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閑話 なにげない日常

 チュンチュン、チュンチュン……


「ふわぁ……」


 起き抜けの少女が小さな欠伸をしている。


 まだ半分夢の世界の中にいるのか、その大きな瞳は半分閉じかけていていた。


 少女は、もそもそとベッドから這い出し、その華奢な上半身を起こす。


 細いすらりとした手足をぶかぶかの寝間着が包んでおり、所々その白い肌がちらちらと覗いている。


 大して手入れもしていないのに、その少女の長い髪は上質の絹のようにサラサラとその輝きをベッドに投げ出していた。


 少女はよっと気合いを入れて、ベッドから起き出す。


 誰も見てないことを良いことに、着ている寝間着を大胆に脱ぎ捨て、ポイポイと床に放り投げていく。


 服を全て脱ぎ捨てた少女は、ウーンと大きく伸びをする。


 全体的にすらりとしているが、背はあまり高くなく、身体の凹凸もあまり目立たない。


 ハッキリと意識が覚醒した少女は、次にクローゼットの前で仁王立ちし、今日の服装について考える。


 とりあえずメイド達が綺麗にクローゼットに並べてくれた下着や揃えられた洋服を床に無造作に並べていく。


「うーん……」


 少女は自分の服を中々決められない。


 クマさんパンツと黒のレースの下着を両方手にとって見比べながら、両方とも投げ捨てる。


 あーでもないこーでもないと1時間以上悩んだあげく、結局少女が選んだコーデは、ミントグリーンをベースにした清楚で清潔感のあるワンピースに、ウェスト部にサッシュベルトを巻いたちょっとフェミニンで大人っぽいものであった。


 その後、髪をツインテールにセットし、小物やブーツを揃えて完璧な装いとした。


 少女は姿見に映る自分をチェックする。


 ニコッと笑い、眉根を寄せる。悲しげな表情をしたかと思うと、憤怒の表情を浮かべる。


 そして最後にあざといポーズを決めて、今日の調子を確認する。


 大分満足したのか、少女は意気揚々と小走りで部屋から出て行った。部屋に散らかした洋服等を片付けることもなく。


ーーーーー


「おーいお前様よ。今日のワシ、どうじゃ?

 大分この世界の装いにも慣れてきたじゃろ?

 みんなワシの可愛さにぞっこんになって、思わず新タイトル『ウィンディちゃん、がんばる。』、になりそうじゃぞ❤」


 俺がのんびりと朝食を摂っていた時、バタバタとウィンディがダイニングルームに突撃してきた。


 俺は胡乱(うろん)な眼差しでウィンディを上から下まで眺める。


「別にどんな服を着ても、お前の性能には関係がないだろうが。

 それよりもいつまで実体化しているんだよ。お前が実体化している限り、俺の魔力は消費されるわ、部屋が無駄に占有されるわ、お菓子が食い散らかされるわで俺にとってのメリットがなにもないんだが」


 俺の冷静な指摘にウィンディはプンスカと怒り出す。


「えーい、なんちゅーデリカシーのないヤツじゃ!

 消費魔力なんぞ大して負担になっておらんし、部屋もたくさん余っておる!

 というよりもメイド達は、全く手の掛からないお主よりも、ワシの方が可愛くて良いとみんな言っておるぞ!

 それとお菓子の件じゃが、それもコックのおっちゃんがワシがなんも言わんでも、いつも大量に用意してくれておるのじゃあ!!」


「……うちの連中、お前を甘やかしすぎじゃないか?

 まぁ、いちいち説教するのも面倒いし、どうせ効果もないから、これ以上は言わん。

 だが、魔法学校についていくって言うなら、とりあえずキチンと最低限のマナーやこちらの世界のルールを学んで貰うからな」


「うげぇ……あの勉強、今日もやるのかのぉ……?」


 ウィンディが黙っていれば可愛い顔を残念に歪めて呟く。

 こいつは精神年齢が相当にお子様なので、勉強が大の苦手なのだ。


「今日と言わず毎日だ。講師陣もお前は教え甲斐がある生徒だと張り切っていたぞ。

 良かったな、彼等にも愛されていて(笑)」


「なんじゃその(笑)って!凄くバカにしたニュアンスを感じるゾイ!」


 ポカポカと殴りかかってくるウィンディを適当にいなしながら朝食を再開する。


 ああ、今日も平和な1日になりそうだな。

 時期的には15歳になる半年前くらいでしょうか。

 重要な閑話が中々書き終わらず、腹いせでウィンディのどうでもいい話を書いてしまいました。

 だから原稿が進まないのかもしれませんが……

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