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【連載開始3ヶ月でPV10万達成!&第三部開始!】病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第二部【王都陰謀編】

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第五十五話:「尋問」【後編】

 それから十分ほど経った頃、建物の外から馬蹄の音が聞こえた。護送部隊だ。

 扉を開けると外には、騎士団の馬車が二台止まっていた。医療班の紋章が描かれた白い馬車と、護送用の頑丈な黒い馬車だ。


「副団長」降りてきたのは、医療班長のエルヴィン・シュミットだった。五十代の、落ち着いた物腰の男だ。

「人質の状態は?」

「四名、全員生存。ただし、衰弱が激しい。すぐに手当てを」

「分かった」エルヴィンは、部下の医療班員たちに指示を出した。担架が運び込まれ、トーマスたち四人が慎重に運び出される。トーマスは、意識はあるが自力で歩くことができない。他の三人も同様だ。

「容疑者は?」

「全員、死亡した」私は、短く答えた。


 エルヴィンの眉が、わずかに上がった。「……自決ですか?」

「いや、呪いだ。詳細は、後で報告する」

「了解しました」護送部隊の騎士たちが、死体を黒い馬車に運び始めた。七つの死体。全員、歪んだ笑顔のまま硬直している。


「副団長、建物内の捜索は?」マルクスが、私に尋ねた。

「建物全体を調べるには改めて人を集めて行うが、その前に我々で調べておいたほうが良いだろう。一階の事務室と地下の作業部屋を中心に調べて、文章でも魔道具でもなにか怪しいものがあれば全て回収しろ。罠が仕掛けられている可能性があることを忘れずに、必ず《罠検知》を掛けて、手に負えないものはそのまま残しておけ。その上で、持ち帰れるものは全て持ち帰る」

「了」


 騎士たちは素早く動き始める。追って騎士団の捜索隊が来るが、いまのうちに自分たちで回収できるものは抑えておきたい。

 部下たちへ指示を出し終えると、私は医療班の馬車に向かった。トーマスたちは、既に担架に乗せられ、毛布をかけられている。ルナも、私の後に続いた。


「トーマス」私は、彼の横に膝をついた。「少し、話を聞かせてくれないか? 無理なら、後でもいい」

 トーマスは、か細く首を横に振った。「……いえ、今、話します」彼の声は、掠れていたが、その目には、確かな意思がある。「お願いします、騎士様。……僕が知っていることを、全て話します」


 私は頷いた。「まず、お前が攫われた経緯を聞かせてくれ」


「……一ヶ月前です。魔石の特別販売会という触れ込みで、港湾地区に呼び出されました」

「魔石の販売会?」

「はい。魔石商組合を名乗る者から、手紙が届いたんです。優秀な平民の学生に、高品質な魔石を市場価格の半額以下で譲るという内容でした」トーマスは、苦い表情で続けた。「最初は疑いました。でも……魔石が、欲しかったんです。平民出身の僕には、高価すぎて……」

「それで、行ったのか」

「はい。建物に入ると、若い女性が待っていて、奥の部屋に案内されました。そこに、イルベという男がいました。……地下にいたあの男です」


 ルナが、口を開いた。「どんな風に誘われたの?」


「最初は、普通の商人のように見えました。親切で、人の良さそうな……」トーマスの声が、震えた。「魔石を見せてくれて、値段を言われました。中銀貨20枚。でも、僕の持ち合わせは16枚しかなくて……そうしたら、イルベは16枚でいいと言ったんです」


 私は頷いで先を促す。


「魔石を買う前に、『魔力を測らせてくれ』と言われました。水晶球を渡されて……触れた瞬間、強く光って……それから、意識が遠のきました」トーマスは、目を伏せた。「気がついた時には、地下牢にいました」

「その水晶球は、どんな形をしていましたか?」ルナ嬢が尋ねた。

「年季が入った、古いものでした。凝った装飾が施されていて……中に、文字のようなものが見えました」

「恐らく古代文字ですわね」ルナは、呟いた。

「その後は?」私が問うと、トーマスは続けた。

「地下牢には、僕と同じように攫われた者たちがいました。全員、猿轡をされていたので話をすることはできませんでしたが、恐らくみんな平民です。そして……何度も、魔力の測定をされました」

