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デート前日。

リッテは何で何でと何着かの服をベッドの上に広げて、どうしてこうなったと頭のなかでぐるぐる疑問をまわしていた。

ルーヴィッヒはゲームで一番あっさりしたストーリーなのに。

というか、ルグビウス以外は本当におまけ程度のストーリーだったのに。

ルーヴィッヒがゲームキャラじゃない以上、予想外の行動をとるのはおかしくない。

おかしくはないが、何故悪役、つまり悪女とデート。

何故デート。

デート、デート、と何度もその単語を不安に駆られながら呟く。

そして明日着て行く並べられたワンピースを見下ろして、ううんと首を傾げた。

デートって何を着ればいいんだ。


「侯爵令嬢ぽいのを着ればいいのかな……」


手前にあった赤いワンピースを手に取る。

悲しいかな、リッテの外見は妖艶な系統だから淡い色や可愛らしい色は似合わないのだ。

しかも黒髪なので赤やら派手な色がよく映える。

しかし真知子は寒色系が好きなので、真っ赤なんて途方にくれるしかない。

現在そんなリッテの好みを知ったクラバルトが寒色系の服を手配してくれている最中だ。

黒髪だから大概の色はなんとなくまとまって見えるのでよかった。

ちなみにリッテは頑張って外見に合わせていたので、外出のたびにちょっと落ち込んでいたらしい。

いじらしい子となぐさめたくなった。

ちなみにクラバルトには素直に申告しろと怒られた。

時間が経つにつれてオカンの特色がつよくなっている気がする。


「お忍びで行くんですから、そんなもの着れるわけないでしょう」


噂をすればなんとやら。

クラバルトが部屋に入ってくるなり、呆れたようにため息を吐いた。


「そうなの?」


手に取ったワンピースを思わず見下ろしてしまう。

たしかにお忍びと言われた。

だから一番シンプルな服を選んだつもりなのだけれど、これは駄目らしい。

真知子はお洒落とは無縁だったからその辺がいまいちよくわからない。

服やメイク道具は一番お金をかけなかった部類だ。

好きではあったけれど、食費を削るのがいやだったのでそちらの分野を削りに削ったのだ。


「当たり前です。ちゃんと準備していますから大丈夫ですよ」


それなら早く言って欲しい。

無駄に服を引っ張り出して悩み続けてしまった。

とりあえずクラバルトがそう言うのなら大丈夫だろう。

明日はいったいどうなるんだと、ため息を飲み込みながらも、ほんの少しだけリッテは楽しみで気分を浮かせていた。


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