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【連載開始3ヶ月でPV10万達成!&第三部開始!】病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第二部【王都陰謀編】

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第六十六話:符合する情報と新たな標的【後編】

「どういうことだ?」

「奴らの真の目的は、単に古代の遺物をそのまま復活させようとしているわけではなさそうだ。つまり改良型のゴーレムを作ろうとしているらしい」

「改良型……?」

「我々も知っているだろう? 奴らが崇めるムルド王がどうやって滅んだか」

「あまりにゴーレムに籠めた魔力が強すぎたため、制御不能となり結局、ムルド王自身も殺され、以後、ゴーレムが自壊するまで100年近くこの大陸を焼き尽くした、という話か?」

「そう。奴らはムルド王をただ盲信しているわけではなく、ムルド王の轍を踏まないように、新しいゴーレムには強力な魔力を操る仕掛けを考えているらしい……。これはルナリア嬢が調べてくれた例の布片の情報を元に、うちの人間が調べた結果なのだがな……」


 そこでエリオットがちらりと王城がある方向を見た。その視線の移動に嫌な予感を感じつつ、次の言葉を待った。


「どうやら奴らはゴーレムを確実に支配下に置くための、絶対的な安全装置を見つけたというのだ。それが……」


 そこで言い淀む様子と、直前の視線の先にあるものが、私の中で結びついた。しかし、それは到底、認めることのできないことだった。


「……まさか」


 辛うじてそう声に出した私に、エリオットは静かに告げた。


「アウレリア王家の血だ」


 その答えは半ば予想していたものだったが、それでも彼の口からでたその言葉の意味を理解するのに、数秒を要した。


「馬鹿な! 王家の血が、ゴーレムの暴走を止める安全装置だと? そのような御伽噺、聞いたことがない!」

「正直に言えば、私もその理屈自体は理解できていない。古代ゴーレムの話ですら、少し前までは子供を脅かすための話ぐらいに思っていたほどだ。うちの魔術師たちも、この結論に行き着いた時は驚いたらしい。だが最近、うちの国で行方不明になった者たちが、古代魔術、それも血脈に関しての専門家であることと合わせると、そう考えるのが妥当だという話だ」

「血脈?」

「古代魔術では血そのものが持っている魔力を重視する。これ自体はいまも変わらない。それは分かるだろう?」


 確かに個人の魔力の保有量は、遺伝的なものが大きい。アウレリアに魔力を持つ者が多く、タイドリアに少ないのはその証拠でもある。


「古代魔術では血脈のかけ合わせの組み合わせや、重ね合わせにより、より強大な魔力を使える者を作ろうとする研究があったそうだ。その結果、魔力は強いが血が濃くなりすぎ、色々と問題が起きたと」


 聞くだけでも吐き気がするような話だが、黙って聞いていた。しかし、その結果出てきた次の言葉は、さらに酷いものだった。


「その結果、奴らが辿り着いたのが、血を直接混ぜ合わせる方法だったようだ」

「……どういうことだ?」

「その言葉の通り、対象となる人間を特殊な魔道具で丸ごと潰し、絞り出した血をかけ合わせるらしい」


 そう口にしたエリオット自身、得体のしれないものを口に入れたような薄気味悪い顔をした。


「だがそれでは当人が死んでしまうではないか?」

「だからゴーレムなんだ」

「なに?」

「ゴーレムはそもそも無から有を生み出す人造人間の一種だ。その生成過程で、この魔力を持った人間同士をかけ合わせた血を素材に練り込むことで、より強く、さらに様々な特性を持ったゴーレムが作れるようになる。ただ、ムルド王はやり過ぎた。あまりに強力な魔力をかけ合わせ過ぎたことで、血が濃くなり彼には制御できない怪物を作り出してしまった」

