133、従魔登録で一騒動
皆さんこんばんは。
いつもご高覧くださりありがとうございます。
さて今回の話は、従魔登録のためにギルドに訪れますが大人しく登録ができる様子はないようです。
「・・・で、今度はまた何をやらかしたんだ?」
応接室でギルドマスターのオルガが、またかといった表情でケイ達を見つめる。
ケイが貰った獣魔の卵が孵化したので、従魔登録が必要だとアダムから言われたため来ただけだと述べると、ブルノワと少佐を一瞥した後で盛大にため息をついた。
オルガはレッドボアといいクラーケンといい加えて国王のけん制命令といい、お前らは一体どうなってるんだ!?と頭を抱えてブツブツと言っている。
従魔登録を行うためギルドに足を運んだケイ達は、ギルド内に足を踏み入れた瞬間に周りの雰囲気が変わったことに気づいた。
ブルノワを肩車し、両手には少佐を抱えている姿が異様に見えたのだろう。物珍しいのかジロジロとこちらを見つめ、ボソボソと仲間同士で話し合っている姿が見られる。その様子を敏感に感じていたブルノワと少佐が、少し緊張した面持ちでケイにしがみつく。
「あ!皆さんこんにちは!」
そんななか、いつもと変わらず受付カウンターにいるミーアがケイ達に気づき、笑顔で声をかけてきた。いつも通り用件を聞かれたので、従魔登録の話をすると見たことがないのかなんの種類ですか?と問いかけられる。
「こっちの犬っころはサーベラスで、肩車してるのはシリューナっていう魔物だ。こいつらは既に従魔契約をしている」
「見た目は子供のようですが?」
「貰った獣魔の卵から孵化したばかりなんだ」
ケイの言葉に辺りにいた他の冒険者たちのざわめく声が強くなる。
野次馬同士の会話を盗み聞きしてみると、だいぶ希少な魔物のようで見ることすらほどんどないらしい。それを知ったケイがだからかと納得をする。
「ほぉ。それが噂の従魔か」
いつの間にか野次馬から人だかりになったようで、その間を素材の買取をしているブランドが人をかき分けて現れた。どうやらケイ達が入ってきた段階から噂になっていたようで、ちょうど手も空いていたので見に来たと語る。
「シリューナか。わしも長年やってはいるが、まさか従魔契約を結べるとは思わなかったぞ?」
「ブルノワって珍しいのか?」
「ブルノワという名か、大人しくていい子じゃないか。シリューナは主にエストアの高地やバナハにあるデンリール山の一部で見られたこともあったが、情報不足おろか目撃者もあまりいない。わしでさえ現役の時に一度見たきりだ」
ちなみにセイレーンとハーピーは生息地が異なるが一般的な魔物で知られている。
セイレーンは海を生息する魔物で、歌声により渦潮を発生させ船を引き込み、山岳地帯を生息地としているハーピーは人里に現れることはないが、彼らのテリトリーに入ったが最後、捕食対象となり集団に襲われ食べられる。
ブルノワの種族であるシリューナは、どういうわけかそのどちらの要素も併せ持つイレギュラーな存在として知られてはいる。しかしブランドがいうように珍しい魔物のためそんなに広くは知られていない。
ブランド曰くブルノワの姿は、セイレーンに近いらしい。
セイレーンは、人の女性の様な美しい容姿に背中には鳥のような大きな翼が生えている。対してハーピーは頭と胴体が女性に近い容姿だが、手の部分は鳥の翼、足は鷲のようなかぎ爪のような形状になっている。
ブルノワの羽根は白いがこれはセイレーンも一緒なのかと尋ねると、セイレーンの羽根は鷹の翼ような色をしているそうだ。たぶん、保持している魔力の影響で白くなっているのだろうとブランドが推測する。
