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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode6 絡めとる状況。千里vsユリカ!!
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無限の世界へ。夜の神降臨!!

「あたしの目的……? そうね……」


電子のテラス。


そこで向きあう鳥文良襖がわざとらしく、宙に目をやる。


「楽しいゲームを創ること。そしてそれを皆に楽しんで貰うこと、かな?」


「だろうな。そう答えるよーな気はしてたよ」


予想通りの答えに、千里は思うまま返した。


「確かに、お前の熱意は本物だ。読みこんだぜクソ鳥コラム。カード一枚の為だけにああもビッシリ書き込む情熱には敬意ってヤツを払わなくッちゃな。

お前は間違いなく生粋のゲームメイカーだ。それだけなら立派だと思うよ」


千里は素直に讃えた。彼女の想いはゲームを楽しんでいる彼はよーっくわかっている。


だが。


「問題は、お前の本音はそれだけじゃないって事だ」


それでも、語るべき事は語る。


「お前は本来、影さえ見せちゃいけなかった筈だ。なんせ俺たちは小学五年生。ゲームの運営なんぞやってるとバレたら一発でシャバからBANだ」


乾いた声が吐き出される。


君主の立場を得るなど問題外。こんなことが表に出たら、このゲームに関わるすべてが終わりを迎える事だろう。


なのに。


「だってのに、お前はよりにもよって初日から暴れまわった。詩葉から話は聞けたよ。普通にやったら出すのしんどいギア5をのっけから使い回したって?」


「ええ。せっかくの自信作だもの。試さなきゃ損じゃない」


「やり過ぎだっての。お前のオツムはてめーで書いた小説ン中で無双する作者みてーなもんだぜ」


「かもね」


辛辣な言葉。


それでも浴びせなければならない。そうしないと、この世界は薄氷のように呆気なく砕けてしまう。


「……それが趣味ならいい。物語として評価されていてもいい。……だけどよ。お前の世界は独占するには広すぎる。

この世界には単なるキャラクターじゃない、血の通ったユーザーがごまんと居るんだ」


自分たちは確かにここにいる。


それを否定するようなことをされてなるものか。


「その面倒を看るってをよ。たかだか小5のガキの身分でやるってよー、どう考えても無理があるって思うのよ。

……ユーザーを思うならだ。後の事をタギーに任せた方がまだマシなんじゃねーかって思うくらいによ」


「わかってないわね」


テラステーブルの上。ずいっと迫り、上目遣いで千里を見上げる。


アバターの向こうから、精神より滲み出る色気を感じた。


「…………ッ!!」


「こんなこと、誰にできる? この先を誰かに任せて、続きなんて繋げられる?

誰にもできない。適役なんて居るわけがない。だってここは私の世界。

私より優れた人はたくさん居るけど……この世界だけは誰にも続きを描けない」


君臨する悦楽。


酔狂なる言の葉。


それを聞いて、千里は。


「それじゃ、駄目だろ」


きっぱりと、真正面から否定した。


「良いコンテンツってのは、どれだけ横に広がっても平気なコンテンツの事なんじゃないか?」


「ばーか。話の担当変わった結果生ゴミの記録更新した名作の続編の話する?」


「確かにあり得る。だがお前はそうしなくっちゃいけない。

じゃないとこの世界はお前と心中しちまうよ。そんなの誰も望んでいない」


「ううん。この世界は私の手を離れたとたんに死を迎える。

……だからこの世界は手放さない。この世界の舵は私のものよ」


話は平行線。


千里は頭に手をやる。


このまま話していてもキリが無いと判断した。


だから。


「だったら。二つ目の質問をぶつけてやる。……お前の『イチバン』ってなんだよ?」


「あら。てっきり『御旗チエカの正体』について訊かれるものかと思ったけれど?」


「お前から目を反らすのは失礼だろ。それに……どうせ答えないだろ?」


「せーかい」


ふんと笑い、居ずまいを正す。


そうして、一拍、二拍開けて。


彼女は正直に答えた。




「ーーーー私のイチバンは『世界を創り、その頂点に君臨する』コト。

自分の城は自分で築き上げる。そういう思いでこの世界を造り上げた」




宣言を聞きとげて。


「…………」


千里は黙らざるを得なかった。


すでに幾万人ものユーザーがしのぎを削るスタンピードの世界。


誰もが最強を目指し、少なからず夢を描き戦い続ける。


その世界の頂点が、とある一人の少女であると決まりきっている……?


「…………違うよ。違うわな。自分の場所を自分で創るって志は立派だよ。

でもさ……それを『今』『ここで』やっちゃ駄目だろ」


「そうかしら。この『波』がいつまでも続くと思う?

