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NOAH ~希望と地上の守護神~  作者: 地理山計一郎
第3章「邪神誕生」
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最終話「奇跡の力」

ノアはブースターを使って空を飛んだ。俺はノアと同化しているとはいえ、空を飛んでいることに内心驚いていた。

「すげぇ・・・俺、ホントに空飛んでんのか・・・」

ふと、地上に目を向けてみると、街にいる多くの人間達がどよめきながらノアを指差し、何かを噂している。俺はその声に耳を傾け、聞き取れる範囲の声を聞き取った。

『あ、あれ・・・・ノアじゃねーか!?』

『マジかよ・・・また怪獣が出たのかよ・・・・』

『そういえば、さっきデカイ鳥みたいなのが飛んでったよね!?』

みんな怪獣・・・・パンドラが現れて不安がってるようだ。

その時、ノアがふと呟いた。

「みんな、ごめん・・・・僕のせいで・・・早く災いを全て倒して、みんなを安心させないと・・・・!!」

ノアの台詞から推測すると、ノアは人間達が不安がるのは自分のせいだと思い込んでるみたいだ。自分がふがいないせいでみんなを不安にさせてしまう・・・・怖がらせてしまう・・・・ノアはきっとそう思ってる。

そう思った俺は、ノアを励まそうと声をかけた。

「ノア、気を落とすなよ。俺からこんなこと言うのは変かもしれないけど・・・・今のお前は一人じゃない・・・・俺がいる。」

「・・・・そうだね!」

俺達が話し込んでいると、目の前に鳥のような飛行物体が目に入った。

その物体は近づく度にどんどん大きくなり、やがてノアと同じくらいの大きさになっていった。

俺とノアはそれを見た途端、こいつがパンドラだと気づいた。

「パンドラ!」

「あーら、結局来たんだ。でも、邪魔しないでくれる?今から食事なの。」

パンドラはそう言って、背中の触手を地上に向けて発射した。パンドラは触手で人間を捕まえ、食う気だ。

しかし、それよりも早く、ノアが触手を捕まえた。

「そうはさせるか!!」

『ウオオオオオオオオオッ!!』

ノアはそのままパンドラをハンマー投げのハンマーのように振り回し、パンドラを雲の上に投げ飛ばした。

投げられたパンドラはそのまま雲の上に消えた。ノアはブースターを加速させ、そのまま後を追って雲の上に出た。

しかし、雲の上にパンドラはいなかった。辺りを見回しても何もなかった。

その時、ノアの頭上から触手が飛び出し、首に巻き付いた。

「なに!?」

パンドラは頭上にいた。ノアの首を絞めたパンドラは、剣のように変わった両腕で、ノアに斬りかかった。

今の俺は、ノアと同化している。つまり、ノアは俺と同じ動きをすることができる。俺だったらこの状況をどうやって乗り切るか・・・・普通だったらここでパンドラの攻撃を受け止めるだろうが、俺は逆にパンドラに突進する。

俺が地面を蹴るようにジャンプすると、ノアはブースターを加速させ、空を蹴る。そのままパンドラに突進し、間合いに入ったところでパンドラの頭に頭突きをかます。

「くっ・・・・」

パンドラは頭突きを食らって怯んだ。その隙にドロップキックを繰り出し、パンドラを蹴り飛ばす。パンドラが蹴り飛ばされたことで触手が伸びる。触手が伸びたところでノアの腕力を使って触手を引きちぎる。

