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「そういえば、もうすぐ校外実習だね」
「なんです、それ」
そんなものあったっけ?と思っていると、逆に何故把握してないんだというような目を向けられてしまった。
もしかしたらぼーっとして聞き流したのだろうか。
そんなリッテに、はあと小さくルーヴィッヒは呆れたように嘆息した。
「薬草なんかの採取と、一応グループで連帯感を養うことを目的としたものだよ。大きくはないけれど、山に登るから、三年と合同だ」
「じゃあ殿下も行くんですね」
「そうだね」
そんな実習あったんだーと呑気に思いながらも、あれと思った。
ゲームになんかあったような気がする。
この『きみキラ』というゲームは本当にほのぼのとした、どこに山があるんだよとツッコミたくなるくらい、ほのぼのと愛を育む内容だ。
正直ゲームというよりテキストを読んで、たまに選択肢が出る程度のスチルを楽しむものだった。
しかも制作陣の贔屓が凄い。
本当にルグビウス以外のキャラへの関心の低さが話題になったのだ。
乙女ゲームの流行るだいぶ前に作られたとはいえ、もっと何とかなっただろうというレベルだ。
(でも校外学習なんて、あったっけ?)
はてと不思議に思う。
まあゲームのイベントもうっすらとした記憶しかないし、そもそも別媒体のイベントならリッテにはお手上げだ。
真知子はゲーム一筋だったのだから。
(そもそも、ここは現実だしな)
そう思ったことで、あれと何かが違和感になって脳裏をよぎった。
何だろうと首を傾げてしまう。
「どうかした?」
訝し気なルーヴィッヒを見やって、やっぱり何だか違和感を感じたけれど、それを上手く言語化できない。
「⋯⋯いえ」
何でもないと言いながら、自分が思った現実という言葉に言いようのないものを感じる。
(そうだよ、何あたりまえのことを今さら。変なの)
ここは現実だ。
そんなことは、わかってる。




