつれ、胸の奥のざわめきが大きくなるばかりだった。


(本当に、彼女は諦めたのかしら?)


 あの時の熱っぽい瞳が、脳裏から離れない。それと共に、(なぜあの時、彼女に手紙を返すという判断をしたのか?)と、自分の判断への違和感も大きくなっていた。まるで彼女も私も、あの得体の知れない招待状に魅入られてしまったように思える。


(彼女の顔を見るだけでもいい。一言、変わらぬ様子を確認できれば、この不安も消えるはずだ)


 私は、部屋の前に立つ衛兵に声をかけた。


「ご苦労です。リヴィア殿下の様子は?」

「はっ、セレスティア殿。殿下は現在、お休みになられています」

「お休み?」


 私は眉をひそめた。まだ陽が落ちきっていないこの時間に? リヴィア様は夜更かしはあっても、これほど早い時間に就寝する習慣はないはずだ。


「いつからです?」

「はあ……。先ほど侍女たちが『殿下が体調を崩され、夕食までの間は誰の入室も禁ずると仰せつかった』と申しておりましたので」

「体調を……?」


 確かに昨日のやり取りを考えれば部屋にこもっていてもおかしくはない。それでも胸騒ぎがした。


「……通してください」


 私は短く告げ、扉に手をかけた。


「お待ちください! 殿下の厳命です。誰も通すわけには……」


 衛兵が慌てて私の前に立ちはだかる。


「どきなさい。顔を見るだけです」

「なりませぬ! たとえセレスティア殿でも、殿下のご命令に背くことはできません!」

「緊急事態かもしれないのです!」


 私は声を荒らげ、構わず扉を激しく叩き始めた。


「リヴィア殿下、セレスティアです! 御用があって参りました。ここを開けてください!」

「何事です、騒々しい」


 声の主はリヴィア様付きの侍女長だった。中年を過ぎたふくよかな体に厳しい顔つきを乗せて、こちらに向かってくる。その後ろには、騒ぎを聞きつけた衛兵隊長もいた。


「侍女長! セレスティア殿が無理やり入ろうと……」


 衛兵が訴えを聞いた彼女は私を見て眉を吊り上げた。


「まあ、セレスティア様。殿下は先ほど、お加減が悪いので誰にも会いたくないと仰せです」

「侍女長。お部屋の中には誰か侍女はいるのですか?」


 私がそう問うと、侍女長は毅然と答えた。


「いいえ。殿下が『一人で休みたいから、誰も入れないで』と強く仰いましたので、お言葉に従い、皆を控えの間まで下がらせました。それが、殿下のご意志です」

「もしお休みになっていたとしても、これだけ外で騒ぎになれば、殿下も気づかれるはずではありませんか」


 私の指摘に、隊長も表情を厳しくする。


「……確かに、妙だ」


 しかし侍女長は、「それだけお疲れということでしょう」と答えて譲らない。彼女になにを話しても埒が明かないと思った私は、ついてきた隊長に向き直る。


「鍵を開けていただけますか? 様子がおかしいように思います」

「なっ……なりませぬ! 殿下の言いつけを破るおつもりですか!?」


 隊長は彼女の言葉を慣れた様子で聞き流しながら、私の目を見つめ返す。一瞬後、なにか納得したように頷き、部下に向かって合鍵を使って扉を開けることを命じた。


「そんな無作法を私が許しません!」


 隊長が侍女長の肩を掴み、強引に横へ退かした。


「責任は私が持つ。リヴィア殿下の安全を確認するだけだ。何もなければそれでいい」

「はっ!」


 答えた衛兵が腰から鍵の束を取り出すと、その中から素早く一本選び出し、扉の鍵穴に差し込む。カチャリ、と鍵が開く音が、やけに大きく響いた。それでも騒ぐ侍女長を尻目に、私は先頭に立って部屋の中へと踏み込んだ。


「リヴィア様! 失礼いたします!」


 部屋はカーテンが閉め切られ、ランプに灯が入れられておらず薄暗かった。


「殿下……?」


 後ろから流石に異変を感じた侍女長が部屋を覗き込み、恐る恐る声をかける。返事はない。

 私は真っ直ぐに寝台へと向かい、天蓋のとばりを引き上げた。


「……ッ!?」


 そこにリヴィア様の姿はなかった。


「そんな……!?」

 後ろで侍女長が息を呑む音がした。私は弾かれたようにベッドから離れると、部屋のあちこちを見渡す。異常を感じた隊長と衛兵も部屋に入ると続き部屋を確認する。


「誰もいません」


 そう告げる衛兵に聞くまでもなく、この部屋には誰もいないし、隠れられそうな場所もなかった。その中で目に入ったのは、テーブルの上に置かれた、ティーセットと、一枚の紙片だけだった。

 私はテーブルに歩み寄り、紙片を掴んだ。


 『ごめんなさい。行ってきます』

お読みいただき、ありがとうございました。


本日は頑張って二回更新の前編です。

リヴィアの失踪にショックを受けるセレス。こればかりは仕方ないのですが、不運続きで可哀想になります。

それにしても置き手紙ってなんか怖いですよね。「本当にあったら怖い置き手紙」という題でショートショートを書いてみるのも面白いかもしれません(笑)。


「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークや、ページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります。


次回は本日の23時の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

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