21話 夜勤病棟
小桜さんが帰ってから早速ホラー小説を読み始めて、今がクライマックス場面だ。
過去に亡くなったクラスメイトが亡霊となり、次々と死んでいく友達、亡霊が見つかるまで続く厄災、そして遂にその正体をヒロインと一緒に扉の先に追い詰めた所で、
ガチャリ
「うわあーーーーーーーーっ!!」
「ちょっ、しーーーーーーっ!!」
真夜中の病室の扉が開いて人影が現れるのと同時に悲鳴を上げたら、その人影に注意されてしまった。
「なんだ、森谷さんか」
「何だとは失礼ね~。もう真夜中なんだから子供は寝なさ~い」
「え? ってもう深夜3時!? 消灯前から読み始めたのに」
「まさか羽生くん、6時間ぶっ通しで読んでたの?」
「あはははは、そうなりますね」
病院の消灯時間は21時で、その時間から照明が消されるけど、だから必ず寝ろという訳ではない。大部屋でも枕元の小さな照明なら許されていて、静かにして周りの迷惑にならなければ読書もゲームもご自由にって感じになっている。
「今時珍しい文学少年ね~。私は学生時代、小説なんて全然読まなかったわよ~」
「それは勿体無い。よければ僕のお薦め貸しますよ?」
「マンガならありがたく借りるよ~。日中は忙しいけど、夜勤は時間あるからね~」
森谷さんは夕方から早朝までの夜勤シフトがメインで、本人は通常シフトを希望だけど、この小さな病院では20代中盤でも最年少なので、夜勤をやらざるを得ないそうだ。
「羽生君は若くていいねぇ、お姉さんはもう徹夜がつらいお年頃になっちゃったよ~。夜勤明けの日差しはもう殺人レベルで、帰りがもう辛くて辛くて~」
「あはははは、殺人は大げさですよ」
と、そんな冗談に笑ったんだけど、
「帰りが車で、夜勤明けのボーっとした頭で運転がね~。私はまだ事故ってないけど、院長は若い頃、夜勤明けの寝ぼけ運転で電柱アタック、買ったばかりの新車大破で、悪夢の眠気クラッシュしたって話だから」
「全然大げさじゃなかった! 森谷さんも気を付けて下さいね!」
「うふふ、ありがとね~。じゃあ私は戻るけど羽生くんも程々にね~」
そう言って去っていったけど、看護師は想像以上に過酷なお仕事らしい。
そんな森谷さんに敬意を払い、クライマックスで続きが気になる展開なのを我慢しながら小説を閉じて眠りについたのである。
冒頭のホラー内容はAnother(綾辻行人)のオマージュです。なおAnotherはアニメ化されましたが、内容が原作とかなり違うので、気になった方は読んでみて下さい。




