別世界
ああ、実に。
実に、薄汚い世界だ。
この世界は、薄汚い。
空気も水も土も光も風も闇もすべてが薄汚い、つまらない世界だ。
薄汚い存在価値のない人間どものあふれる、つまらない世界だ。
なにをしてもつまらない世界だ。
なにも考えたくない世界だ。
なにが面白いのかわからない世界だ。
なににも喜びを見出せない世界だ。
こんな世界に生まれた自分。
薄汚い世界で、薄汚く染まっていった。
薄汚い世界で、薄汚く染まってしまった。
薄汚い世界で、薄汚く染まらざるを得なかった。
染まりたくなどなかった。
自分は薄汚い世界の片隅で、自分らしさを忘れずに生きていけたらいいと願っていた。
自分は薄汚い世界の片隅で、自分だけは自分らしさを忘れずに生きていこうと藻掻いていた。
自分は薄汚い世界の片隅で、自分だけは自分らしさを忘れずに生きていくつもりで頑張っていたはずだった。
つぶれてゆく。
つぶれてゆくしか、できない。
自分を潰した、薄汚い世界。
自分を潰した、薄汚い世界が憎い。
自分を潰した、薄汚い世界など必要ない。
今こそ、別世界へ、旅立つ、時。
薄汚い世界から解放された、自分。
…浄化されてゆく。
…薄汚さが、消えてゆく。
…自分本来の、姿が、ここにある。
薄汚い世界に穢された自分が、解き放たれてゆく。
ああ、自分はこんなにも純粋で。
ああ、自分はこんなにも素直で。
ああ、自分はこんなにも無垢で。
ああ、自分はこんなにも傷つきやすくて。
ああ、自分はこんなにも傷つけられて。
薄汚い世界の、完全なる被害者である自分。
薄汚い世界に、全てを奪われてしまった自分。
薄汚い世界から、去らなければならなかった、憐れな、自分。
もう二度と、こんな薄汚い世界に拘りたくない。
もう二度と、こんな薄汚い世界に生まれたくない。
美しい光を目指して、飛び立った。
まばゆい光を目指して、飛び立った。
ただ、本能のままに…目指したいと思える輝きに向かっていった。
心地よい風に流され。
透き通るせせらぎに流され。
昇る朝日の眩しさを受け。
沈む夕日の穏やかさに包まれ。
雄大な山岳に逞しさを覚え。
闇の中に深い落ち着きを見出し。
美しい世界があることを知った。
美しい、世界があることを知った。
美しい、世界が、あることを、知った。
この世界は、薄汚い世界だったはず。
この世界は、薄汚い世界だったはず。
この、世界は、薄汚い世界だった、はずなのに。
自分がいない、ただそれだけで。
自分が薄汚いと信じていた世界は。
自分が薄汚いと信じていた世界は。
自分が薄汚いと信じていた世界は。
自分のいない世界が、美しいという事を、知った。
自分のいない世界は、美しいという事を、知った。




