激戦決着。千里vsユリカ後編!
ユリカ残り走行距離……15→55
剛鬼の狩り手ルイズの効果で走行距離を増やされる。
実はユリカも結構ギリギリだった。
強い事しか書いていないキルハルピュイアだが、実際はサポート周りがキルハルピュイアのトンデモ具合前提で調整してあるためになかなかバランスが崩れない。
素引きしても単体では、その半端なステータスのおかげで同格のギア2にも敵わない。
敵に回すと厄介だが、味方にすると妙にテンポを悪くする怪鳥。
クソ鳥と蔑される所以はこのあたりにあった。
正直、本当にエグいのは《咎人の樹》とつるんだ場合のアドバンテージしかもたらさない流れくらいな気もするが。
(ま、初手で引けなかったからね。圧倒する流れも見せかけがせいぜいか)
ユリカは自嘲するが、活かす手はある。
命綱無しにバンジーするほど愚かではない。
引きが悪かったら良いカードを引くまで特攻させれば良いし、利用しやすいグリップも落としてあった。
まだ負けない。
そう簡単に負けるものか。
ヘル・ディメンションの女王は、心中静かな決意を固めていた。
青の巨人。
白の銃撃手。
そして金色の看板娘。
舵取りの象徴、Ai−tubaの分霊達が並び立つ。
他は『中身』が不在のためにダンマリだが。
チエカは例外過ぎた。。
「いっやはや! 久しぶりにカードとして会えたと思ったらいきなり魔弾のエサにされるわ相手が同僚だわな件について!!」
「あいっ変わらずマイペースだよオマエ」
電子の姫君は偉大なる敵だが、今だけは頼もしい味方だ。
千里が冷や汗を浮かべる中、観客席の詩葉は驚愕の表情を浮かべる。
(……ステアリングの枠を全てデミ・ゲストカードで固めただと……
あんな重すぎるはずのデッキを見事に回してみせるのか!?)
驚愕を他所に、千里が動き出す。
「まあいーさ……行くぜ! チエカで走行!!」
しかし返す手は打たれる。
「まだよ。まだまだ! 手札から《ツイバミグリップ》を発動!!
ルイズの眼前。ユリカの外套がが弾け飛ぶ。
やはり彼女は、なんのためらいもなく自分をくべた。
怪鳥が溢れる。
《ツイバミグリップ》✝
ギア1 ヘル・ディメンション/チューン
◆『使用コスト・自分マシン一枚を破壊』
コストカードのギア−1の枚数分、山札または捨て札から《キルハルピュイア》を呼び出す。
ユリカのギアは4。
三体のハルピュイアが道を阻む。
「二枚使って三枚ドロー、でもって三回の行動妨害か! ヒデェな!!」
超えなければならない。
「チエカでハルピュイアを攻撃! 二回行動で二体目にも攻撃!」
「はっはっは! おねーさん頑張っちゃいますよ!」
チエカがバイクから飛び立つ。
怪鳥の一羽めがけて右脚を掲げる。
蹴り穿つ。
「ちぇすとおおおおお!!」
派手なエフェクトと共にハルピュイアが爆発四散する。
その背後にもう一羽のハルピュイアが迫るが。
「なんの!」
宙返り。
爆風を背に蹴り抜く。
再びの爆発。
面白く思わないのはユリカだ。
「チ………二体のハルピュイアが破壊されたため二枚ドロー!!」
引き入れる。
まだ目的のカードは引けてはいない。
「これでチエカは攻撃終了。だけどマアラの効果は自分マシン一枚を破壊する事ができる!」
「またです?」
「またですゥ! また効果で復活してもらうぜチエカ!」
マアラの魔弾が穿つ。
チエカが一旦破壊され、再び復活する。
破壊を経た事でチエカの攻撃権は復活していた。
これでまた動ける。
「さあ行くぜ! チエカで最後のハルピュイアを攻撃!」
「はいなー!!」
復活したバイクに跨りながら、最後のハルピュイアめがけて突進する。
WIN チエカATK14000vs5000DEFハルピュイア lose
激突と共に撃破する。
「……ふぃー! ひさびさにいい仕事しちゃいました!」
とびっきりの笑顔で電子の汗を拭うチエカ。
これでもう行く手を阻むものは無い。
そしてチエカは完全に行動を終えていた。
「サンキューな。ありがとよ」
「おやおやつれませんね?」
「そりゃあ、場所が場所だからな?」
ここはユリカを楽しませる《試練》。
余計な野次はノーセンキューだ。
「ですよねー♪ ではではご武運を!」
ぱっと光と弾けるように消えてしまうチエカ。
どうせどこかから見ている。
それでも見据えるのは彼女一人。
「……さーって、これで噂のクソ鳥とやらは全滅! デットヒートをルイズで止めながら走ればチェックメイトだぜ?」
チエカが残したバイクにまたがる。
走り出す。
しかし彼方から声は響く。
「ーーーーあいにくと。最後のドローは恵まれたのよ!」
千里を駆けるレジェンドレアの輝き。
ユリカの『必殺技』が来る。
「受けなさい。《絶影! スナイプ・シュリーカー!!》」
号令と共に、紅蓮のオーラが吹き出す。
《絶影! スナイプ・シュリーカー!!》✝
ギア1 ステアリング/チューン
◆『使用コスト・センターと同じギアを持つマシンを捨て札から呼び出す。その後、相手マシン一枚を選択して攻撃を行う。この処理が終わるまで対象のPOWは+3000され、他のカードの効果を受けない。
