せせらぎ
川はだいたい好きです(*´-`)
こちらの作品は、カクヨムさんにて連載中の「オカルトレベル(低)の物語をどうぞ。」にも掲載しています。
ああ、ずいぶん、遠くまで来たもんだ。
都会の喧騒に嫌気がさして、僕は一人、自然あふれる山にやってきた。
ここには、耳障りな音がない。
ここには、心臓に悪い声がしない。
ここには、何も、ない。
ただ日の光を遮る大木があり、ただ大木の根が行くてを阻んでいるだけだ。
ただひたすらに、前に進む。
ただひたすらに、周りを見ずに。
ただひたすらに、考えることをやめて。
聞こえない場所はここにあった。
聞きたくないものは聞かなくていい。
聞かない幸せに浸る、僕。
聞こえてくるのは、僕のやや乱暴な足音と、木々のざわめき…。
おや。
木々のざわめきの合間に、心地のいい音が聞こえた気がする。
こぽ、こぽ…サラ…サラ…
この樹海には、川がないと聞いているのだが。
僕の耳に聞こえてきたのは、穏やかなせせらぎの音。
一際大きな木の根っこを越えて、せせらぎの聞こえる方へと足を運ぶ。
…小さな、水路があった。
この水はいったいどこからきているのだろう?
久しく湧くことのなかった好奇心が顔を出した。
水路のもとを探して、水の流れをさかのぼる。
枯草や小枝、木の根っこをかき分けて、足元に注意を払いつつ進むと、だんだん水路に幅が出てきた。
これは、もう、川だな。
ぽちゃ、ポチャ…ザー、ザー…
心地よい川の流れの音を聞きながら、川べりを進む。
あんなに木の根に阻まれていた僕の足が、小石を踏むようになる。
川べりには、砂利があるものだからね。
じゃり、じゃり・・・
歩いていくにつれ、川幅はずいぶん広くなっていく。
…こんなに広い川があったとは、知らなかった。
広い川には、せせらぎの音はなく、ただ静寂があった。
しばらく、僕はその自然の雄大さに、見惚れていたが。
「乗りますか?」
川べりに、渡し船が流れてきた。
船頭が、僕に声をかけてきたので。
僕は。
「お願いします。」
渡し船に乗り込んで。
あの世へと、旅立った。




