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【連載開始3ヶ月でPV10万達成!&第三部開始!】病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第二部【王都陰謀編】

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第五十四話:「救出、二」【後編】

 階段を下りたところは少し広めの踊り場のようになっていて、木製の頑丈そうな扉があった。扉は少し開いていて、くぐもった声はその隙間から聞こえていた。

 マルクスが静かに扉の側に近づくと、素早く隙間から扉の向こうを覗く。わたしたちの耳に『敵が一人、人質が一人』というマルクスの声が聞こえた。

 エリクが扉を開く準備をすると、マルクスとヴェルナーが盾を構え、その後ろにイザベルとわたしが控える。

 イザベルが全員とアイコンタクトをして『三だ』と言ってから数え始める。


『一、二、』


「三」と同時にエリクが大きく扉を開き、マルクスとヴェルナーが踏み込む。

 そこには、鉄格子のついた牢がいくつかあった。そして、一番手前の牢の前に、黒いローブを着た男が、牢屋の扉を開け一人の若者の腕を掴んで引きずり出そうとしていた。男は三十代後半ほどで、鋭い目つきをしている。若者の口には猿轡が噛まされ、手足には縄で縛られている。若者は必死に抵抗しているが、衰弱していて力がないようだ。

 黒いローブの男は、若者を引きずりながら、突然現れたわたしたちを見て目を見開いた。


「何者だ!?」


 男が叫んだ。


「王立騎士団だ。抵抗しても無駄だ」


 先頭のマルクスが、剣を抜いて言った。

 男は、一瞬躊躇した。だが、すぐに決断したようだった。彼は引きずっていた若者から手を離すと、両手を前に突き出した。


「不心得者め!《火球》!」


 詠唱と同時に、男の手から火球が放たれ――ようとした。だが、火球は形を成さず、手の中で霧散した。《対魔力結界》が、魔法を無効化したのだ。

 男の顔が、驚愕に歪んだ。


「何だと……!? 魔法が……使えない……!」


 その間にマルクスが盾を前にして男に突進する。男は慌てて短剣を抜いたが、マルクスは盾で弾き飛ばすと、剣を持った手で男の顔面を打った。鈍い音がして、男は床に倒れる。

 マルクスはすぐに男を腹ばいにすると腕を後ろで縛り、ヴェルナーが猿轡を掛ける。


「制圧完了」


 マルクスが短く報告する前に、イザベルが倒れている若者に駆け寄っていた。わたしも彼女を追う。


「大丈夫か?」


 そう訊ねるイザベルに彼は涙を流しながら頷いている。猿轡を外すと、「ありがとう……ございます……」とか細い声で言った。

「もう安全だ。すぐに医者に診せる。名前は?」イザベルがびっくりするくらい優しく言った。初めて聞く声だ。その貴重な声に若者は、

「……トーマスです」と答えた。


 他の牢を見て回っていたヴェルナーが、『副団長、他にも人質がいます。三人です』と報告した。


『男が二人、女が一人。皆、衰弱していますが、生きています』

『よし、全員を一階へ運べ』


 すっかり元の声に戻ったイザベルが命じた。マルクスとヴェルナーが、牢の鍵を壊し、中にいた三人を抱え上げた。皆、トーマスと同じように痩せ細り、衰弱していた。口には猿轡がかけられ、手足は縛られていた。

 わたしは、その光景を見て、怒りが込み上げてきた。こんなことが、この王都で起きていたなんて。


「ルナリア嬢、まだ結界は維持できるか?」


 イザベルが、わたしを見た。


「はい、まだ大丈夫ですわ。あと二十分ほどは持続します」

「分かった。念のため掛けたままで。では、全員を一階へ運ぶ。ヨハン、状況は?」

『異常なし。拘束した敵は全員、大人しくしています』ヨハンの声が、耳飾りから聞こえてきた。

『了。人質を連れてそちらに戻る』


 人質は誰も自分では歩けないので、上の階からフリッツを呼び、エリクとヴェルナー、エリザベスで抱えて連れて行くことになった。驚いたのはマルクスだ。床に縛られて倒れている男を立たせると、片手でひょいと自分の肩に乗せたのだ。その様子に驚いたわたしの様子に気がついた彼は、ちょっと笑うと、


『ルナリア様、どうぞお先に』


と先に階段を上るように促した。どうやらわたしを最後に残すわけにはいかないようだ。わたしはおとなしく彼の言葉に従って階段を上った。もちろん抱える人や物はない。魔法使いは力仕事に不向きなのだ。


一階の入口の広間に戻ると、捕まった者がたちが壁に沿って並べられて座らされていた。全部で七人。見張り一人、一階の五人、階段の女一人、そして地下の男だ。人質の四人は水を与えられ、どこから持ってきたのか、座れる者は椅子に、その体力がない者は床に寝かされていた。ヨハンが怪我や隊長などを確認したりと、細々と世話をしている。


「副団長、全員揃いました。二階は物置で誰もいませんでした」力持ちのマルクスがそう報告した。もう声を気にする必要はないので、耳飾り経由ではなく普通に話している。

「分かった」と答えたイザベルが建物の入口に向かい、扉を小さく開けた。外の光が差し込む。イザベルは腰の小袋から銀色の羽根を取り出し、空中に魔力で文字を書きつけた。羽根がその文字を吸い込む。


「王立騎士団本部へ。港湾地区南建物にて、誘拐された者四名を保護。医療支援と護送部隊の派遣を要請する。イザベル・アドラー」


 イザベルが羽根を空に放つと、羽根は光の軌跡を描いて王立騎士団本部の方角へと飛んでいった。念のためわたしの魔法結界がまだ張られているので、部屋の中から送るわけにはいかないのだ。

 扉を閉めた彼女は、わたしたちの元へ戻ってきて「三十分ほどで到着するはずだ」と言った。

 そして、拘束された敵たちを見回した。


「さて――」


 イザベルは、並んでいる黒いローブの男たちの前に立つと、


「話を聞こうか」


と言った。


(第五十四話 了)

お読みいただき、ありがとうございました。


ようやく気の毒なトーマスが助けられました。あまり詳しく書けなかった騎士団のメンバーですが、とりあえずマルクスは力持ち、ということで。著者も忘れないようにしなければ(笑)。


「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークや、ページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります。


次回は明日の11時の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

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