「……しかし、なぜそこでアウレリア王家の血が必要になるのだ?」

「正直、私も詳しい理屈がわかっているわけではない。だが、魔術師たちが言うには、魔力とは運命に似たものだと」

「運命だと?」


 思わず鼻白んだ私に、エリオットも苦笑を浮かべる。


「つまり、歴史的に見れば、ゴーレムが乱した世を制したのはアウレリア王家の運命であり、ゴーレムを統べる魔力がそこにあるという理屈のようだ」

「しかし、そんなことが……」

「これ以上は聞かないでくれ。何度も言っているが私自身理解しているわけではない。ただ彼らの言い分では、『我が国は魔力が少ない分、魔力についての基礎的な研究はそちらより進んでいる』と、これはいささか自慢げに言っていた。そして『アウレリア人はあまりに自然に魔力を持っているので、使い方の研究は極めて高度に発達しているが、そもそも自分たちが、なぜそれほど大きな魔力を持っているという由来や、そのありがたみを分かっていない』と。やや愚痴めいたことを言っていていたよ」


 最後は苦笑いと共に、やや突き放すような口調になっていたことが、彼自身、本当にその理屈が分かっていないことと、タイドリア側から見た我々への正直な感想が滲み出ていた。


「……結局のところ、我々がどう思うかより、奴らがどう考えているか、か」

「そういうことだ」とエリオットが頷く。


 彼の言葉が真実ならば、事態は最悪の局面へと向かっている。奴らはルナリア嬢らを「炉心」として、タイドリアの技術者を「回路」としてすでに確保している。そして今、その最悪の兵器を完成させる最後のピース、「王家の血」を狙っている――。


「つまり、奴らの次の標的は……ヴァレリウス陛下だと言うのか?」

「無論その可能性もある。だが、必ずしもヴァレリウス王だけではないだろう」

「!」


 その通りだ。血統で考えれば、ヴァレリウス王が一番可能性が高い。しかし、警備の厳重さを考えれば実現はほとんど不可能だ。そう考えれば、狙われるのは……。


(リヴィア殿下とアレクシウス殿下だ!)


 そう思い至った時、私は結界によって静寂が保たれていた路地裏の入り口に人の気配を感じていた。


「……ッ!?」


 私は即座に剣の柄に手をかけ、身構えた。エリオットもまた、音もなく短剣を抜き放ち、低い姿勢で警戒態勢に入る。沈黙のベルはこちらの音を周囲に漏らさない代わりに、周囲の音も遮断してしまう。そのため屋外で気配探知の能力が低い者が使うと、知らない間に敵の接近を許してしまう。


(我々二人を出し抜いて接近できる者がいるのか!?)


 恐らくエリオットも同じ思いなのだろう。緊張した面持ちで路地裏に視線を注いでいる。

 暗がりから姿を現したのは、深々とフードを被った小柄な人影だった。一見すると、夜の喧騒を避けて家路を急ぐ市民のようにも見える。だが、その足取りには隠しきれない切迫感があった。 警戒を強める我々の前で、人影が立ち止まり、フードを乱暴に跳ねのけた。

 露わになったのは見間違えるはずもない娘、イザベルの顔だった。目立つ王宮騎士団の軍装ではなく、夜の街に溶け込むような地味な外套と旅装に身を包んでいる。


「……イザベル!?」「イザベル殿!?」


(第六十六話 了)

お読みいただき、ありがとうございました。


少し体調を崩してしまい、更新が遅くなってしまいすみません。午前11時に予定が、午後11時になってしまいました。明日は予定通り午前11時に更新できる予定です。こんな中でもブックマークをして頂いた方に感謝いたします。


さて、ようやくここでイザベルと合流です。お互いに交換する情報が多くて大変ですが、著者も大変です(苦笑)。ちなみにフォルカーの声は子安武人さん、エリオットの声は福山潤さんというイメージです。『異世界おじさん』のお二人ですね(笑)。


「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークや、ページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります。


次回は明日の11時の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

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