討ち取れ、敵陣のアルジ!!
Q・前回のユリカさんは何をどうやったの?
A・簡単で
す!!!!!!!!
まずは試練に挑むためのカードに下記の四枚を選びます。
《始末犬イゾウ》✝
ギア1マシン ヘルディメンション POW 0 DEF 0
◆【一ターンに一度/自分マシンカード一枚を破壊】自分の場に 《スカルナイト》(ギア2マシン/ヘルディメンション/POW9000DEF5000)一体を呼び出す。
《絶叫マシン煉獄号》✝
ギア2マシン ヘルディメンション POW5000 DEF5000
◆【このマシンが破壊された時】ターン終了まで、自分のマシンにかかったPOWとDEFの補正値は倍になる。
《女王玉座ーエンプレス・フィールー》✝
ギア3マシン ヘルディメンション POW10000 DEF10000
◆【任意】このマシンの上に、手札のギア4マシンを条件を無視して重ねて置いてもよい。こうして置いたカードはターン終了時破壊する。
《極上の乗り手ユリカ》✝
ギア4マシン ステアリング POW16000 DEF9000
◆【デミ・ゲストカード】
◆【センターがのギア4である】このマシンをセンターに置ける。
◆【バトル開始時/自分の下に置かれたカードを一枚疲労】コストカードが持つPOWとDEFを、バトル終了までこのマシンに加える。
◆【デッドヒート4(相手が走行する度に、自分の走行距離を4減らす)】
これらでPOW45000を実現します。
最初に始末犬イゾウを設置してゲーム開始。この上に煉獄号、女王玉座、玉座の効果でユリカ…………の順に重ねます。
その後、ユリカの効果で女王玉座を疲労させる事でPOW10000を吸収します。更にここでイゾウの効果を発動。煉獄号を破壊する事でPOW9000のスカルナイトを隣に並べます。
そして破壊された煉獄号の効果で、ユリカにかけられたPOW+10000の補正が倍になります。これにより……
ユリカの総戦力…………POW16000+10000×2+9000
=45000!!
となり、オーバーキルが成立するのです。
ちなみに実用性には乏しいので悪しからず。そもそもタンジェントを倒すにしたってやりすぎなので。
「ーーーーて、ゆーか!! あんまりですって!! ワタシの扱い!!!」
「何言ってんだ、しょうがねーだろカードゲームなんだから破壊されることもあるだろ」
「にしたってぇ!」
戦いの後、硝煙臭い戦場では、ちょっと涙目のチエカの抗議が続いていた。
「労りの言葉ナシって酷くありません!? しかもバンザイアタックって! これでも協力関係のはずなんですけどねっ!」
「だってホラ…………なんかどう足掻いても無敵なヤツっぽいしオマエ? なんかだんだんありがたみってやつが……なぁ?」
「なあ、じゃありませんってば! 当たり前だと思うな破壊耐性!!」
うわぁーん!! と駄々っ子のように転がるチエカだったが、厳密にはここまで引率したチエカとさっき召喚したチエカは別個体であり、結果二人に分身してるというイレギュラーが起きているのに二人とも普通の人の反応をする…………というかなりシュールな光景が出来上がっていた。
(……まあ、自分が一時的にでも爆散する場面をS席で見せられるってのも辛いんだろうが……なぁ?)
