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NOAH ~希望と地上の守護神~  作者: 地理山計一郎
最終章「希望<ノア>」
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第2話「シヴァ・ドラス」

禁断の箱の封印が解かれ、邪神は目を覚ます・・・・僕が昔聞いた伝説にあった言葉だ。それが、僕達の目の前で現実になっている。

靄に変わったパンドラは、ガルターク、ベルゼルトと融合し、巨大な黒い巨人が完成した。そいつは、パンドラ達が融合したとは思えないほど、シンプルな見た目をしていた。全身は真っ黒で、体の所々に赤いラインが入っている。背中にはパンドラ達のように翼はなく、腕や足、体は僕よりも細長く、両腕、両脚、胸は尖ったような形で、言うならば、西洋甲冑を細くし、要所を鋭く尖らせ、シャープにした感じだ。頭も同様で、兜を尖らせた感じだ。口には僕と同じようにマスクが付けられている。しかし、その中に瞳だけはなかった。目自体がないというべきか、目を凝らして見ても、瞳はなく、ただただ暗黒だけが見えた。

「邪神・・・・シヴァ・ドラス・・・・!!」

僕は"奴"の姿を見てそう呟いた。すると、慎也が声をかけてきた。

「し、知ってるのか、ノア?」

慎也の質問に、僕はシヴァから目を離さずに話すことにした。

「古代から伝わる伝説がある・・・・あるところに、抗争を続ける2つの民族があった。抗争のせいで、怪我人が多発し、老人や子ども、女までも抗争にかり出された。そんな時、"奴"が・・・・邪神シヴァ・ドラスが現れた。シヴァは断罪と称してその場にいた人間を全て殺した。」

「ひ、ひでぇ・・・・中には子どももいたんだろ?」

「ああ、そうだ・・・・その後、シヴァは自身の肉片から化け物を作り出した。それが、ガルタークとベルゼルトだ。シヴァはそいつらを引き連れて、全世界を断罪しようとした・・・・・でも、各国の高僧達が力を合わせ、シヴァを一体の巨人に封じ込めることに成功した。それが・・・・パンドラだ。」

「じゃ、じゃあ、俺達は・・・・」

「そう・・・・僕達は蘇らせてしまったんだ。最強最悪の神を・・・・」

僕が慎也にシヴァのことを話していると、シヴァはゆっくりと顔を上げ、空にある戦闘機を見上げ、ボソッと呟いた。

「・・・愚かな・・・・」

シヴァはそう言うと、右手で手刀を作り、立ったまま手刀を戦闘機に向け、そのまま腕を振るい、空を斬る。すると、上空を飛んでいた戦闘機は正面からパイロットごと真っ二つに切り裂かれた。

『がっ・・・・!!』

パイロットが叫ぶ暇もなく、真っ二つにされたことで即死、さらに戦闘機が爆発した。

『な、なんだ!?何が起きた!?』

『ターゲットが何かを発射した模様です!しかし、熱源反応はありません!!』

パイロット達は、シヴァが何をしたのか分かっていないようだが、僕は分かっていた・・・・と言っても、ほんの一瞬だったが。

「衝撃波だ・・・・手刀を目にも見えない速さで振るって、物体を切り裂けるほどの衝撃波を放ったんだ!」

「そ、そんなことが可能なのか!?」

「シヴァだったら、造作もない・・・・!!」

すると、自衛隊はこのままじゃいられないと、シヴァに攻撃を始めようとした。

「や、やめろ!シヴァに敵うわけがない!」

僕はそう叫んだが、隊員達に僕の声は届かない。隊員達には、僕がただ何かを叫んでいるだけにしか聞こえないだろう。

そして、戦闘機と戦車がシヴァに向かって弾丸を発射した。

「なんと愚かな・・・・」

シヴァは両手を横にかざした。すると、放たれた弾丸はシヴァの体に触れる寸前で爆発した。シヴァは爆風の中に飲まれた。

『やったか!?』

しかし、その瞬間、爆風の周りにいた戦闘機、戦車が真っ二つに切り裂かれた。

『何!?』

「あいつ・・・・バリアを張れるのか!」

シヴァは、攻撃が当たる瞬間、自身の周りにバリアを発し、攻撃を防ぎ、そして衝撃波で戦闘機、戦車を切り裂いた・・・・・

「人間は・・・・まだ争っているのか・・・・なんと愚かな生き物だ・・・・修正が必要だ。」

シヴァは小さくそう呟くと、自衛隊に攻撃を開始した。衝撃波で次々と兵器を切り裂いていく。自衛隊も負けじと攻撃するも、バリアで攻撃を防がれ、その度に衝撃波で切り裂かれる。

