40話 寝相の悪い患者
「森谷さん、今朝は隣の部屋が騒がしかったけど、何かあったんですか?」
「それがね~、昨日から入院の患者さんがベッドから落ちちゃってね~」
「ええっ!? 大事件じゃないですか!?」
まさかの事態ではと焦ったが、当の森谷さんは慌てた様子もなく淡々と語り続ける。
「大丈夫よ~。軽い食中毒で明日退院だし、本人も寝相が悪くてごめんなさいって平謝りだったから~」
「あぁ、そういうことですか。だけどベッドから落ちる人って、本当にいるんですね」
「たま~にね~。医療用ベッドは両サイドにガード付いてるんだけど、それでも落ちちゃう人がいるのよね~」
「そういう人って、どうするんですか?」
「そうね~、赤ちゃんベッド並みの鉄壁ガードに補強もできるけど、当の本人は『この程度の防壁で俺を抑えられると思っているのか?』って謎の強気で、じゃあどうします?って聞いたら、『寝る前に縄で縛ってくれませんか?』ってハァハァ言いながらお願いされちゃってね~」
「ただの変態じゃん!!」
本物のナースさんに縄で縛られてからの放置プレイ。
僕には全く理解できない世界だけど、ご褒美になる人もいるらしい。
「あ、もしかして羽生くん、縄プレイに興味ある?」
「ありません! なぜそう思った!?」
「だって羽生くんが~、縛って欲しそうな顔で私を見てたから~」
「見てませんから!」
顔を真っ赤にしながら否定するも、森谷さんはノリノリで茶化しはじめる。
「分かるよ~、羽生くんは思春期だからね~。あ~でも美夜ちゃんに悪いから、どうしてもって言うなら美夜ちゃんにお願いしてね~」
「できるか! あと今日は美羽ちゃんの友達がお見舞いに来るので、そういう冗談は禁止でお願いしますね!」
「はいは~い。じゃあいつも通りの知的で優しいお姉さんって感じにするね~」
「ぶほっ! 森谷さん、今の冗談はかなり面白かっだだだだだだだだだ!」
頬を抓られて台詞が強制中断。
なお患者への縛りプレイは、睡眠中に身動きが取れない状況にするのは危険なのでお断りだそうです。