「よし!イメージ通りだ!!」

俺は自分の思った通りの対処ができ、喜んだ。ノアも俺を鼓舞した。

「やったね、慎也!」

俺を褒めてくれたノアは両手にアースエナジーを集中させ、火球に変えて放った。パンドラはそれをよけ、両腕のブレードでノアに斬りかかる。

ノアはパンドラの腕を掴んで攻撃を防いだ。すると、ノアは突然俺に語りかけてきた。

「慎也!戦闘は僕に任せて、君はパンドラの中にいる彼女を捜して!!」

「わかった!」

俺はノアの言う通り、戦闘はノアに任せ、俺はパンドラの体を見渡し、美香を探した。

しかし、ノアとパンドラが激しく動く度に、俺はその動きを追うだけで精一杯だった。

「くそ・・・これじゃ全然・・・・」

その時、パンドラの背中に爆発が起きた。

「!?」

「な、なんだ!?」

俺達はそれを見て驚いた。そして、遠くを見てみると、こちらに向かってくる灰色の多数の飛行物体が見えた。それは、戦闘機だった。

「あれ・・・・もしかして自衛隊か!?」

「僕達の手助けをしてくれるのか・・・・?」

戦闘機はノアにぶつからないように旋回し、もう一度パンドラに攻撃を加えようと試みる。

『ミサイル、目標に命中!再度攻撃を仕掛けます!』

戦闘機のパイロット達は標準をパンドラに合わせる。

「たかが人間の分際で・・・・!!」

パンドラは戦闘機を破壊しようと攻撃を試みた。しかし、そうはさせまいとノアがパンドラを羽交い締めにした。

「逃がすか!」

『ファイア!!』

多数の戦闘機から一斉にミサイルが発射された。ミサイルは孤を描いてパンドラに飛んで行く。

ノアはパンドラを振り回し、ミサイルに向かって投げ飛ばした。投げ飛ばされたパンドラはミサイルの直撃を受け、そのまま真っ逆さまに落下していった。

「やった!」

俺とノアはそれを見て勝利を確信した。しかし、次の瞬間、ノアの両腕両脚にパンドラの触手が巻き付いた。

「なに!?」

「あんたも一緒に落ちな!!」

触手に引っ張られ、俺達も地上に真っ逆さまに落ちていった。

戦闘機はパンドラを狙おうとするも、落下スピードが早く、狙いが定まらないでいた。

俺達はそのまま街の建物目掛けて落下した。落下した建物から砂埃が煙のように吹き、周りが見えなくなった。

砂埃が晴れ、改めて辺りを見回すと、見覚えのある風景が目に入った。そこは俺が一度来たことがある場所だった。

「もしかしてここ・・・・大坂か!?」

俺達が落ちたのは、大坂駅だった。実は、俺は中学生の時に親とここに来たことがあった。だから見覚えがあったんだ。

悠長にそんなことを考えていると、突然前からパンドラがノアを蹴り飛ばした。

ノアは仰向きに倒れた。急いで起き上がろうとするも、パンドラが上にのしかかった。

「さっきはよくもやったわねぇ・・・・思い知らせてあげるわ!!」

そう言ったパンドラは触手をノアの両手、両脚に突き刺した。

『ウアアアアアアアアア!!』

「くっ・・・・な、なんだこれ・・・・手と脚が・・・・!!」

ノアの体に触手が突き刺さった瞬間、俺の両手両脚に痛みが走った。俺とノアは同化している。そのため意識や痛みも同化してるから、俺自身も痛みを感じているんだ。

その光景を見て、パンドラは笑った。

「あははっ!!いい様ね!今からじっくりと殺していくから、覚悟なさい・・・・!!」

そう言って、パンドラは残った触手を差し向けた。

その時、俺はパンドラの首元が目に入った。パンドラの首の根元に楕円形の黒い塊が見えた。

その瞬間、俺はその中に美香が閉じ込められていると考えた。

「まさかあれが・・・・」

「慎也、見つけたの!?」

「ああ・・・パンドラの首元にある黒い塊・・・・多分あの中に美香が・・・・でも、今の状態じゃ・・・・」

俺は今の自分達の状態に、半ば・・・・いや、本気で諦めかけていた。今、両手両脚を高速され、ろくに動けない状態だ。しかも、パンドラは俺達を本気で殺そうとしている。もう勝つ見込みは薄い。

「もう、ダメか・・・・」

俺がそう呟いた瞬間、ノアが叫んだ。

「諦めるな!!」

「!!」

「君があの子を助けたいっていう気持ちは・・・・嘘だったのか?少なくとも、僕はそうは思わなかった。あの時の・・・大切な人を助けたいと願う君は、誰よりも強い心を持っていた!その思いがあったから、僕は力を貸したんだ。」

