二人きり
とんだヤンデレがいたもんだ。
ああ、やっと、二人きりに、なれた。
ずいぶんうるさい、空間の中で。
あなた以外の誰かがわめいていたわ。
ずいぶんうるさい空間の中で、あなたの声だけが届かない。
ずいぶんうるさい世界なんて、必要ないと気が付いたの。
あなただけいてくれたら、私はそれだけで。
ねえ、いっぱいお話ししようね。
ねえ、いっぱい愛をささやいてね。
私は、あなたの言葉を待っていたわ。
私は、あなたを愛しているわ。
私は、あなただけいてくれたら、それだけで幸せよ。
ねえ、なんで何も言ってくれないの。
あんなに私にメッセージをくれたじゃない。
あんなに私の心を震わせるメッセージをくれたじゃない。
私を愛しているとメッセージをくれたじゃない。
私に会いたいと言っていたじゃない。
ねえ、なんで、何も言ってくれないの。
私、そんなに、かわいくない?
私、そんなに、声をかけづらい?
この世界に、あなたと私、二人しかいないのよ。
この世界は、あなたと私がいる世界。
二人きりで、ずっとずっと、幸せに過ごそうねって、言っていたじゃない。
ねえ、なんで?
なんで、私を見つめるだけで何も言わないの。
うるさいことをいう人なんて、誰もいないわ。
この静寂の中に響くのは、あなたと私の声だけだもの。
うるさいものなんて、何一つ必要ないでしょう?
うるさいものなんて、必要ないでしょう?
さあ、私を抱きしめて。
さあ、私を独り占めして。
さあ、これから永遠に、二人きりの世界を楽しみましょう。
ねえ、どうして何も言わないの。
ねえ、どうして私の目を見てくれないの。
ねえ、あなたの愛している人は、私でしょう?
ねえ、あなたはどうして逃げ出すの。
ねえ、どうしてあなたは、二人きりのこの世界から逃げ出そうとするの?
ねえ、とてもつまらないわ。
ねえ、あれほど私にこの世界を語ったあなたはどこに行ってしまったの。
ねえ、あなたはこの世界が邪魔だと言っていたけれど、世界を消したら何もできなくなってしまったわ。
あなたは、この世界で、私を逃げ道にしていただけなのかしら。
愛する私と会いたいけれど、世界がそれを許さないと言っていたわ。
愛する私を抱きしめたいけれど、世界がそれを許さないと言っていたわ。
だれにも文句を言われない状況があったなら、僕は永遠に君を離さないのになあと言っていたわ。
今、あなたの望みはすべてかなっているというのに。
なぜ、あなたは私を抱きしめないの。
なぜ、あなたは私に愛をささやかないの。
なぜ、あなたは、私の前から逃げ出そうとするの。
ねえ、あなたは、自分が世界の中心でいたかっただけなのかしら。
あなたが望む、あなたに都合のいい世界。
そこに、私は、いなかったのかしら。
ねえ、私、とても悲しいわ。
私は、あなたがいとおしくて、世界をすべて消し去ったというのに。
あなたの嫌った世界をすべて削除したのに、あなたは私を愛してくれない。
あなたはあの世界を嫌っていあたはずなのに、こんなにも世界の損失を悔やんでいるわ。
あなたはあの世界がすべて悪いと言っていたのに、なくなったとたんに、あの世界にすがろうとしているじゃない。
この世界に、あなたと私、二人きり。
これから、ずっと愛を語ってくれるんでしょう?
これからずっと、私と一緒にいるんでしょう?
ねえ。
あなた、とってもずるいわ。
私、あなたの望みをかなえてあげたのに。
あなたは、私の望みをかなえてくれない。
あなたはずるい、とてもずるい。
あなたを責めたくて、私は二人きりになったんじゃない。
あなたに愛されたくて、私は二人きりになったのよ。
駄目よ、あなたは、私と一緒にいるの。
駄目よ、あなたは、私から逃げられないわ。
ね、私と一緒に、ずっと何もない世界で二人きりで過ごそうね。
返事をしないあなたを、ぎゅっと抱きしめたら、ぷちっとつぶれてしまったけれど。
大丈夫よ、すぐに元に戻してあげる。
あなたは、私がずっと生かしておくから。
命なんて、たやすいものだもの。
あなたが願うなら、すべて消し去ることが可能なくらい、たやすいものだわ。
あなたが願うなら、すべて元に戻せるくらい、たやすいものだわ。
でもね。
あなたは、世界があることを理由に、私を独り占めできないといったから。
私は、世界を、元に戻す気はないの。
ね、私と一緒に、ずっといてね。
私とあなたを隔てる、つまらない世界なんて、必要ないわ。
大好きよ、あなただけを愛してる。
あなたをぎゅっと抱きしめたら、あなたはやっぱり儚くつぶれてしまったけれど。
大丈夫よ。
すぐに戻して、あげるから。
私は、愛するあなたと、二人きり。
あなたとずっと、二人きり。
あなたが私の望む愛を囁いてくれるまで。
あなたと私、二人きり。
あなたが私の望む愛を囁いてくれたら、その愛に浸り続けるために。
あなたと私。
ずっと、ここで。
・・・二人きり。