「ーーーー幾度となく倒れ伏せど、その血は世を回すためにこそ有り。
絶望を騙れ。悪夢を謳え。笑いを掲げ常世の地獄を突き進め!」
蘇る。
ヘル・ディメンションの女王が復活する。
「穿ち戻れ! 《極上の乗り手ユリカ》ッッッッ!!」
《極上の乗り手ユリカ》✝
ギア4 ヘル・ディメンション/マシン
POW16000 DEF9000 POW20
◆《デミ・ゲストカード》
◆『自分のセンターがギア4である』このマシンをセンターに重ねる事ができる。
◆『バトル開始時/センター一枚を横に』バトル終了まで対象のステータスを追加で得る。
◆《デットヒート20》(相手の場に《進路妨害》が存在せず、相手が『走行』するたび、自分の残り走行距離を20減らす。《デットヒート》は最も高い数値のみを適用する)
「さあ行くわよ!! スナイプ・シュリーカーの効果でバトルを行う! 攻撃対象はルイズ!」
ルイズの防御力二万に対し、ユリカは必殺技の効果込みでも一万九千。
だが。
「あたしの効果! センターの札一枚を疲労させる事でステータスを増加させる!」
センターの下には、唯一行動していないラッシュシードがある。
パワーが加わる。
WIN ユリカPOW22000vs20000DEFルイズ lose
大巨人が崩れ落ちる。
「やっべ……ルイズが攻撃権を抱えて落ちた!?」
「そう簡単に負けないっての! さて……これで貴方が動かせる手駒は手札ニ枚とマアラの魔弾一発のみ。
あなたの残り走行距離は60。残りここからどうしてくれるのかしらね?」
「くっそ……」
マアラの魔弾には『残り走行距離を30減らす』ものもある。
だが『二枚ドローする』魔弾もある。逆転の手を引けるかもしれない。
今活躍するのはこの二者択一。
未だ僅か先を行く女王にどちらを突きつけるか。
「俺は、マアラの魔弾で……」
そして。
選択する……………………。
選んだのは未来。
二枚のドローを引き入れる。
マアラが溶けるように消える。
ここからは正真正銘の一対一。
「選んだわね?」
「ああ。未来を掴む手をな」
これで手札は四枚。
この四枚でユリカに勝つ。
そして。
「行くぜユリカ!」
疾走は始まる。
千里の疾走にユリカのデッドヒートが対応する。
最後の走行だ。
ユリカ残り走行距離……55
千里残り走行距離……60
「俺は《ブラック・グリズリー》を呼び出して走行!」
《ブラック・グリズリー》✝
ギア4 スカーレット・ローズ
POW16000 DEF10000 RUN20
「だったら。あたしの《デッドヒート20》であなたより先に20走行!!」
千里残り走行距離……60→40
ユリカ残り走行距離……55→35
千里が走る。
しかし追いつけない。
「更に手札から《赤塗りのパトライド》を呼び出す! その効果でグリズリーは再走だ!!」
「当然! あたしも走行!!」
《赤塗りのパトライド》✝
ギア1 スカーレット・ローズ/マシン
POW2000 DEF2000 RUN5
《このマシンをセンターの下へ》センターの走行を5上げて回復する。
千里残り走行距離……40→15
チエカ残り走行距離……35→15
いよいよ以って両者は並ぶ。
黒の荒野をかける二人。
だが。
「頑張ったけど……これ以上は走れない。デットヒート20は『相手の走行の前に20キロ走る』能力。次走ったらあたしの勝ちよ!」
つまりは詰み。
その宣告。
だが、千里の瞳は曇らない。
「いいや、次が本当の最後だ…………」
千里は最後の行動に出る。
「手札から……起動しやがれ! 《クライマックス・ラン》!!」
「へぇ……」
《クライマックス・ラン》✝
ギア4 スカーレット・ローズ/チューン
◆『スクラップのギア3マシン一枚を選択』選択したマシン一枚をセンターに重ねて置く。その後、敷き札のギア1を可能な限り場に出し、このカードをセンターの下に重ねて置く。
「俺は……《ミスター・トレーラー》を選択。その効果で、ギア1一枚を呼び寄せる……」
「!? 何を呼んでも走れない! いいえトレーラーのコストは払いようが無い!」
「いいや払えるね! 俺がコストに使うのはトレーラー自身とパトライドだ!」
「!?」
攻め手を閉ざす行動。
そうして呼ぶのは。
「……そっか…………」
ユリカは理解した。
自分を打ち破る術は揃えたか。
噛み締めるように千里が突きつける。
「俺が呼び寄せるのは! 進路妨害持ちの《ストーン・エスカルゴ》だッッ!!」
ユリカを迎え撃つようにエスカルゴは降り立つ。
進路を妨害されたデットヒートは使えない。
しかも。
「更に! クライマックスランの効果で這い出たパトライドを再びセンターに重ねる! コレでコストで疲労させたトレーラーは復活する!」
ユリカが見届ける。
宣言は放たれる。
「ーーーーウイニングラン!! ミスター・トレーラーでゴールだァ!!!」
千里残り走行距離……15→0=GOAL!!
勝利。
地獄の女王に、真正面から打ち勝った瞬間であった。




