28
リッテは膝の上に乗せたルーヴィッヒをぎゅうぎゅうに抱きしめていた。
そのよく発達した胸が潰れるんじゃというほど強く抱え込んでいる。
ちなみにルーヴィッヒはスンとした顔で好きにされていた。
最初はもっと離れるようにとか色々と注意されていたけれど、雷が鳴るたびにリッテがぬいぐるみかのごとく抱えるので諦めたのだ。
そんなことをしばらくのあいだしていたら、雷は落ち着いたのか外からの轟くような音はなくなっていた。
なんだったんだ、あの雷はというくらい何もなかったように静まり返っている。
それでも離れがたくてルーヴィッヒは抱えたままだ。
抱えているルーヴィッヒの体と密着しているせいか、トクトクトクと規則的な心臓の動きを感じる。
その音が胸を通してリッテに届くのが心地よく感じて、その音にもっとと浸るように目を閉じた。
目を閉じていたらその音に引きずられて、微かなまどろみが溢れてくる。
「こら、寝るな」
「ふぁい!」
ルーヴィッヒの声に、あわててリッテは目を開けた。
どうやらルーヴィッヒの体を抱く腕から力が抜けていたらしい。
しっかり抱えなおすと「違う、そうじゃない」とルーヴィッヒは呟いていた。
「暖かくしたとはいえ服は濡れてるんだ。体温が下がる」
「はい」
「先に服を乾かせばよかったな。これ以上は使えない」
しまったというようにルーヴィッヒが嘆息する。
「使えないって、結界そんなに大変なんですか?それならもう大丈夫だから止めてください」
「結界は問題ないよ。服を乾かす程度なら子供にならないから、そちらを先にすればよかったというだけ」
「子供になったら魔法使えなくなるんですか?」
ことりと首を傾げると、束になってしまっている髪も揺れた。
やはり水をしっかり吸っているせいで重い。
「使えるけど制御が難しくなるんだよ。一人ならともかく、近くに誰かいるときには使わないようにしてる」
「なんか大変そう。でも服まで縮むのは凄いですよね。そういえば、どのくらいで元に戻るんですか?」
「服は、まあ魔法が作用しているみたいだね、いまいち解明出来てない。戻るのは一日程度かな、それか不足した分を補うか」
「補う?」
訊きなれない単語だ。
きみキラは戦闘があったわけではないので、ルーヴィッヒというキャラが魔法が得意なことや、ラナメリットが聖女に目覚めるときくらいしか魔法の設定は使われていない。
ほぼ魔法とは無縁のゲームだ。
魔法についてはリッテにはどうなっているのかわからない。
ルーヴィッヒの子供へ縮むことは他の媒体にもあるのか疑わしいけれど、魔力を補うというのはコミカライズにもアニメにもあってもおかしくはないかなと思う。
頑なにならず両方とも手を出しておけばよかった。
「魔力の補助ってどうやるんですか?」
「手から魔力を流すんだよ」
「殿下が私にやったみたいなやつですか?」
「あれに近いかな。本来は高等部で教わることだけどね」
「殿下は縮むから特別に教えてもらったってことですか?」
そのとおり、とルーヴィッヒが頷く。
でも確かにそんなことが出来るのなら、ルーヴィッヒは知っておいたほうがいいだろう。
魔力を補うかどうかで戻る速度も違うはずだ。
「でも手だけだと、あんまり補充できなさそうなイメージなんですけど」
「⋯⋯大量に補充できる方法はあるよ」
「へえ、何です?」
何気ない会話の流れで訊いただけなのに。
「君にこの話はまだ早い。この話は終わり」
ぶった切られてしまった。
なんでだ。
よくわからない。




