51話 バリカン
「自業自得。むしろ軽傷で済んでよかったじゃな~い」
「いや、どう見ても致命傷ですけど」
すがる思いで森谷さんに胸の心中を告白したら、かるーく一蹴。
最近は森谷さんからの風当たりもキツめで、女の子との交友関係はきっかけ一つでこうも変貌してしまうのかと嘆かずにはいられない。
「だけど羽生くんは最初、ず~っと黙ってるつもりだったよね? それでもし私の助言を聞かなかったら、も~っと大変なことになっていたと思うけどな~」
「それは……、はい。その通りです」
事態は最悪の一途だけど、真の最悪は小桜さんがお見舞いに来なくなることだ。
だけどここからの打開策が一切思い付かず、今まで読んできたどの推理小説よりも難易度が高いと言わざるを得ない。
「はぁ、ここから一発逆転の打開策ってないのかな?」
「あるよ~」
「えっ!? ほんとですか!?」
いくら悩んでも答えが出なかったのに、あっさりと解決策を提示。
やっぱりこういう問題は大人の女性に委ねるのが一番だ。
「だけど羽生くん。この方法はちょ~と犠牲を伴うけど、いい?」
「構いません。やっちゃって下さい!」
神妙な顔で尋ねる森谷さんに即答OK。
もう首の皮一枚しか繋がってない以上、多少の犠牲は致し方ない。
この決意に森谷さんが頷いたあと、あるものを構えながら笑顔で答える。
「は~い、じゃあボウズにするね~」
「了解です! 高校球児もビックリなスキンヘッドに……、んん?」
スイッチONでヴィーンと鳴り響くバリカン。
僕の頭上で大伐採が始まろうとした瞬間、慌てて上半身をひるがえしてバリカンを回避する。
「あれれ~? どうして逃げるの?」
「当たり前です! 何してんすか!?」
「美夜ちゃんと仲直りする為に、羽生くんを坊主頭にって」
「なんでだよ! ただでさえ無口な小桜さんが絶句しちゃうよ! もう一生口を聞いて貰えなくなる未来しか見えないんですけど!?」
「でも誠意を示すならこれが一番分かりやすい方法よ~。私の友達も彼氏に浮気されて、もう絶対に許さないって息巻いてたら、まさかの坊主頭になってからの土下座で、つい許しちゃったってエピソードあるから」
「それって前に話したカップルだよね? どんだけ紆余曲折してるんですかそのカップル!」
「そうね~。しかも浮気は彼女の誤解ってオチだったからね~」
「最低だ!! もうその友達は今すぐ彼氏の元に直行して土下座して下さい! 案外上手くいくかもしれませんよ!」
こうして森谷さんの案は却下。
そもそも僕と小桜さんは彼氏彼女な関係じゃないから、坊主になったところで唐突に謎イメチェンをした知人でしかない。
「はぁ、早く仲直りしたい」
「それって美夜ちゃんの為? それとも美羽ちゃんの為?」
そんな心からの嘆きに、意味深な表情で尋ねてくる森谷さん。
そんなの両方に決まっている。
決まっていたはずなのに、建前を無視した気持ちが自然と口からこぼれ落ちる。
「そんなの小桜さんに決まってるじゃないですか」
「ふ~ん、どうして?」
「だって僕は、小桜さんのことが大好きですから」




