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 学園での昼休み。

 また懲りずにラナメリットを昼食に誘って中庭のベンチにいた。

 ちなみにルーヴィッヒにチョコレートを断られて傷ついているかと少し心配したけれど、まったく気にしていないというので信じることにする。

案外メンタルは強いのかもしれない。

 しかし基本的には健気な子なんだろうなと思う。

 食堂で貰って来たランチボックスを膝に乗せると、ラナメリットも持参したランチボックスを膝に乗せる。

 そういえば結局手料理イベントが発動していないなと不思議でならない。

 まあゲームでも大きなイベントがあるわけではなく、淡々と仲良くなっていくシーンが続くだけだったけれど。

 おかげでイラストだけの駄作とこき下ろされたものだ。

 蓋を開けて食べようかと思ったところで、前方から何故か騎士志望のサイールが歩いてきた。

 何故ここにサイールが?とハテナを飛ばしながら首を傾げるリッテだ。


「ラナメリット嬢、少しいいか」

「はい、どうしましたか?」


 ことりと可憐な仕草でラナメリットが首を傾げる。

 上目使いがなんともあざとい。

 サイールはほんのり頬を染めて、手に持っていた包みを差し出した。


「このあいだの礼だ。よかったら食べてくれ、人気の菓子だと聞いた」

「まあ、ありがとうございます」


 フラグ回収―!

 リッテは心の中で大声を上げていた。

 ここにきてサイールの好感度が上がったらしい。

 ラナメリットがにこにこと包みを受け取ると、サイールはぎこちなく頷いてじゃあと立ち去って行った。

 思わずその背中を見つめてしまう。

 お前硬派キャラだっただろ。


「サイール様って優しいですね」


 ラナメリットは包みを横に置くと、何事もなかったかのようにランチボックスの蓋を開けようとした。

 随分とあっさりしている。

 その様子を見る限り、サイールに好意はないように見えた。

 リッテは何ともいえないもやつきを感じてしまう。


「あのさ、ラナメリット様はルグビウス殿下が好きなのよね?」

「え!どうしたんですか急に」


 ぽっとラナメリットの頬が淡く朱に染まる。

 その様子に内心ほっとしながら、むむっとリッテは眉根を寄せた。


「駄目じゃない、ルグビウス殿下が好きなのに他の人に思わせぶりな態度とっちゃうなんて」

「そんなことしてません」


 リッテの言葉に、ラナメリットは心底わからないという顔で不思議そうにしている。

 これは完全に本人に他意はなさそうだ。

 自分がモテるという自覚がないタイプとみた。

 そうなると昨日のサイールとの距離の近さも、親切心しかなかったのだとわかる。

 しかしそうなると、他の人間からどんどん好意を向けられてしまうのではと思った。

 ルグビウスとくっつくどころではなくなってしまいかねない。


(私がフォロー頑張らないと!)


 ふんとリッテは自分の結論にいたり、荒く鼻息をついた。

 決意も新たに食事をとって教室に戻る道すがら。

 ラナメリットは先生に呼ばれているというので途中で分かれて、リッテは一人だった。

 傍目は楚々として、実態は呑気に歩いていると向かいからルーヴィッヒが歩いてきた。

 くすぶっている腹立たしさに、ちょっとむっとしてしまう。

 向こうもリッテに気づいたようで目が合った。

 無表情に冷めた眼差しを向けられて、カチンとくる。

 やっぱりあれはもう推しキャラではない。

 べっと思わず舌を出してツンとそっぽを向いてすれ違う。

 ルーヴィッヒがぽかんと驚いた顔で、すれ違ったリッテに振り返ったけれど本人は気づかず先ほどよりいささか速足で歩き去って行く。

 リッテは少し溜飲をなんとか下げつつ、まあもう私はルーヴィッヒに関わらなくて全然かまいませんし!と大声で心中主張しまくっていた。


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