21
校外実習の日は残念なことに曇りだった。
せっかくなら晴れればいいのにと思ってしまう。
今日の目的は薬草採取だ。
ついでに集団行動の訓練。
実習というより遠足だ。
午後には学校に戻るので、お弁当がないのが少し残念だ。
遠足なんて、それが醍醐味なのに。
(にしても⋯⋯)
ちらりと同じグループで固まっている面々を見やる。
その一人はどんな偶然か、ラナメリットがいた。
何とも気まずそうだ。
まあ、こちらも気まずい。
ぶしつけに踏み込んだ自覚はある。
ラナメリットにしても理不尽に感じただろうと、ちょっと気落ちしたのだ。
他にも数人の女子生徒と男子生徒でグループは構成されている。
男子生徒はラナメリットをチラチラと気にして、女子生徒はそんな様子に不満気だ。
わかりやすい。
大丈夫かなこれ、と思っていると生徒の中からルーヴィッヒが見えた。
今日は王子二人が校外実習に参加しているということで、学校の騎士も同行している。
思わずじっと見てしまうけれど、ハッと我に返り視線をそらす。
あいかわらずゲームと同じように、穏やかに笑っている。
(あんな意地悪なくせに)
何でリッテにだけゲーム仕様じゃないんだと、憤りたくなる。
ブツブツと脳内で文句を言っていると、リッテ達のグループの出発になった。
とりあえずは校外実習だと、他のグループメンバーと山を登り始める。
以外と傾斜はあるけれど、道が通りやすいように整備されていて、お坊ちゃまやお嬢様にも登りやすく出来ていた。
まあ貴族に何をさせているんだと思うけれど、ゲームやアニメではよくあることだ。
すぐ目の前を歩いているラナメリットの背中を見て、一瞬の逡巡のあとに思い切って彼女の背中をそっと叩いた。
それに反応して振り向いたラナメリットの顔は驚きを浮かべている。
「あの、話が⋯⋯」
もごもごと口ごもっていると、ほんの少し力を抜いた顔でラナメリットが歩く速度を落とした。
自然とリッテと横並びになる。
ちらりと見れば、おずおずとした視線が横からバッシバシに向けられているのがわかった。
声をかけた手前、こちらから水を向けるべきだろう。
「あの⋯⋯このあいだ、変なこと言っちゃって」
「いえ⋯⋯私の方こそ何か不快にさせてしまったみたいで」
「そんなことは、ないよ」
嘘だ。
少なからずモヤッとしたのは事実だ。
しかしそれを直接本人に言うのは、はばかられる。
「えっと、生徒会の仕事を押し付けてごめんね」
「いえ、大丈夫です。ルグビウス殿下も親切に色々教えてくださいますし」
ルグビウスとは仲良くなっているらしい。
確実にルグビウスルートに入っているようだった。
生徒会の他の二人は初期イベント的だったのかなと思う。
(いつのまに)
ルグビウスルートはリッテが望んだ展開だ。
それは嬉しい。
嬉しいけれど、以前ルーヴィッヒとのフラグが立ちかけたことも思い出す。
といっても、そのあとチョコレートを渡そうとして辛辣な言葉をかけられていたけれど。
まんがいちにもルーヴィッヒとの仲が深まったら、なんて思ったら胸の奥が気持ち悪く感じる。
リッテはルーヴィッヒは好きだったけれど、ラナメリットとのカップルエンドには興味がなかった。
というか、本当に単体で好きだったのでラナメリットと並んでも何とも思わなかったのだ。
それでかなと、内心首を傾げる。




