沈黙
もー、すぐ余計なこと言う!
「ちょっと。話があるんだけど。」
目の前には、仁王立ちの、娘。
いささか、怒りの表情が、見える。
うそ。
めっちゃ、おこってる。
ヤバイ。何やらかした、私。
いれたてのコーヒーのにおいをくんと嗅ぎ、微笑みを、返してみる。
「あら、ごきげんよう。どうかなさいまして。」
優雅な一言に、怒りも収まろうて。
「何言ってんの!! すぐごまかす!!!」
全然収まらなかった。
むしろ煽った。
「まあまあ、そう怒りなさんな。微笑ましい顔が台無しだよ!」
「その微妙に失礼な物言い! 何とかなんないの!!!」
しまった、口が滑った。
さらに怒りが増したようだ。
どうも私は、いらん一言を、言いがちだなあ…。
「小説。書いてるでしょう。」
!!!!!!!!
「猫の神様。」
いったいなんの、話でしょうか…。
「ひげ。」
ええとぉ・・・。
「おばあちゃん。」
何かを言わねば場が持たない。
しかし、何かを言ったが最後、絶対に墓穴を掘るパターンだ!
どうする。
認めるのか。
認めないのか。
認めるのか。
認めないのか。
私はただ、沈黙を続ける。
「鍵。」
「あれ、私のこと、だよね…。」
「カラオケに持ってったおつまみ、唐揚げ二つ持ち帰っただけで、あれ…?」
「のど自慢大会、出たけど花束渡す役だったよねえ…?」
「夜中にあくびしながら書いてたの、小説だったの…?」
あかん。
ここに敵がいる。
逃げようとしても「しかしまわりこまれてしまった!」のやつだ!!
動けない!!!
「なんで、人の日常、闇化して大々的に発表、してるの…?」
うわあ、娘の背後に、揺れる陽炎が見える!
もちろん怒りのオーラに違いない!!
ちょー面白い!!!
「おもしろいから。」
ああしまった、ついつい口が!!
「認めたな!! どうしてくれんのさ!! 友達から唐揚げ残してごめんねとか言われた私の気持ちも考えてよ!! 歌うまいから元気出してって言われた私の気持ち!!! 読者の皆さんに対する後ろめたさはないの!!! 友達になんて言ったらいいの!!! 完全マルバレだよ!!!」
なんだ、めっちゃ語るな。
「人は黙して語らずというでしょう。黙っとけば?」
「口に出さんで、思いっきり文字にして発表してるやつが、何を言う!!!」
そんなに怒る事かね。
…怒る事かも。
「ご、ごめん。」
「せめて発表前に見せてよ!!」
「わ、わかった…。」
娘はぷりぷりして自分のアトリエに消えていった。
やばいなあ。
なかなか隠し事って、できないもんだよね。
全部全部バレていくよ。
気を付けないと。
私は、ぬるくなったコーヒーを一口飲んだ。
「あちっ!!」
猫舌は、人間になってもなおんないもんなんだよねえ…。
スカートの下で、自慢の二股のしっぽを不機嫌に左右に揺らしたのは、わ、た、し。
しばらく暴走自粛します(。>д<)
壮大な、伝説となる物語が発表されたので、その御御足にブルドーザーの撒き散らした泥が付着するのを防ぐべく、運転回数を減らしての対応です。
毎日三本更新してましたが、しばらく一本になります。




