第33話 報告
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川から少し離れた場所に大きな集落が一つあった。賑やかな声が飛び交うそこに衛次と大雅はゆっくりと近づいていった。
走り回っていた子どもは足を止め、「誰あれ?」と二人を指差した。他の子どもたちは首を振り、数人がある一つの家に姿を消した。それを見た二人は笑った。
「君、怪しい奴だと思われてるぞ」
「それはお前の方だろ」
二人が言い合っていると、子どもが入っていった家から一人の老婆が支えられながら出てきた。その老婆は腰を曲げ、顔には多くのしわが刻まれている。老婆と二人の距離が縮まるにつれて、衛次の中でその老婆にある面影が浮かんだ。真っ直ぐな瞳に、いたずらっ子のような無邪気な笑顔――彼女がどんなに老いようと、それが変わることはなかった。二人が集落の入口まで辿り着くと、老婆はあの時のように笑って言った。
「お帰りなさい、衛次さん」
何十年ぶりに聞くその言葉に、衛次の胸の奥から熱いものがこみ上げる。しかしあの日自身に誓ったことを今一度思い出し、それをぐっと抑えて目を細めた。
「ただいま戻りました、佐那江さん」
衛次は身を屈め、佐那江と抱擁を交わした。それを目にした子どもたちは訳がわからず、立ち尽くした。二人が離れるのを見計らって、大雅はフードを取り頭を下げた。
「元鷹匠の大雅です。お目にかかれて光栄です」
佐那江は視線を大雅に移し、優しく微笑んだ。
「衛次さんから話は聞いています。よくぞご無事で」
次話「」は2019/9/14(土)に更新します。




