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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
Episode.5 試練乗り越えた決戦!! 千里vsルイズ!!
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三陣激突。不可能ミッション開始!

「地球が終わるまで行ったり来たり、なぁ?」


「メンドーな出題してくれるわよ、ホント」


学び舎。


クラスの一角。


結局当日中に謎解きに移れなかった彼らは、学校にて解読の続きをやっていた。


顔を付き合わせるのはいつもの四人。


銀髪紅顔の少年、先駆千里。


赤毛尖眼の幼女君主、鳥文良襖。


目隠れの地味な少年、風間傍楽。


女子力がついてきた少女、丁場或葉。


小学生が顔を突き合わせてゲームについて語らう。


言葉にすればそれだけだが、その熱量はケタ違いのものがあった。


理由はもちろんおわかりだろう。


「……良い? あっちはあくまでも『ゲーム』としてこの無茶苦茶を繰り出して来た。

だったらあたし達の勝利は『真正面からクリアすること』。決して油便を投げたりぶん殴ったりする事じゃなくってね!!」


「おうっ!! あの意味不明な出題をしてきた運営の鼻をあかしてやろーぜ!!」


(ついていけねーよこのノリ…………)


傍楽は頭を抱えるが、止まらないものは仕方がない。


先日届いた挑戦状。


そこには『指定の時間帯に提出する事』『指定日の当日に答えを録画すること』『プレイヤーのフレンド二名以上が随伴』など厄介なルールが刻まれていた。


指定日が今日だ。


「見事にバイクしか持ってない詩葉が閉め出されたな……さすがに三人載せんのは無理だろーし」


「元より姉上は仕事がつまっておる故。終わらせるまではカンヅメにござろう」


停滞の中、良襖が語り出す。


「ふむ……男女の✕✕✕も行ったり来たりと言えなくもないけど」


「唐突な下ネタやめろよ!?」


「それは人類が滅ぶまでにござろう?」


「それね」


「お前もフツーに返事すんなよ或葉!?」


「? 恋愛の距離感の話題に返事すると危険があると?」


「あーらなに想像しちゃった?」


「、俺の耳があれなのか!?」


千里が汗を浮かべる中、埒があかないと睨む声が。


「……ストレートに、星……なんじゃないか?」


傍楽だ。


常識的な意見は彼の特色の一つだ。


「例えば彗星。あの妙な軌道は『行ったり来たり』のうちに入らないか?」


「ちょっと違うかなー。アレは『星が終わっても』行ったり来たりするでしょうし」


「なら月はどうよ? もし地球が無くなれば確実にどっか行くぞ」


「距離変わらないからねぇ…………月の満ち欠けにしてもちょっとピンと来ないかな」


候補を潰す作業。


迷路の袋小路を潰していくように、答えをあぶり出していく。


うーむと頭を捻る面々。


と、ここで千里が切り込む。


「ひょっとして……もう見当が付いてるんじゃないか?」


一同がざわつく。


「お前の頭が良いのはみんな知ってる。だが確証が無いから他の奴の意見を聞きたかった……んじゃないのか?」


「そうね……いろいろ浮かんだけど、信頼度が高いのはひとつあるわ」


注目が集まる。


その目はまっすぐ見据えていた。


「人類が決して止められず、それが止まる事自体が星の終わりを意味する。

一度は『星が凍る』事で止まったかもだけど……それだってひとつの終末よね?」


「凍る事で終わる…………まさか」


「知ってんのか傍楽」


「ああ。スノーボールアース……惑星そのものが凍る根絶やしの終末。そしてそうしてでも止まったかも怪しい『行ったり来たり』」


「ビンゴ」


答えは示された。


「そのうねりの根本は海。そして『行ったり来たり』するものは」


提示すべき対象は。


「ーーーー波!!」


「そ。つまりは波打つ景色を撮影してこいって言ってるのよ」


目的地は決まった。


「なんだよだったらもう勝ったも同然じゃんよ!」


「待った。まだ問題はあるわ」


良襖の表情は優れない。


むしろここからが本番だ。


「『海に行く』……言うのは簡単だけどどうやって? ここは港町ってほどでもない。ましてあたしら小坊よ? 使える手は。限りがあるんじゃない?」


「あ…………」


「地図が要るな?」




ド   ス   ン   !!