その時、上空からミサイルがシヴァに向かって降ってきた。海軍の軍艦による攻撃だ。しかし、シヴァはそれをバリアで軽々と防いでしまう。すると、シヴァは軍艦のある方角に、体を向けた。さらに、シヴァは左手で顔を隠すような動作を取った。すると、シヴァの体に走る赤いラインが血が巡る脈のように動き出し、左手に集中する。左手のひらが赤く光り、シヴァがそれを前に出すと、手のひらから赤く光る光線が発射された。発射された光線は、遠くの軍艦を貫き、爆破させた。

軍艦が爆発したと分かると、シヴァは再度自衛隊を破壊しようとした。しかし、

「うおおおおおおおおお!!」

僕はシヴァに向かって体当たりを繰り出した。

しかし、シヴァは衝撃波を放った。僕は両腕を盾にして防いだ。切り裂かれはしなかったけど、衝撃が強すぎて大きく後退してしまった。

「お前は・・・・誰だ・・・・?私と同じ・・・・神か?」

シヴァの質問に、僕ははっきり、大きな声で答えた。

「僕は、ノア!人を守るために作られた巨人だ!」

「・・・・そうか、お前もまた、人間に作られた存在か・・・・かわいそうに・・・・だが、安心しろ。我がお前をその宿命から解き放ってやろう。お前はもう愚かな人間を守る必要はない。」

「バカにするな!!」

シヴァの発言に怒った僕は、拳を握りしめ、シヴァに拳を繰り出した。しかし、僕の攻撃はバリアで防がれてしまう。さらに、シヴァは素早く僕の腹に手を当て、手から衝撃波を放ち、僕を吹き飛ばした。

「なぜ人間を守る?」

シヴァが話しかけるのを無視し、僕はシヴァに攻撃を続けた。しかし、攻撃はことごとく封じられ、手刀による衝撃波を受け、体に切り傷を負ってしまう。

「人間は愚かで、浅ましく、醜い・・・・我はガルターク、パンドラ、ベルゼルトと通してこの世界を見た・・・・」

僕は何度も何度も攻撃を続けた。しかし、攻撃はシヴァの体に通ることはなかった。僕が攻撃するたびに体を切り刻まれ、自慢の装甲も段々削られ、ボロボロになっていく・・・・

「人間は変わっていない・・・・争いを続け、差別され、貧しい者も生まれ、この地上を汚す・・・・こんな人間が生きていて、なんの価値がある?・・・ないだろう?だからこそ、我は修正をする。人間達を抹殺し、この世界を修復する。」

そう言ったシヴァはボロボロになった僕を衝撃波で吹き飛ばし、左手に赤い光を溜めた。そして、手のひらを僕の顔に近づけ、僕の顔を撃ち抜こうとする。

だが、次の瞬間、僕は"白薙"を作動させ、右手から光の剣を発現させ、シヴァを攻撃した。

しかし、それに気づいたシヴァは、後ろに跳んでよけた。攻撃は当たらなかったが、奴との距離を稼ぐことはできた。ぼくは"白薙"を地面に突き刺し、ゆっくりと立ち上がった。

「確かに・・・・人間は汚いかもしれない。悪かもしれない。でも、人間の中には、いい人がいっぱいいるんだ!そのいい人達のためにも・・・・後の時代に生まれ来る命のためにも・・・・僕は、戦う!!だから、お前なんかには負けない!!」

僕はボロボロの体になりながら、立ち上がり、シヴァを睨みつけながら叫んだ。

それと同時に、僕は猛が言っていたことを思い出した。


『もうすぐ、子どもが生まれるんだ。』


友達の子が生まれる。その子だけじゃない。他にも多くの子ども達が、後の時代に生まれてくる。その子達に、怖い思いをさせちゃいけない。死の恐怖を・・・・見せちゃいけない。みんなや、子ども達のためにも、負けられない。

僕は決意を固め、拳を握りしめた。そして、慎也に話しかけた。

「慎也・・・・ごめん。こんなことに巻き込んじゃって・・・・」

「今更何言ってんだ。俺は覚悟決めたよ。それに、お前と合わなかったら、俺、ずっとお前を憎んでたと思う・・・・だから、お前と会えて良かったよ。」

「・・・・ありがとう。」

「いこうぜ。」

「うん!」

僕達は負けない。みんなのために、人間のために・・・・!!

僕達は決意を新たにし、最後の戦いに望んだ。



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