「ノア・・・・」

ノアの言葉に、俺は胸を締め付けられるような気持ちになった。

そして、ノアは話を続けた。

「大丈夫・・・・君がどれだけ絶望しても、僕がいる限り・・・・絶対に負けない!!だから、諦めちゃダメだ!!」

ノアの言う通りだ。俺は、美香を助けたい一心でここまで来たんだ。今更、諦めきれるわけがない。

「そうだな・・・・まだ、負けて・・・・たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

『オオオオオオオオオオオオオッ!!!』

俺達はパンドラと戦おうと立ち上がろうとした。

「な、なに!?まだ戦おうっていうの!?でも無駄よ!拘束されている以上、あんた達に勝機は・・・・!!」

パンドラの言う通り、俺達は拘束されている。だけど、そんなことはどうだっていい。美香を助けるためなら、腕の一本や二本、構いはしない。

ノアは力任せに自分の右手を引きちぎり、拘束から抜け出した。

「ぐあっ!!ま、まだまだ・・・・!!」

俺の右手にちぎれるような痛みが走る。だが、そんなことを気にしてる場合じゃない。ノアはそのままちぎれた右手でパンドラに攻撃を繰り出した。

「ふん!右手がないクセに攻撃なんて・・・・」

パンドラは俺達の攻撃に余裕をかました。しかし、次の瞬間、ちぎれた右手首からオレンジ色の光を放つ光の刃が飛び出し、パンドラの首筋に突き刺さった。

「ギィヤァァァァァァァァ!!!」

パンドラは激しい痛みのあまり悲痛な叫び声を発した。

そして、パンドラは触手を離し、後ろに下がった。その隙にノアは起き上がり、すかさず右手の刃でパンドラの両腕を切り裂いた。

「な、なんなのよ・・・・!!なんなのよその剣はぁ!!?」

パンドラは混乱と全身に痛みが走る中、俺達に問いかけた。

すると、ノアは言った。

「神剣・・・・"白薙"・・・・!!慎也の守りたいという思い、助けたいという願いから生まれた・・・・奇跡の力だ!!」

奇跡の力・・・・普通だったら信じられないような力だ。でも、今だけは、その奇跡の力を信じられるような気がした。

「奇跡の力か・・・・ありがたく使うぞ!!」

ノアは白薙をパンドラの首に突き刺してこじ開け、左手で黒い塊を引き抜いた。

そして、黒い塊を自身の内部・・・つまり、俺の所に吸い込んでいった。

そして、目の前に現れた塊は光に包まれて消えていった。そして、中から美香が現れた。・・・・見た目は家で見た時と同じ、化け物のように変わった時と同じだった。

美香は俺を見るなり、目をそらした。

「どうして・・・・助けたの?『バイバイ』って言ったのに・・・・!」

美香の質問に、俺は美香の両肩をつかみ、面と向かって答えた。

「バカ野郎・・・・来るに決まってるだろ・・・・小さいころから、ずっと一緒だったじゃねぇか・・・・『バイバイ』なんて言うなよ・・・・」

「でも、あたし、もう戻れないよ・・・・こんな姿じゃ・・・・」

「俺が、ずっと側にいる。他の奴がバカにしても、俺が絶対に守るから。」

俺がそう言うと、美香は目に涙を溜めた。俺はそれに答えるように美香を抱きしめた。

「慎也君・・・・」

「もう、大丈夫だからな。」

「うん・・・・」

「ノア、後始末を頼む。」

俺はノアに後始末・・・・パンドラの退治を頼んだ。美香を泣かせるもの、苦しめるもの、そして、人間達を恐怖させるもの・・・・それを無くすために・・・・

「ああ、わかってる・・・・こんなことは、もう終わらせる!!」

ノアは白薙をパンドラの顔面に突き刺した。

『オオオオオオオオオオオオオッ!!!』

ノアは力の限り叫びながら、顔面に突き刺さった白薙をそのまま縦一文字に振り下ろし、パンドラを真っ二つに切り裂いた。

「あ・・・・あ・・・・」

真っ二つに斬られたパンドラは、叫ぶことなく、そのまま地面に落ちた。それと同時に、美香が持っていた黒い石が粉々に砕け散った。

「・・・・終わったのか・・・・」

俺は戦いが終わったことへの安心感から、軽いため息をついた。すると、突然美香の体が光に包まれた。

「な、なんだ・・・・!!?」

美香に包まれた光は数分も経たずにすぐに消え去った。そして、光から出てきた美香の体は・・・・

「美香・・・・お前、元に戻ってる!!」

俺の言葉に動揺したのか、美香は自分の体を見た。すると、元に戻ったことが嬉しいのか、笑いながら涙を浮かべた。

「戻った・・・・あたし、元に戻れた・・・・!!」

安堵する美香に、ノアが声をかけた。

「これは僕からのお礼だよ。僕の中のアースエナジーを使って君の体を元通りにした。」

「ノア・・・・!!お前にはホントになんて言ってお礼を言えばいいか・・・・」

「気にしないで。こんなことになったのは、僕がパンドラを倒せなかったせいでもあるし・・・・」

俺達は和気藹々と会話を楽しんだ。その時、足元から不気味な笑い声が聞こえた。

それは、パンドラだった。

「フフフフフ・・・・精々喜ぶがいいわ・・・・本当の絶望は・・・・これから始まるのよ・・・・」

「なに!?どういうことだ!?」

「私の名はパンドラ・・・・それがどういうことか・・・・よく考えることね・・・・」

パンドラはそう言い残して息絶えていった。


そのころ、自衛隊本部司令室では・・・・

「北と南からはガルターク!西と東からベルゼルトが日本に向かっています!その数・・・・数えきれません!!」

「奴ら・・・・日本を滅ぼすつもりか・・・・?そしてその後は世界を・・・・?」

自衛隊陸軍の里中一等陸佐は立ち上がり、その場にいる隊員達に伝えた。

「総員に通達!怪獣を迎え撃て!全人類と怪獣の総決戦だ!!恐らく、ノアも戦いに参加するだろう・・・・その時は、ノアを全力で援護しろ!!」

『了解!!』

その時、俺達は知らなかった。本当の戦いは・・・・まだ始まったばかりだったんだ。




第3部  完




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