「ここにある」


「……なによ傍楽、その荷物」


「なんか派手に出かける予感がしたから」


「いや馬鹿でしょ」


「キャリーバッグ級の荷物背負って来たのかよ!? 置いてけ置いてけ!!」


「えぇ!?」


無駄すぎる荷物をかき分け地図を取り出す。


ビビリの傍楽は最上級の準備を持ってきていた。


「ここから、海までの距離は……………!」


驚愕する。


現実を知る。


「…………なんて、こった。普段、一気に何十キロもトバしてたのが、どんだけやべーか身に染みるぜ……………!!」


地図を見て思い知る。


自分がどれほど狭い世界で生きてきたか。


「15キロ……直線距離でたった15キロの距離がアホ程遠い!!」


「15キロ……ギア3の走力にござるか。普段どれだけ飛ばしていた事か……」


「ぶっ飛んだ難易度よね。それでもアホ運営に負けてなるもんですか」


頭をつきあわせる面々。


「このコースを突っ切るわけだけど。その前にやることがあるわ」


「まだあんの?」


問題は山ほど湧く。


現実は彼らを容赦なく追い詰める。


「ええ。この冒険を始めるには……面倒なオトナ三銃士を乗り越えないとだからよ!」


「邪魔なオトナ三銃士??」




バン!!




「遠方から来た監視カメラ。誌面を埋める為なら手段を問わないジャーナリスト骨川瞳!!」


『報道の自由!!』



ババン!!



「辞めているのにボランティアで来る90才。捕まったら晩までかかる影島名誉会長!!」


『わしの話は長い!!』



ズバババンッッ!!



「今日に限ってお休みの社畜。ラスボス・企業戦士鳥文華天!!」


「最後お前の母親じゃねーか!!」


「彼らをなんとかしない限り、あたし達に放課後の自由は無い。全力で乗り越えるわよ!!!」


鳥文良襖が吠え猛る。


無用の手出しをした『支援者』への怒りに燃えていた。


「で、だ。どこから手をつける?」


「そうね…………せっかくの『準備』を無駄にするのも癪だし」


ちらりと荷物の塊を見やり。


「あたしの指示通りに仕事できる?」


「おーよ」




ドッチャンコン! ドッチャンコン! ガタガタグッチャンズッッコンバッコン!!




「俺の準備を勝手に使うな!?」


「ほ……ほれ、自分の準備が十全に活躍して良かったと考えるにござる?」


「それはいいんだけどさぁ! テントが、竿竹が、ゴムボートがああ!!」


それは学校の一角での出来事。


せっかくの準備を妙な事に使われてしまった傍楽が嘆く。


良襖の指示に従い壁に張り付く千里が返す。


「ええい騒ぐなっての。……よーし完成、後はこれをどうやって伝えるかだが……」


「ああそれなら心配ござらん。それとなく伝えておいた故」


「へ?」


或葉の言葉に気がぬける。


言葉は良襖が引き継ぐ。


「いい仕事するのよ? その子も」






「ほんとにコウモリみたいなオバケが?」


「そうだぜ瞳さん! あっちにヤベーのがある!!」


「はーん。どの筋からの情報か知りませんがぱぱっと撮ってぱぱっと戻…………」


若き女ジャーナリスト、骨川瞳はつぶやいていたが。


「……………って?」


直後に言葉を失う。






「なー」


「なんにござる?」


廊下を静かに駆けながら、或葉に問う。


「思ったんだけど。お前なんでここまで協力してくれんの? チエカ大好きなのに」


「ああ、それにござるか」


なんの気もなく答える。


「簡単にござる。あの喫茶店の店主どのの言葉を借りるなら」





バアアアアアアアアアン!!


「何このすっごいかかしみたいなの!? 翼とかヤバイ迫力ぱない!! 撮る撮る!!」


「急に出てきたんだ! なにこれオバケかな!?」


「かもねー? じゃあこのかかしについてイロイロ訊かせてくれる?」


「ああ、なんか『クラスの中で急に広まった話題』なんだけど……」



「ーーーー拙者のイチバンは『楽しんでもらうこと』。笑顔が溢れていればいるほど拙者も嬉しい故」


「……ほんとに、良い奴だよオマエ」


「…………あう」


「はいそこ尊みパンチで倒れない。次は名誉会長の攻略よ!!」


四人が駆ける。


それぞれの思想をもとに、同じ目的を掲げて走る。


さっきまでいたジャーナリストはもう来ない。


昇降口から校門へ。


見据えるは、出待ちを仕掛ける髭のお爺様。


袴衣装、時代錯誤の相手が立ちふさがる。


「さあ覚悟を決めるのよ! 捕まったら晩までかかるわ。

枯れ果てても元教育者。さっき見たくチョロくは無いと知りなさい!!」


「「「おうっっ!!!」」」


君主の才の本領。


鳥文良襖。その姿は威風堂々と世に轟いていた。

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