と、いまいち説得力の無い抗議(と、それをニヤニヤしながら眺めてる或葉)から少し離れた所で、ユリカが拷問を行っていた。
少し隠れた所に潜んでいた、四体目のタンジェントだ。
「さーて聞きたいことはわかってるわね?あんたらのご主人様はどこ?」
『ムガガ……デキマセンユリカサマ……ゴシュジンサマニサカラウナンテ……ムギャ!!』
「るっさい生後数時間児!! あんまり駄々こねてるとお仲間みたいにヒールで踏み抜くわよっ!!」
『ヒイイ、オタスケェ!!!!』
思いっきり悪役の絵面だが、まあ千里自身もこないだ狐ジジイをひたすら拷問にかけたばかりなので強くは言えない。
さーてここからどうするかなと思案していると。
「ーーーーその辺にしてやれ、ユリカ」
不意に、上空から声が響いた。
「!!」
ビルの屋上からの襲撃。
奇襲を咄嗟の回避でかわすも、表情は優れないユリカ。
理由は敵対者にある。
白衣の少年を睨み女王様は唸る。
「ちょっと……なぁにやってくれちゃってんのかなぁ? ……ねぇ、アルジ君?」
「別に。俺は俺の仕事を成すだけだ」
「……………」
千里もそちらを見やった。
《科学の担い手アルジ》。
このゲームの最高幹部・Ai‐tubrの一人にして、かつてはユリカと共に共通のマスター……鳥文良襖に仕えていた仲間同士。
そしてその正体は。
「へー。随分な物言いじゃねーの、傍楽」
「あまり。その名前で呼ぶなよ、千里。割れたら困る」
風間傍楽。千里や或葉の同級生だ。
一理ある、と思い。一つ息を吐いてから訊き直す。
「そーさな…………んじゃー細かいこと置いといてこれだけ聞くわ。…………オマエ何考えてんの?」
「…………」
そう、冷静に考えて彼の行動は上記を逸していた。
順当に行けば、彼にとって直接の敵は良襖を引き裂き拘束したタギーなのだ。
だからこそ、この場面では千里達と協力してタギーを討つのが必然と言える。
自分の敵に仕える少年の気が知れない。
しばらく黙っていた傍楽=アルジだが、やがて。
「……考えてるよ。色々とさ」
「だったら……」
「だから駄目だってわかったんだよ」
チクリ、と言葉が場を縫い止める。
「洗脳も、金も、人質さえもいらない。……関係だ。くそったれな人間関係だけが俺をタギーに縫い止めているんだよ」
「…………? 何言ってんだ? わかるように言えよ、オイ……!?」
「今ので理解できなきゃ、オマエこそ考えてない証拠だ」
と、苛立ち一つアルジが地面を小突く。
振動。
「「「…………!?」」」
一同に動揺が走る。
「うちの大将を取りに来たんだろうが……そう簡単にはやらせない。
一番の撃墜対象はオマエだよ千里。俺がこの場でオマエを潰す」
つまらなさそうな言葉と共に異変が起こる。
アスファルトが分離し、千里のヶ所だけがせり上がる。
「ッ…………!?」
「千里ッ!!」
仲間達と引き離され、千里はビルの森の上まで連行される。
ガコンと音と共に転がされた先。
待ち受けるのは、白雲が散る大晴天だ。
そして、千里が降り立つ硝子の道は。
「……サーキット、か……!!」
「ああ。ここでオマエをぶっ潰すのさ。そして……」
ブォン!! と風切り音が響き、群れなす巨大ドローンが下に降りていく。
逆にアルジは、うち一機に乗って上昇していた。
「オマエの仲間達も潰す。ここで、ぽっきり心を折っておけってさ」
「…………!! なんでだ。なんでお前は……」
「考えろよ。カードゲーマーだろう俺たちは!!」
冷めた目で睨む。
今まで、千里が見てきた風間傍楽からは全く予想がつかない有様だった。
両者は睨み合う。
「…………おめーのことはよ。妙に心配性だけど、その分頼りになる、身内を大切にするやつだって思ってたんだけどな」
「その認識なら改める事だな。俺は自分勝手だ。だからこそ……」
バキゴガキギゴン!! と鋼の塊が組み上がって行く。
装甲車をバイク台に縮めたような、重厚感ある機体が顕現する。
「『奴』と俺は手を組んだ。さぁ勝負だ千里。生憎とかけるチップは無いが、俺を撃墜しない限りタギー社の電脳支店には辿りつけないと思え」
「傍…………アルジ」
ーーーードゴォッ!! ズガガガガガ…………
と、下から騒音が上がる。
「或葉……みんな……!!」
「気になるか? 向かえに行きたいなら、とっとと俺をかたさないとな?」
「テメェ……!」
荒ぶる心を抑え、どうありたいのか認識を改める。
目の前の相手はひとまず敵と認識する。細かい所の話は戦いが終わってから詰めればいい。
すう……と息を吸い、ゆっくり吐く。
「フーーーー…………わーったよ。勝負しよーぜ」
バキキキキ…………と千里のもとにもマシンが組み上がる。
スタンダードなバイクにまたがり、千里は素直な心情を吐く。
「……生憎と、俺のオツムじゃ事情は測り兼ねる。わかった事は俺とオマエが相容れないってことくらい……」
決戦の信号機が降りていく。
カウントダウンが静かに始まる。
「だからよ。終わった時、それでも俺がなんも分からないどマヌケだったら……ちゃんと教えてくれよな」
「………いや、お前なら……きっと終わる頃にはわかってるさ」
「…………?」
真意は未だつかめず。
ただ戦いの幕が上がる。
信号機のカウントが迫る。
鼓動が早まる。
血液が沸騰する。
声がかけられる。
「ーーーーさあ行くぞ。電子の合言葉を叫べ!!」
そして。
「疾走に情熱を」
「Passionーforーsprinting!!」
信号が青に変わる。
両者共に走り出す。
疾走は始まった。
情熱を乗せて。
千里残り走行距離…………20
アルジ残り走行距離……20