しかも少佐の種族であるサーベラスは、元Aランクの冒険者だったブランドも知らない様子で、ケルベロスの亜種だと教えると伝説級の生き物なのかと目を丸くされた。ケルベロス自体は五百年前の世界大戦で目撃された事例があったようだが、いかんせん当時の資料が不足しており、正確なことはわかっていない。
その当の本人である少佐は、三者三様でブランドを見つめている。
危険ではないと認識しているようで、好奇心旺盛なヴァールが鼻先でブランドの匂いを確かめている。ブランドが右手を下手にしながらヴァールに近づけると、鼻先でツンツンと軽く突いてから盛大に舐めだした。
「元気なヤツだな。サーベラスやシリューナという種類は希少も希少だろう。こいつらが世に知られたらちょっかいをかけてくる貴族も出てくるかもしれん。が、まぁ国王直々にけん制命令が出ているから、よほどのことがないかぎりは問題ないだろう」
「けん制命令?」
ブランドの言葉にケイ達が首を傾げる。
どうやら、一週間ほど前に貴族によるパーティ・エクラの不必要な接触や依頼を禁じる法案が制定され、それが系統問わず全ギルドに通達されたらしい。
そういやそんなこと言ったなと思い、当初はただ注意してくれるだろうと考えていたがまさかの法案である。国王は困っている者を放っておけないと、急ピッチ進め可決されたそうだ。それによると、二回までは厳重注意で三度目は禁固刑、貴族に至ってはお家取り潰しらしい。
(いや、その極端さよ!)と内心ガイナールに対して思ったが、ギルドの指名依頼の全体の二割がパーティ・エクラあてのものだったらしく、それ以降ピタリと止んだそうだ。恐るべし国王!
「この騒ぎは一体何だ!?」
一階の騒動が気になったのか二階からギルドマスターのオルガが下りてきた。
騒動の中心人物であるケイ達を見るやいなや、嫌そうな顔をしたのは気のせいだろうか。瞬時に状況を察したオルガが職員に持ち場に戻れと指示を出し、野次馬と化した冒険者達を追い払う。
「話をじっくり聞かせて貰うぞ、パーティ・エクラ」
これまた少し見ない間に疲労困憊の色が見えるのは気のせいだろうかと思いながらもその後に続くことになり、そして冒頭のオルガの発言へと戻る。
ミーアから従魔登録に必要な書類を受け取り記入した後、ケイのギルドカードと書類を彼女に渡し、登録が完了するまでの間、オルガに一連の出来事を説明した。
「獣魔の卵は聞いているが、まさか異なる種族が生まれるとはな」
「そもそも獣魔の卵はどこから発見されたんだ?」
「話によると三百年前の魔王討伐後に発見されたらしい。当時は魔王の生まれ変わりだとか噂になっていたようだが、討伐に加わっていた賢者エルゼリスが学園設立と同時に学園内に安置していたそうだ」
「それって逆に危なくねぇのか?」
「孵化させたヤツがいう言葉か?まぁ、危険がないと判断した上でのこどだろう。俺も当時の賢者の考えていることなんぞわからんよ」
しばらくして、登録を済ませたミーアがカードを持って応接室に入ってきた。
確認すると四体分の登録となっており、やはりギルド内でも少佐の登録方法に頭を悩ませたそうだ。外見は一頭と数えられるが、頭の三つは別々の人格をもっているので、一頭ずつカウントされている。オルガも前例がないが見たところ性格に違いがあるためこちらで個別に登録しておいたと気を利かせて貰った。
そしてミーアから従魔の証である首輪が手渡される。
サウガ、ショーン、ヴァールは大人しく首につけることが出来たが、問題はブルノワだった。
『いーやーーーーーー!!!!』
従魔の証である首輪をつけようとしたが、かたくなに頑固拒否!の姿勢をつく。
しまいには高いところへ逃げようと、レイブンの体をよじ登り降ろされないように必死に頭にしがみつく。レイブンは困ったなという表情をしていたが、ミーアも規則ですのでとこちらもどうしたらいいのかと困った顔を浮かべる。
「これって首輪しかないのか?」
