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「リッテ様!大丈夫ですか!?」


ラナメリットの必死な声に上を見上げると、顔色の悪い美少女がいた。

こんなときでも可愛らしい。

顔色の悪さはちょっといただけないけれど。

ちなみにラナメリット以外のメンツは真っ青だった。

ケラミルカ以外の女子生徒にいたっては、震えて見える。


「わ、私のせいじゃない!」


ケラミルカは甲高く言い切ると、あっぱれなくらいの引き際で走り去っていった。

助ける気が一切なくて、いっそ清々しい。


「なんか、凄く短絡的⋯⋯」


なんだろう、きみキラの世界だからだろうか。

とてもあっさりとわかりやすい犯行だった。

うーんと思わず考えてしまっていると、鼻の上にポツリと雫が落ちた。

そして、どんどんと上から水が降ってくる。

見上げると、すっかり暗い雲に空が覆われていた。

雨もどんどん強くなっていく。


「嘘でしょ」


なんてついてない。

雨空を見上げながら「え、この雨のなか元の道にもどるの?」とリッテはぐったりと息を吐いた。

多分どこかゆるい傾斜があるだろうから、そこから登ればいい。

最悪、この崖を自力クライミングだ。

それだけは勘弁してほしい。


「すぐに行きます!」


ラナメリットも慌てているのか、こちらへ滑り降りてこようとしている。

そんなことになったら遭難者二人だ。

それは阻止である。


「待って待って!どこか木の下で雨宿りしてるから、誰か呼んできて」

「でも⋯⋯」

「大丈夫だから」


置いていくことに罪悪感があるのか、ラナメリットが眉を下げる。

しかしラナメリットが降りてきても正直、何もできない以上は応援を呼んでもらうしかない。

今日の行事は騎士も帯同しているのが救いだった。

そのまま「すぐに戻ります!」と声を張って、ラナメリットが茂みの向こうへと姿を消す。


「さてと」


ドロドロの服は行事用の長いキュロットのようなものとシャツに上着だ。

スカートじゃなくてよかった。

パンツ丸出しの危機はまぬがれたと立ち上がったところで。


「いったああい!」


右足に激痛が走った。


「⋯⋯え?」


正直立っているだけで痛い。

これはもう無理だ。

雨でぬかるんできた地面に情けない気持ちでリッテは座り込んだ。


「うそぉ」


もしかして雨が止むまでここで濡れネズミだろうか。

そのままポツンと雨のなか座り込んでいると、体が冷えて震えてきた。

体温が奪われて、指先が冷えきっている。


「うぅ⋯⋯さすがに心折れそう」


ひーんと立てた膝に顔を埋めて途方にくれる。

リッテの長い黒髪がぐっしょり濡れて重かった。

正直あんな場面スルーして戻らなければと思ったし、もしくは身をていしてわざわざ自分が守らなきゃいけなかったのかとか思ってしまう。

ラナメリットはヒロインだ。

こんな状況はどう考えてもヒロイン枠の人物がぶつかる場面だ。

ラナメリットなら、きっとルグビウスが助けに来てくれた。

けれど真知子はやっぱり小心者な人間だったから、知り合いが危ないと無視は出来ないのだ。


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