「どんな測定だった?」

「イルベが来て、色々な水晶球を額に当てるんです。その度に、水晶が色々な色で光りました」

「水晶によって色が変わるの?」とルナが聞く。

「はい。赤、青、緑、黄、白、紫、あと黒でした」 

「……それで、イルベは何と?」

「最初の測定の時……イルベと女が話していました」トーマスは、震える声で続けた。「イルベが『この子の魔力は高い。適格だ』と言いました。でも、女が『波長が少し違います』と答えて……」


 ルナ嬢の表情が、わずかに変わった。


「波長が違う……。その時の推奨は何色だったか覚えている?」

「……確か紫でした。それを見たイルベは『確かに。通常の適格者とは、パターンが異なる』と言いました。そして……『だが、これほどの魔力を、そのままにしておくには惜しい』とも」


 その答えを聞いたルナがなにか考え込む。再び私がトーマスに訊ねる。


「それで、お前は運ばれなかったのか」

「はい。『導師の判断を待つ』と言われて……保留されました」トーマスの目に、恐怖の色が浮かんだ。「他の者たちは、次々と運ばれていきました。僕が見たところ、七人くらいです」

「七人……」私は、唇を噛んだ。「最後に運ばれたのは、いつだ?」

「三日前です。僕以外の三人は『魔力が足りない』と言われて、ずっと地下牢に残されていました」

「その七人は、どこへ?」

「分かりません。夜中に、男たちが来て……地下牢から引きずり出されて、階段を上がっていきました。それきり、戻ってきませんでした」


 ルナが、また口を開いた。「トーマス、測定以外に、何かされたり見たものはありませんか?」

「……地下の作業部屋に、床に大きな魔法陣が描かれていました。黒い線で、複雑な模様が……」

「どんな模様でしたか?」

「円の中に、いくつもの三角形が組み合わさっていて……中心に、目のような印がありました」


 ルナの顔色が、わずかに変わった。


「……分かりましたわ。ありがとうございます、トーマス」


 私は、トーマスの肩に手を置いた。「もう大丈夫だ。お前は、助かった」

「……ありがとうございます」トーマスは、涙を流した。

「恐ろしい経験で、すぐには忘れることはできないだろう。だが、全て終わったことだ。思い出して怖くなったら自分の気持ちが落ち着くまで、両手で自分の肩を抱け。怖さを無理に抑えず、感じて静まるのを待つのだ。これから会う騎士団の医療部を訪ねに来ても良い。お前はよくやった」


 その言葉にトーマスは、それまで堪えていたものが溢れ出したように、堰を切ったように泣き始めた。

 私は後は医療班に任せて立ち上がった。七人。既に、どこかへ運ばれていた。そして、トーマスの魔力は「波長が違う」という言葉。何が違うのか。なぜ、トーマスだけが保留されたのか。疑問は、増えるばかりだ。

 ちらっと横目でルナを見ると、真剣な表情でまだ何事かを考えている様子だ。いまは放っておくのがよさそうだった。


「副団長」


 マルコスが、私の元へ来た。


「建物の捜索はあらかた終わりました。ほとんどの部屋は空でしたが、事務所にあった幾つかの文書と魔道具は、全て回収しました」

「ご苦労。撤収の用意だ」

「了」


 その答えを聞き、わたしは改めて建物を見回した。ここで、何が行われていたのか。七人は、どこへ運ばれたのか。そして――導師とは、何者なのか。答えは、まだ見えない。だが、一つだけ確かなことがある。


 この事件は、まだ終わっていない。


(第五十五話 了)

お読みいただき、ありがとうございました。


最後にイザベルがトーマスに話す、自分で自分を抱きしめる「セルフハグ」という手法は、セラピーなどでも推奨される方法です。肩を抱いたら、大きくひとつ息がつけるまで待ってあげるのがポイントです。みなさんもしんどい時にお試しください。


「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークや、ページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります。


次回は明日の11時の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

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