悪の虫
悪の虫を手に入れた。
人畜無害なおとなしい人間に、悪い要素を与えてくれる、益虫だ。
あたりさわりのない、平凡な人間に、ピリリとスパイスを与えてくれる。
意見の言えない、気弱な人間に、攻撃力を与えてくれる。
目立った特徴のない、つまらない人間に、魅力的要素を与えてくれる。
いつも笑っている兄ちゃんに、悪の虫を放ってみた。
悪の虫が、やけにはりきっている。
悪の虫が、やけに羽ばたいている。
悪の虫が、やけに踏ん張っている。
悪の虫が、卵を産んだ。
悪の虫は、三匹になった。
いつも微笑んでいる姉ちゃんに、悪の虫を放ってみた。
悪の虫が、やけにはりきっている。
悪の虫が、やけに羽ばたいている。
悪の虫が、やけに踏ん張っている。
悪の虫が、卵を産んだ。
悪の虫は、五匹になった。
いつもぼんやりしているばあさんに、悪の虫を放ってみた。
悪の虫が、やけにはりきっている。
悪の虫が、やけに羽ばたいている。
悪の虫が、やけに踏ん張っている。
悪の虫が、卵を産んだ。
悪の虫は、七匹になった。
いつも怒っているクソじじいに、悪の虫を放ってみた。
悪の虫が、やけにはりきっている。
悪の虫が、やけに羽ばたいている。
悪の虫が、やけに踏ん張っている。
悪の虫が、卵を産んだ。
悪の虫は、九匹になった。
いつもにこやかなおっさんに、悪の虫を放ってみた。
悪の虫が、やけにはりきっている。
悪の虫が、やけに羽ばたいている。
悪の虫が、やけに踏ん張っている。
悪の虫が、やけに、踏ん張っている。
悪の虫が、やけに、震え出した。
「おや、こんな所に、虫が。」
にこやかなおっさんは、表情一つ変えずに、悪の虫を叩き潰した。
親を潰された悪の虫が、にこやかなおっさんに飛び掛かった。
「おや、こんな所に、虫が。」
にこやかなおっさんは、表情一つ変えずに、悪の虫を叩き潰した。
親を潰された悪の虫が、にこやかなおっさんに飛び掛かった。
「おや、こんな所に、虫が。」
にこやかなおっさんは、表情一つ変えずに、悪の虫を叩き潰した。
親を潰された悪の虫が、にこやかなおっさんに飛び掛かった。
「おや、こんな所に、虫が。」
にこやかなおっさんは、表情一つ変えずに、悪の虫を叩き潰した。
親を潰された悪の虫が、にこやかなおっさんに飛び掛かった。
「おや、こんな所に、虫が。」
にこやかなおっさんは、表情一つ変えずに、悪の虫を叩き潰した。
親を潰された悪の虫が、にこやかなおっさんに飛び掛かった。
「おや、こんな所に、虫が。」
にこやかなおっさんは、表情一つ変えずに、悪の虫を叩き潰した。
親を潰された悪の虫が、にこやかなおっさんに飛び掛かった。
「おや、こんな所に、虫が。」
にこやかなおっさんは、表情一つ変えずに、悪の虫を叩き潰した。
親を潰された悪の虫が、にこやかなおっさんに飛び掛かった。
「おや、こんな所に、虫が。」
にこやかなおっさんは、表情一つ変えずに、悪の虫を叩き潰した。
親を潰された悪の虫が、にこやかなおっさんに飛び掛かった。
「おや、こんな所に、虫が。」
にこやかなおっさんは、表情一つ変えずに、悪の虫を叩き潰した。
「おや、こんな所に、おかしな人が。」
にこやかなおっさんは、表情一つ変えずに、俺を叩きのめして、人混みの中に消えていった。
叩きのめされる俺に手を差し伸べる人は誰もいなかった。
叩きのめされた俺はただ地面に横たわる。
やがて救急車がやってきて、俺は搬送されることになった。
誰が呼んでくれたのだろうか。
この世の中も、捨てたもんじゃないと、感謝をした。
笑っている兄ちゃんに、診察してもらった。
「なんか、メンドクサイな、検査なしでいっか。とりあえず、入院ね。」
微笑んでいる姉ちゃんに、病室に連れてってもらった。
「自分でできる事は自分でやってくださいね、ナースコール押すのやめてください。」
ぼんやりしているばあさんが、隣のベッドの爺さんに付き添っていた。
「カーテンは全開にしてくれないと困る!テレビは付けないで、眩しいから迷惑なの。」
怒っているクソじじいが、はす向かいのベッドの上から怒鳴り散らす。
「おい!お前俺を便所に連れて行け!若いんだ、それくらいの事はできるだろう!」
じじいを抱えて便所に向かおうとする、俺の頭が、やけに痛む。
じじいを抱えて、便所に向かう、俺の足が、止まる。
じじいを抱えきれなくなって、倒れ込んだ。
じじいが俺を、蹴り始める。
じじいが俺を、蹴り続けている。
じじいに蹴られる俺は、蹴られる痛みよりも、頭の痛みが気になる。
ああ、頭が、痛い。
ああ、頭が、とても、痛い。
ああ、あたまが。
ああ。
あ、あ・・・。
俺は、頭の痛みに耐えかねて。
この世界から、逃げ出した。
この、世界から、にげ、だし、た。




