表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NOAH ~希望と地上の守護神~  作者: 地理山計一郎
第3章「邪神誕生」
19/37

第4話「真実」

2人の元を去った俺は、避難所に持って行く荷物を準備するため、一度家に戻った。

家に着くと、玄関のドアの前に見覚えのある人影が見えた。それは、美香だった。

「美香!?」

俺は驚きのあまり、大声を出してしまった。

俺の想像では、美香は避難所にいるものと思っていた。しかしそれが、俺の家の前にいたことに俺は驚いていた。

「慎也君!」

美香は俺に気づき、俺の元に走り寄ってきた。

「美香!お前は避難所にいるんじゃ・・・・」

俺は美香にここにいる理由を聞こうとしたが、それは途中で途絶えた。なぜなら、美香が俺をギュッと抱きしめたからだ。

「み、美香・・・さん?ど、ど、どうした・・・・んですか・・・?」

俺は驚きと緊張のあまり、胸を高鳴らせ、顔を紅潮し、口調が敬語になっていた。

俺が理由を聞くと、美香は俺に顔を見せた。美香の目には涙が潤んでいた。美香は涙ぐみながら話した。

「慎也君・・・・無事でよかった・・・・もう、二度と危険な真似なんて・・・・しないで・・・・!!」

美香の涙と言葉を聞いた俺は、緊張が消え、美香を抱きしめた。

そして、俺は美香に一言謝った。

「ごめん・・・」

俺は、俺が勝手なことをしたせいで美香を悲しませてしまった。俺が勝手な真似をしなかったら、美香は悲しまずに済んだだろう・・・・と思うと、自分が情けなく思えた。

俺が謝ると、美香は涙を拭った。

美香の涙が収まったところで、俺は美香の質問を投げつけた。

「それより、お前はどうしてここにいるんだ?」

「避難所についたら、ドラちゃんがいなくて・・・・どっかではぐれたんじゃないかと思って、探しに来たの。」

それを聞いた俺は、足を動かし、玄関のドアの前に立った。

「・・・美香、鍵は?」

俺は美香にドアに鍵を掛けたかどうか尋ねた。

「慎也君が出ていった後、テーブルの上にあった鍵使ったから・・・・・鍵はかかってるよ。」

美香の話を聞いた俺は、試しにドアノブを回してみた。すると、ドアは開き、スーッと開いた。鍵は開いている。

「あれ?鍵掛けたのに・・・・」

俺は家の周囲を回り、窓が割られていないか確かめた。火事場泥棒に入られた可能性があるからだ。

しかし、窓ガラスは割れていない。2階も見てみたが、異常はない。

「・・・・入ってみるか。」

俺はこの状況が異常だと思いながらも、家の中に入った。家の中は真っ暗で、足元が見えない。俺と美香はスマホのライトを使って、目の前を照らしながら歩いた。

リビングの方に近づく、中から変な物音が聞こえた。それは、固い物をかみ砕くような音だった。リビングとキッチンは繋がっている。恐らく、泥棒が冷蔵庫の食べ物を漁っているのだろう。

俺は音を立てないようにドアを開け、そっとキッチンに近づき、のぞき込んだ。

そこで冷蔵庫を漁っていたのは、パンドラだった。

「パンドラ!?」

「ドラちゃん!?」

俺と美香は驚きのあまり、声が出た。パンドラは声で俺達に気づき、振り返った。

パンドラの周りをよく見てみると、生の野菜や肉、魚といった生の食材、ポテチや煎餅といった菓子、それに調理前のインスタントラーメンが落ちていた。

「お前・・・・何やってんだ?それ、生の食材だぞ?そのまま食ったら腹壊すぞ?」

「・・・・大丈夫。」

俺の質問に、パンドラは無表情で答えた。

すると、美香が言った。

「そんなに・・・・お腹空いてたの?」

「うん・・・・すっごく・・・・お腹空いてたの・・・・」

美香の質問に、先ほどと違い、パンドラは不気味に笑いながら答えた。

その顔を見た途端、俺は全身に悪寒が走った。

パンドラ・・・・何から何まで分からなすぎる。真っ暗な部屋の中で1人で食べ物を漁る。ポテチを袋ごと食う。洞窟の中で球体の中に閉じ込められていた・・・・考えれば考えるほど、パンドラの正体がわからなくなっていく。

その時、俺の頭に声が響いた。

『気をつけて・・・・この子から怪しい気配がする・・・・』

その声はノアの声だった。

(ノア・・・!?どこから・・・・?)

俺はそう考えると、またノアの声が響いた。

『テレパシーで君の頭に語りかけている。それより、この子に近づかない方がいい!』

(ああ?なんでだよ?)

『理由は分からない・・・・でも、何か嫌な予感がするんだ・・・・』

俺が脳内でノアと話していると、美香はポケットからハンカチを取り出し、口を拭いた。

「さ、早く避難所に戻らないと!」

「あ、ああ・・・・」

俺達はパンドラを連れ、避難所に戻った。再び自分の家に戻れたのは、一週間が経ってからだった・・・・・

一週間後、俺達は自分達の家に帰ることができた。

「父さん、母さん、いってきます。」

俺は和室に置いてある仏壇に蝋燭を立て、両親に挨拶をした。

その時、また頭に声が響いた。

『これが、君の両親か・・・・なんて言ったらいいか・・・・』

俺は一週間の間にノアに俺の両親のことを話した。両親が死んだこと、ガルタークとノアの戦いに巻き込まれた時のこと・・・・

ノアは事実を知って落ち込んでいた。今まで人を守ってきたこいつにとって、相当ショックだったみたいだ。

(ケッ、いい気味だ。そのまま反省してろ。)

