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【連載開始3ヶ月でPV10万達成!&第三部開始!】病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第二部【王都陰謀編】

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第五十四話:「救出、二」【前篇】

 全員の用意が整ったのを確認したイザベルが改めて作戦を確認する。


『ヨハン、フリッツ、お前たちが先頭だ。盾を構えて突入する。ヴェルナーと私が後に続き、左右を警戒する。ルナリア嬢、突入の瞬間に目眩まし頼む。その後すぐに消音、そして用意ができ次第、対魔力結界を展開してくれ』

『分かりましたわ』


 イザベルは素早く、建物の入口へと近づいていく。わたしもその後ろに続いた。建物の扉は新しく重厚な木製だった。

 イザベルがヨハンとフリッツに目配せすると、二人は盾を構え、扉の両脇に張り付く。イザベルが扉にそっと手をかけた。そして、魔法の耳飾りに囁いた。


『三で入る。ルナリア嬢、合図と同時に術を』

『はい』


 わたしは、魔力を手のひらに集中させた。

『一』

 ヨハンとフリッツが、盾を胸の前に構えた。

『二』

 わたしは、呼吸を整えた。

『三』

 イザベルが扉を蹴破った。


「《閃光》!」


 わたしは、詠唱と同時に魔法を発動させた。眩い光が炸裂して部屋全体を照らし出し、中にいた者たちが目を押さえて怯む。全員黒いローブを着ていて性別は分からないが五、六人いるようだ。ヨハンとフリッツが、小型の円形の盾を前に、イゼベルの両脇をすり抜けて突入した。わたしはすぐに次の詠唱を始めた。


「《静寂の帳》!」


 その瞬間、周囲から音が消えた。物が倒れる音も、騎士たちの足音も、全てが無音になる。二人の騎士は内部へと滑り込むと、閃光で目を押さえている敵に素早く接近し、盾で押し倒したり、足払いをかけたりして次々と床に伏せさせていく。その全てが無音なのが不思議な感じだ。続いてイザベルとヴェルナーに守られながらわたしも部屋に入る。イザベルも手で目を手で覆って右往左往している一人を剣の柄で打って制圧した。


『入った、敵五名』

 ヨハンの声が魔法の耳飾りから聞こえた。

『了。こちらも入ります』と裏口のマルクスの声が聞こえる。


 わたしは術式を唱える代わりに、宙に指で素早く術式を書く(汝、敵の魔力の流れを断ち切る壁となれ――《対魔力結界》)。足元の床に魔法陣が浮かび上がり、部屋の壁に沿って青白い光が展開される。この程度の建物であれば私の魔力なら一階から地下までは効果の範囲内のはずだ。

 一人の黒いローブの男が立ち直り、詠唱を試みて――失敗する。口が動いているが、声は出ない。慌てて指で術式を書こうとするが、フリッツが盾で殴り倒した。《静寂の帳》と《対魔力結界》の二重の封じ込めだ。その様子を見たすでに倒されてもがいていた男が、驚愕の表情を浮かべている。

 騎士たちは素早く敵の手を後ろで縛ったうえで、詠唱ができないように猿轡を噛ませて、腰の短剣や懐の小瓶を取り上げていく。戦闘はほんの数十秒で終わった。五人の敵は、全員床にうつ伏せに転がされている。何人かは気絶し、残りは呻きながらなんとか逃れようと身を捩っている。

 全員の拘束が終わる頃――《静寂の帳》の効果が切れた。突然、音が戻ってくる。騎士たちの荒い息づかい、倒れた男たちの呻き声が聞こえる。夢から現実に戻ったような感じだ。


「五人全員、拘束完了しました」


 ヨハンが報告した。全てが終わるまで、わずか一分足らずの出来事だった。


「よし。ヨハン、お前はここに残って監視しろ」

『了』

『エリク、マルクス、裏口からの侵入状況は』


 イザベルが、魔法の耳飾りで確認する。


『裏口から侵入し、敵一名を制圧しました。現在、残敵に注意しつつ地下への階段に向かっています』

『了。こちらも階段に向かう。ヨハンはここに残ってこいつらを見張れ』

『了』


 この場にいる全員、この建物の間取りは頭に入っていた。わたしたちは、音を立てないよう慎重に階段がある方へと進んだ。《静寂の帳》の効果はもう切れているが《対魔力結界》は、まだ維持している。

 地下へと続く階段に着くと、すでに到着していたマルクスとエリクと合流した。二人の足元には、縛られた男が一人、気絶して転がっている。ここまで引きずってきたようだ。イザベラがその様子を見て小さく頷く。


「地下にも敵が残っているだろう。人質が危険に晒される前に、制圧する」


 そう言って階段を覗き込んだイザベルが右手を上げて全員を止めた。全員が耳を澄ます。地下から、かすかに物音が聞こえる。

 その時――階段の下から、足音が聞こえてきた。誰かが、上がってきているのだ。

 イザベルは、素早く全員に手の平を下にして小さく上下に動かした。マルクスの誘導でわたしは他の騎士たちと同じように、階段の両脇にある木箱の影に身を潜めた。

 足音が近づいてくる。そして――黒いローブを着た女が、階段を上がってくるのが見えた。三十代ほどの、鋭い目つきをした女だ。

 女が階段を上がりきった瞬間――身を伏せていたイザベルが背後から左手で女の口を抑えながら、右手の短剣を喉に突きつけた。


「声を出すな」


 女は凍りついたように動かない。素早くフリッツが猿轡を掛け、イザベルと場所を代わったヴェルナーが後手に縛る。そのまま二人で女を両脇から持ち上げると、マルクスを残した全員が、階段から少し離れたところに移動する。イザベルは膝立ちの姿勢にした女の耳に顔を近づける。


「私は王立騎士団副団長のイザベルだ。ちゃんと答えれば生かしてやる。下に子供たちはいるのか?」


 女はイザベルを凄い目で睨みつけると何事が喚き出した。猿轡のせいで何を言っているのかは聞き取れないが、酷い罵りの言葉なのは分かった。イザベルは女から少し顔を遠ざけて質問を繰り返すが、女は血走った目で暴れるだけで答える様子はない。猿轡に塞がれている口から泡が吹くのを見た、イザベルは冷たい声で「無駄か」と言うと、ベルトから小さな瓶を取り出した。瓶の蓋を開けると、左手で黒いローブの上から女の頭を抑え、その瓶を女の鼻の前に持っていく。狂ったように暴れていた女があっという間に静かになった。


『これでしばらくは目を覚まさない。フリッツ、頼む』

『了』


 フリッツが女を物陰に引きずって隠すと、全員でマルクスが待つ階段へ戻る。


『動きは?』

『ありません』

『これ以上の時間は掛けられない。フリッツはここで警戒、残りの者は下りるぞ』

『了』


 わたしたちは階段を降り始めた。先頭はマルクス、その後ろにエリク、ヴェルナー、イザベル、そしてわたしだ。階段は暗く、狭かく、冷たく湿っていた。壁に掛かっているランプを頼りに階段を降りていくと、下から物音が聞こえてきた。何かを引きずる音。そして――くぐもった呻き声と誰かが話しかける声だ。


(トーマス……?)


 胸が締め付けられる思いがした。わたしたちは、足音を殺して階段を降りた。やがて、地階に辿り着いた。

お読みいただき、ありがとうございました。


 ようやく突入です。準備に時間を掛けたぶん、こちらはサクサク進めます。


「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークや、ページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります。


次回は本日の23時の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

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