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【連載開始3ヶ月でPV10万達成!&第三部開始!】病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第二部【王都陰謀編】

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第六十七話:影たちの決断【前篇】

 期せずして私とエリオットの声が重なった。イザベルが驚いた我々二人の様子を見て薄く笑った。沈黙のベルの効果で、こちらの声が聞こえていないのだ。それに気がついたエリオットが苦笑いをしつつ、ベルを鳴らして沈黙の効果を解除する。


「父上、探しました……。エリオット殿、お久しぶりです」


 そう言う彼女の声は、よほど急いでいたのだろう少しかすれていた。


「お前、北の戦場にいるはずでは……」


 私は、娘の姿を見て、一瞬言葉を失った。先ほど伝えたルナリア嬢の誘拐情報――それを聞いて、ここまで来たのか? しかしどうやって……?


「まさか……副団長という重責を負いながら、軍を離れて王都へ戻ってきたのか!?」


 私の胸中に驚きが走った。


「総大将のギデオン団長とレオポルド軍監のご許可を頂いています」

「許可だと? 副団長が進軍中の軍を離れるなど……」

「七日以内に戻ることが条件です」


 イザベルは、短く告げた。


(七日以内……、ギデオン殿、いや、こんな思い切ったことを思いつくのは古狸(レオポルド)殿だな)


 しかし、もし七日以内に帰れなかったら? 彼女は騎士としてこれまで築いてきたものを全て失うだろう。(王の影)としての立場も当然消え去る。


(……そこまでなのか、イザベル)


 そう思って彼女の蒼い瞳を見た。そこには、迷いも躊躇もない。ただ、強い決意だけがあった。


「……七日か。厳しいな」

「はい」


 私は深く息を吸った。いまは娘の決意の強度を問うべきではないようだ。


「……それにしても、なぜこの場所が分かった?」

「王都はどこもかしこも警備の騎士団だらけです。ですがこの一角だけは、どの巡邏隊のルートからもほんの僅かに離れています。『誰にそれが可能で、なんのためにそんなことをするのか?』と考えれば簡単なことです」


 私は僅かに目を見張った後、口の端を小さく吊り上がるのを感じた。


「……分かった。これ以上無駄なことは聞くまい。だが残念ながらルナリア嬢について、既にお前に知らせていること以上のことはまだ分かっていない」


 そう聞いても、イザベルの顔には失望の色は浮かばなかった。それどころか彼女の口の端も小さく吊り上がった。


「私にはいま彼女がどこにいるか分かります。それがここへ戻った理由です」

「なに!?」


 イザベルは黙って自分の左腕を上げ、袖をまくった。そこには、銀色の鎖で編んだブレスレットが嵌められている。それは我が家に代々伝わる魔道具の一つだった。二つ一組で、互いの安全や場所が分かるようになっている。


「……もう片方を、ルナリア嬢に渡したのか」


 私が呟くと、イザベルが頷いた。

 エリオットが興味深げにブレスレットを見た。その灰色の瞳が、一瞬、イザベルの表情を捉える。そして――ほんの僅かに、口元が緩んだ。エリオットの表情に、何か理解したような色が浮かんだ。だが、彼はそれについては何も言わず、違うことをイザベルに尋ねた。


「つまりイザベル殿は、ルナリア嬢の居場所を正確に把握できる、ということか?」

「はい。このブレスレットから、いま分かるのは――」


 そう言うとイザベルはブレスレットを嵌めた腕を差し上げ、頭上で輪を描くように動かし、ある方向で止めた。


「彼女がこの方向、東に居ることです」

「東か……」


 そう呟くとエリオットの表情が、厳しくなった。


「なにか?」

「実は、我が国の調査で、奴らの拠点と思われる場所が幾つか浮かび上がっている。その中でも最も可能性が高いのが――、タイドリアとアウレリアの間にある緩衝地帯、竜背丘陵(りゅうぜきゅうりょう)の洞窟群だ。我々から見て西側、つまり貴方たちから見れば東側になる」


 イザベルの目が、鋭くなった。


「では、ルナリア嬢はそこへ運ばれているということですね」

「恐らくは」


 エリオットは頷いた。

 イザベルの反応は早かった。


「では、そこへ向かいます」

「待て」


 私はすぐに動き出しそうなイザベルを制した。


「まず、状況を整理しよう。エリオットから聞いた情報を共有しておこう」


 私は、彼女に先ほどまでエリオットと話していた内容を手早く説明した。

 古代ゴーレムのこと。敵がそれを復活させようとしていること。そのために、高い魔力を持つルナリア嬢に狙い「炉心」として攫ったこと。タイドリアから失踪した技術者たちが「回路」として利用されている可能性があること。

 そして――


「アウレリア王家の血を狙っている!?」


 さっとイザベルの顔色が変わった。


「父上、王宮への警備強化は既に手配されていますか?」

「……ああ。クーデター未遂事件以降、警備は二重三重に強化されている。ヴァレリウス陛下への接近は、まず不可能だ」

「では、リヴィア殿下とアレクシウス殿下は?」

「リヴィア殿下は王宮内におられる。警備も万全だ」


 私は、少し声を落とした。


「だが、アレクシウス殿下は水晶の離宮におられる。こちらも警備は強化されているが、王宮ほどではない」

「……水晶の離宮の守りは、お祖父様、クラリス翁ですね」

「ああ」


 私は頷いた。父――クラリス・フォン・シュタインは、かつて(王の影)の長を務めた伝説的な人物だ。その実力は腹立たしいほどに、いまなお衰えていない。アレクシウス殿下がヴァレリウス王の養子となると同時に、長の地位を私に譲り、これまでずっと執事として殿下の警護に当たっている。


「クラリス翁がおられる限り、そう簡単には殿下に手出しはできないはずです」


 イザベルの言葉には、祖父への絶対的な信頼が滲んでいた。


「その通りだ。あの爺さんは食えんからな。だが、油断はできん。私自身、離宮への警備をさらに強化する手配をする」

「分かりました」


 イザベルは頷いた。そして――


「父上、先ほどブレスレットで確認した通り、ルナリア嬢は東へ移動しています。エリオット殿の情報と合わせれば、|竜背丘陵で間違いないでしょう」


 イザベルは、ブレスレットに軽く触れた。ブレスレットが、再び微かに光る。


「いまも、東へ向かっています。恐らく、まだ竜背丘陵への移送中です」

「……そうか」


 私は頷いた。


「では、私は竜背丘陵へ向かいます」


 イザベルの声には、一切の迷いがない。


「待て、イザベル」


 私は、娘を制した。


「竜背丘陵まで馬で丸一日だ。往復だけで二日。救出に何日かかる? 七日で足りるのか?」


 イザベルは、一瞬だけ目を伏せた。


「……正直に言えば、分かりません。ですが、やるしかありません」


 (やるしかないだと?)この娘が、そんな言葉を言うとは思わなかった。改めて娘の変化に驚いた。どうやってこの無謀な行動を制すればいいのか、そう私が頭を巡らせている時にエリオットが口を開いた。


「では、私も同行しよう」

「エリオット殿!?」


 私とイザベルが、驚いて彼を見た。

お読みいただき、ありがとうございました。


なんとか持ち直して予定通りのアップです。色々な意味で娘の成長を見るフォルカーは大変そうです(笑)。あと期せずして二話連続で登場人物がハモって終わりです。


「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークや、ページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります。


次回は明日の11時の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

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