才能なんて枯れるもの。時間は有限よ? できることはすぐにやらなくっちゃあね?」


「んーや駄目だ。お前の本音は今聞いた。お前はユーザーと自分を天秤にかけたとき、ほんのちょっぴり自分を重く扱ってちまう。それじゃ駄目なんだよ」


千里は告げる。


ゲームを愛する一人のユーザーとして、頂点の少女に突きつける。


「夢を騙るならよ……最後まで夢を見させてくれよ。『俺たち』はそれを目当てに来てるんだ。

お前のマイナスを慰めるために、現実からはるばるやって来てるんじゃない。それを、お前は無視してるんだよ」


「…………」


沈黙。


幼女魔王の思考が空転する。


そして。


「…………確かに、私のやっていることは誉められた事じゃあない」


「なら……ならよ」


「それでも」


すっと立ち上がる。


吹っ切れたような危うい笑顔を浮かべる。


「世界を回すのはロクデナシよ。そしてロクデナシ同士の潰しあいから溢れた者が『犯罪者』になる。

なら、私は勝つわ。勝って勝って勝ちまくる。どんな手を使ってでもね

それを以てこの世界を率いるわ。この世界は私が造り上げたんだもの。誰かに渡してなるもんですか」


「…………そっか」


答えは得た。


やさしいやさしい少年が、結論を語る。




「やっぱり、お前は俺の『敵』だよ」


「へぇ?」




問答は終わった。


双方がそう判断した。


ともに電子の紅茶を飲み干す。


その後を千里は予想していた。


「…………なら、私に勝たなくっちゃね?」




そして、電子の爆裂が起きた。




「!? なんだなんだ何があった!?」


「バカ、ただのアクティブアピールだろ!? ちょっと強烈なフリーお願いしますだよ!」


「でも、何か様子違わない…………!?」


土煙の中、野次馬が集まる。


赤毛のアバターは倒れたまま動かない。


いや。


(いつかのモヒカンと同じ……ログインしたまま落ちやがったな!?)


最早このアバターは脱け殻だ。怪しまれないよう時間差で消えるのだろう。


彼女のアバターは別に来る。


話に聞いた黒兎。


暗色のバニーガールが。


辺りを見回して、異常に気が付いた。


「暗い…………夜?」


ゲーム内の時間は現実と同期している筈だ。それが真っ暗になってしまっている。


権能を振り回す暴挙。


その元凶を探す。


そして、夜桜色の空の一角に。


神が居た。




「なになに、なんかのイベント!?」


「予告はなかったぞ……どういうサプライズだ!?」


「おい、あれ見ろ!」


野次馬が、騒ぎの中光点を見付ける。


錆銀と漆黒。二羽の兎が踊り舞う。


幼き肢体をくるむように飾る。


茶の長髪はツインテールに纏められ、尚も溢れる奔流が流れる。


小さな体躯が、二柱の兎を糧に膨れ上がる。


その数多の兎をあしらい統べる黒兎。その偉容はまさしく魔王。


唯一絶対たる夜の神。


「…………皆様、ごきげんよう」


鳥文良襖。


ヤガミヒフミ。


さまざまな名を語った末に、最後に語る名は。







「ーーーー私は、夜ノ神」



挿絵(By みてみん)





そう名乗った彼女は、己の世界の住人に語りかける。


「このゲーム…………カードレース・スタンピードのゲームデザイナーとして。

今日はあなたたちに、ちょっとしたサプライズを仕掛けようと思い立ったの」


くすくすと。


妖しく笑う少女は、果たしてどこを見据えているのか。


それは誰にもわからない。


だが、動揺しない者が一人居た。


「その前によー、ひとついいか?」


先駆千里。


ありふれたアバターを着込む、銀髪の少年。


幼女魔王はくすくすと笑い、見下ろし答える。


「ふふっ。なーに?」


「俺とレースしろよ」


「…………ん?」


魔王は首を捻った。


「どうして? ()()()()()()()()何を言い出すの?」


「その言葉はそっくりそのまま返してやるよ」


千里は辺りを見回す。


ユーザーたちは、突然の事態についていけてない様子だ。


「見ろよ。()()()()()()()()()()()()()()()()、回りドン引きだぜ。

なにをする気かは知らないが、まずはてめーの力を示して納得させるのが先決なんじゃあ無いのか?」


「……へぇ? 悪くないかも、しれないわ」


周囲に動揺が走る。


なにか、とんでもないことが起こっている……それくらいしか理解できていない事だろう。


それでも事態は先へとすすむ。


「いいでしょう。ついてきなさい。いい舞台があるわ」


そうして、夜ノ神は案内を始める。


野次馬も色めき立つ。


「な……なんかヤバイバトルが始まるぞ!」


「サーキット急げ! 観客席なんてすぐに埋まる!」


「ちょ、ちょっと待って!!」


そうして人は容易く先導される。


彼女は、それを楽しんでいるというのか。


「…………負けるかよ」


呟きひとつ、バイクに跨がり夜ノ神の後を追う。


決戦は間もなくだ。


これより始まる戦い、気圧される訳には行かない。

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