俺は心の中でノアを罵倒した。しかし、心の奥底で、俺はこんなことに意味がないと感じていた。俺がこんなことをしても、死んだ両親が戻ってくるわけじゃない。だけど、わかってても、こうせずにはいられなかった。自分の本心よりも、ノアへの恨みが強かったのかもしれない。

すると、ノアは俺に語りかけた。

『慎也、こんなことをしても、君の両親が喜ぶかは分からない・・・・でも、約束する。君だけは必ず守る。』

「・・・・その代わりに、俺に戦えって言うのか?」

『いや、君は戦わなくていい。君の体が完治したら、僕は君の体から出ていく。その方が、君の為になるだろうし・・・・』

ノアはいい奴だ。俺が結構ひどいこと言っても、ノアは全然気にしないどころか、俺のことを心配してくれている。猛さんとジャックさんがこいつに惹かれたのは、こいつのこういう所にも影響があるからかもしれない。

ふと、俺はノアに気になることを質問した。

「なあ、お前はなんで人間を守るんだ?」

『なんでって・・・・』

「お前が思ってるほど、キレイな奴ばっかりじゃないぞ、人間は。現実じゃ働かずに家にいる奴は多いし、裏じゃ汚い商売はやってるし、人を蹴落とす奴はいるし、金に汚い奴だっている。はっきり言って・・・・人間を守る価値なんて・・・・」

俺が人間の汚い所を言い並べると、ノアは俺の話を押しのけた。

『僕は、信じてる。』

「えっ?」

『僕は、人間が変われるって信じてる。人間が、すばらしい未来を作れるって、信じてる。だから、僕は守るんだ。それに、人間が、1人でも僕のことを信じてくれれば、僕は何度だって立ち上がれる。』

俺は、ノアの話を聞いて、ふと思った。

ノア、こいつは、心の深くまで人間のことを信じている。例え、裏切られ、痛めつけられても、こいつは人間を信じ続けるだろう。それほど、ノアの意思は固く思えた。

ノアの話を聞いた俺は、自分が恥ずかしくなった。俺は、自分だけのことを見て、ノアのことを理解しようとしなかった。俺自身、そろそろ過去を克服するべきなのかもしれない・・・・

「・・・ノア、お前はすごいよ。」

『えっ?何か言った?』

ノアの問いかけに、俺は笑って答えた。

「別に!さ、早く学校行かないと・・・・ん?」

俺は学校に行こうと立ち上がった。その時、ふと近くにあった棚が開いていることに気がついた。

「いっけね、ちゃんと閉めたはずなのに・・・・」

俺は棚を閉めようとした。すると、中に古びた小さい本のような物があったことに気がついた。

「なんだこれ?」

俺は本を手に取り、本を開いた。すると、ページには見たことのない文字が書き殴ってあった。

『これは、大昔の日本の文字だ!』

「わかるのか?」

『うん。ちょっと読んでみて。僕が翻訳して、声に出すから。』

ノアの言う通り、俺は本の一番最初のページを開いた。それと同時に、ノアは書いてある文字を翻訳した。

『平和な村に、突如、巨大な物の怪が現れた。物の怪は大きな羽を広げ、空を飛び回り、触手を使って家畜を串刺しにし、家畜を飲み込み、作物を食い散らかした。人々はその物の怪によって飢餓に陥りつつあった。しかし、そこに現れたのは、巨人だった。巨人は人間を助けるべく、物の怪と戦った。しかし、巨人でも物の怪を倒すのは難しく、劣勢を強いられてしまう。そこで、村の人々は橙から陰陽師の家系である"草薙家"と"神代家"に相談を持ちかけた。すると、2つの家系の陰陽師は一本の刀に力を込め、その刀で物の怪を斬った。すると、物の怪はたちまち力が弱まった。その隙に巨人は物の怪を攻撃し、ついに倒すことができた。そして、"草薙家"と"神代家"は、物の怪を呪力によって作られた黒い玉に物の怪を封じ、"神代家"に代々から伝わる黒い石を封印の鍵とした。玉は洞窟に封印され、刀は神棚に納められた。もし、その鍵が外されたが最後、人類は・・・・』

ページはここで途切れていた。そこに、ノアは静かに口を開いた。

『そうか・・・・思い出した・・・・この刀は、昔、村に現れた邪神を倒すために使われた刀・・・・その名は"白薙"・・・・人間達の協力がなかったら、あいつは倒せなかった・・・・』

俺は、ノアの話とこの本の内容を聞いて、恐ろしい想像をしてしまった。大昔に出た物の怪は、ノアが言うには邪神・・・・さらに、俺が持っているこのスティック・・・・このスティックは神棚で見つけた刀が変化したもの。そして、神棚で祀られていた刀の名は、"白薙"・・・・最後に、一番恐ろしいのは、黒い玉に封じられたもの・・・・

俺は、思い切ってノアに尋ねた。

「なあ、その邪神の名前・・・・なんて言うんだ?」

『・・・・パンドラ・・・・』

その時、全てが繋がった。

俺と美香が見つけた洞窟は、邪神を封印していた洞窟で、隣にあった神棚は邪神撃破に活躍した刀として祀られていた。そして、洞窟の中にあった黒い球体・・・・あれは邪神を封印していたんだ。そして、球体にはめられていた黒い石・・・あれを取ると封印は解け、中に封じられていた邪神は蘇る・・・・そして、その邪神の名は、パンドラ・・・・俺と美香は、この世に邪神を蘇らせてしまったんだ・・・・

「そんな・・・・そんなことって・・・・」

その時、何かが割れる音が聞こえた。その音は隣の美香の家から聞こえた。

「美香・・・・!!」

俺は急いで美香の元へと向かった。そして、俺はその後、とんでもない光景を目の当たりにする・・・・



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