「人型の魔物を従魔にするということを想定してないからなぁ」
「さすがの俺も首輪をつけたブルノワを連れて歩くのはちょっとなぁ。別の意味で捕まるのだけは避けたい」
ケイの言葉にオルガはそうだよなと頭を掻く。
従魔の首輪はギルドのマークである剣が二本並んで描かれている小さなプレートが証としてついている。首輪の部分は魔法で加工した革製で、従魔の大きさに応じて調整が出来る仕様になっている。
では従魔が軟体生物、スライムとかはどうなるんだろうかとオルガに質問してみたところ、スライムなどの軟体生物は、従魔契約の際に体の一部に契約者が所属しているギルドの印が浮かび上がるらしい。それなら他の魔物も同じ事が可能ではと返すと、スライムは魔力を独自に変化させて吸収するため他の魔物にはできない芸当とのこと。続けて本当のことをいうと、他の魔物にも体の一部に証を表示する術があるのだそうだが、人型の魔物の場合は奴隷の証である【隷属の刻印】と間違われる可能性があるため、その術自体を一切禁じていると内緒で教えてくれた。
「それがなんだかんだあって今の従魔の首輪になったってことか。証であるプレートを加工するのは違反になるのか?」
「加工?」
「例えばネックレスとか腕輪とかアクセサリーみたいな感じにするってこと。今後も似たような事例が出た時に対応出来なかったら終わりだぞ?」
ギルドマスターに向かってその発言はまずいのではと思ったが、それは思いつかなかったようで証であるプレート部分は外せる様になっている。プレートを加工すること自体は特に規定はないようなので、この際ブルノワがつけられるように少し手を入れることにした。
ケイは一応断りを入れてから首輪からプレートだけを抜き取り、それから鞄に手を入れて創造魔法で工具箱を創造した後に取り出す。プレートは紋章がある部分は銀
で周りのフレーム部分は木製を組み合わせて作った簡素な物だった。木のフレームのてっぺんに錐で小さな穴を開け、そこに輪っかがついた鉄製のネジを設置する。
回して設置し抜けないことを確認した後に革を加工した細い紐を設置したネジの輪っかに通す。通した紐の先端にペンチで留め具をつける。
「ケイって器用だな」
「そうか?俺の国では普通の人でもやってるぞ?」
「そうなのか?てっきり物を加工するのは職人や大工がやるものだと思っていたから、ケイの国は不思議だな」
「なんだよそれ?職人だって元はそこら辺にいる経験のない奴らだろう?それと変わんねぇよ」
手際よくプレートを加工するケイにアダムが感心した様子で覗き見た。
日本の一般家庭でも、家の修理や家具の組み立てをする日曜大工を趣味としている人物も存在している。しかしダジュールでは、物を自分で作ったり修理したりすることはなく、専門家である職人がするものだという認識らしい。その辺は世界柄ということなのだろう。
「ブルノワ」
ケイに呼ばれたブルノワが、しがみついているレイブンから降りようとしている。
レイブンがブルノワをだっこさせてから床に降ろすと、トコトコとケイのところまで歩き、迷子にならないためにつけるんだと諭すと意味を理解したのか頭を下げてつけろという行動ををみせる。ケイがネックレス風に加工した従魔の証を首からさげてやると、ブルノワが証を見つめてからケイの方を向く。
『パパ~にあう?』
「あぁ。俺が加工した世界で一つの証だ」
そう言われたブルノワは、嬉しそうな笑みを浮かべながら加工された従魔の証をいつまでも見ていた。
それを見て、従魔登録も楽じゃないなとケイは内心苦笑いを浮かべたのであった。
生まれたばかりは手がかかる!大人しくしないのが子供!
最後はケイがなんとかしましたが、親ってそういうものでしょう?
暖かく見守りましょう。
次回の更新は2月12日(水)です。




