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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode 10 色彩なき覚悟。千里vs???
137/190

天衣無縫の再戦・千里vsマアラ後編A!!

砕くべきは黒々と佇む正方形。


鋼鉄のコンテナを思わせる巨壁を打ち破らんと千里が挑む。


「俺は 《アクティブ・ピットマン》を呼び出す!! その効果で場のカードを任意の枚数疲労させる!!」


ガゴンと逆転の起点を呼び起こす。


奇抜な人面レッカー車のお通りだ。




《アクティブ・ピットマン》✝

ギア3マシン スカーレットローズ POW10000 DEF5000

◆【場札を任意の枚数疲労】山札からスカーレットローズのマシンを二台、ギアの合計がコスト枚数以下になるように呼び出す。ただしそのマシンの【】で囲われていない効果は無効になる。




「俺が疲労させるのはリサイクルブーストと、その効果でアシスト化した三枚のカード!! これで合計ギア4……つまり二枚のギア2 《ダーク・キリギリス》を呼び出す!!」


「ハッ!! たかが準バニラをいくら並べたところでどうなると!」


侮蔑が飛ぶ。それはそうだろう。このゲームで重要なのは個性的な効果の数々で、基本的には無能力(バニラ)に毛が生えたようなカードの価値は乏しいのだから。


しかし千里は答えを得ていた。


「スタンピード・カードMiki」


「は?」


「このゲームのまとめサイト……最近、やっと内容を理解できるよーになったんだ。今からその成果を見せてやる!! 俺は手札から 《巨影狩りの宝刀》を発動!!」


「ッ!?」


おののきが漏れる。


あるいは彼にとっても思い入れの深いカードだったのか。


千里の手に、重く鈍く漲る鋼が現れる。




《ダーク・キリギリス》✝

ギア2マシン スカーレットローズ POW4000 DEF2000

【二回行動】




《巨影狩りの宝刀》✝

ギア3アシスト ステアリング

【装着(このアシストはマシンの下に重ねる)】

【常時】このアシストの上にあるマシンのPOWを+3000する。

【発動時】ターン終了まで、自分の場の全てのマシンのPOWを+4000する。




ぎょっとする。


バフと二回行動の相性の良さは言うまでもないだろう。


「チエカのページに書いてあったんだ。コイツを持つようになったからバトルにめっぽう強くなったってな。

そんでどんな感じだろーなと見てみたら……これだぜ。三台のマシンのパワーを4000アップ、装着したマシンはさらに3000アップ!!」


「しまっ……!?」




ピットマンPOW………10000→17000


キリギリスPOW……………4000→8000


千里総戦力…………8000×2×2+17000=49000!!




「これが、俺の答えだ」締めくくるように吠える。「たとえスゲー切り札がなくたって、小さな力を積み上げていけば道は開ける!」


戦力は整った。


あとはあの壁をギッタギタに引き裂くだけだ。


「覚悟しろよ、この箱野郎! キリギリスでパンドラボックスを攻撃!!」





attack キリギリスPOW8000vs25000→17000HPパンドラ Guard




熱意の刃が鋼を焼き切る。


激突一発で、壁には赤熱する大溝が掘られていた。


そしてもう一発。


「続いてアクティブ・ピットマンでパンドラボックスを攻撃!! これで破壊だああああああああぁぁぁ!!」


マシンとともに千里は壁に突進する。


宝刀を構え、漆黒の壁に刃を向ける。


「喰らえ、ギガブレイク・スラアアアアアアアアアアアッッッシュ!!」




ーーーーーーーーーーGYAGIGYAGIGYAGYAGYAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNNN!!!!





WIN ピットマンPOW17000vs17000→0HPパンドラ LOSE




「がは…………!!」


衝突


重く、深く、バリアの中まで響く一撃。


鍛え上げられた刃が黒壁を砕く。


がらがらと、巨大な障壁が崩れ落ちる光景の中、千里が吠える。


「まだ、終わりじゃないだろ? 来いマアラ!! オマエの全力で、俺にぶつかって来やがれ!!」


「ッハ!! ええ望むところです。僕の全力全開をおみせしましょう!

ーー災禍のパンドラボックスが破壊されたために、先ほどこのカードの効果で下にかさねたカードが露出します!」


崩れ落ちる箱の外殻。


その中に、たしかにマアラの姿があった。


だがその周囲に従えるのは、これまででもっとも歪で分厚い障壁だ。


口上が来る。


来る!!


「ーーーー悪夢宿りし原初の災禍よ、禁忌を破る愚か者に絶望を与えよ!! 闇よ来たれ! 骨が腐るまで喰らい尽くすのだッッッ!!」


紫紺のオーラが溢れ出る。


闇色の絶望が姿を見せる。


さあ惨劇の始まりだ。


「展開せよ! 《絶望ーフィアーリジェクションー》ッ!!」




ーーーーgiiiiiiiiiiiiyaaaaaaaaaaaaaaa!


空間が軋む音が、断末の悲鳴に聞こえた。




《絶望ーフィアーリジェクションー》

ギア5イベント シュガーマウンテン HP40000

【イベントはマシンゾーンに置く。攻撃を受ける度に相手のPOWの分HPを減らし、0になったら破壊する】

【このカードの露出時/ゲーム中一度】自分の捨て札にあるギア2以下のイベントを、【進路妨害】以外の効果を無効にしてこのカードの上に置いてもよい。

【自分のターンごとに一度】山札から、攻守の合計値がこのイベントの現在のHP以下のシュガーマウンテン・マシン一枚を呼び出す。




パンドラの箱からは、ありとあらゆる災いが吹き出すという。


その具象がこの障壁か。


「……四万と来たか。さすがギア5は格が違うぜ」


「それだけじゃありません」絶望は止まらない。「フィアーリジェクションの効果で、捨て札のバブルコートを追加でまといます」


ただでさえ硬いマアラの護りが更に重複する。


ビリリビリリとかかる圧に、しかし千里は怯まない。


まだ攻撃は三回も残っている。


「だったらそいつからぶち破るだけだ。ダークキリギリスでバブルコートを撃破!」




WIN キリギリスPOW8000vs5000→0HPバブル LOSE




泡が弾けて悪夢が再び露出する。


震え上がるほどの脅威に億さず挑む。


「残り二回の攻撃だ!! 最後のキリギリスでフィアーリジェクションを攻撃!」





attack キリギリスPOW8000vs40000→32000HPフィアー guard


attack キリギリスPOW8000vs32000→26000HPフィアー guard




仮にもギア5イベント。連続攻撃にもビクともしない。


「チィ!! さすがに硬いな……」


「当然です。このイベントはかのマリス肝入りの自信作!! そう簡単に破られるわけないでしょう」


「くそ!?」


不穏な情報が聞こえた気がしたが今は気にしない。


やるべき事がまだある。


「……手札から 《当然のマニュアライズ》発動。山札からランダムに三枚のギア1を手札に加える」




《当然のマニュアライズ》✝

ギア3アシスト スカーレットローズ

◆山札からランダムなギア1のカード三枚を手札に加える。




ここに来ての運任せ。


しかし手応えは十二分にあった。


「俺はターンエンド! この時点で4000点のバフは元に戻る!」


「では僕のターン! さあそろそろ決着と行きましょうか!」


マアラの残り走行距離はたったの2。千里に進路妨害のマシンはない。


マシンゾーンは一枚埋まってるが、後一回でも走行を通されたら千里の負けだ。


絵に描いたような窮地。


それでも、千里は。


(負けるかよ)


決して。


決して、熱意を捨てない。

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