第1話「新たな始まり」
ガルタークとノアの戦いから5年・・・・そして、アメリカでベルゼルトとノアの戦いが起きてから1年が経った・・・・日本は平和を取り戻しつつある。
俺は草薙慎也。希望々丘高校の2年生だ。なんの取り柄もなく、ただただ日常を過ごしてる。
「慎也君、一緒に帰ろ?」
教室の自分の席でボーッとしていた俺に、一人の女生徒が話しかけてきた。
こいつは俺の幼なじみの神代美香。俺と違って頭脳明晰で運動神経もいい。しかも友達も多いし、生徒会長もやってる。だから、男女ともに人気がある。正直言って、俺がこいつと幼なじみじゃなかったら、何も接点はない。一緒に帰る理由もない。
「あ、ああ・・・帰るか。」
そうして俺は美香と一緒に帰った。その道中、俺は美香と一定の距離を保ちながら前を先導しながら歩いていた。
「ちょ、ちょっと歩くの速いよ!」
美香の一言で、俺の足は止まった。美香は小走りをして俺に追いついた。
「あっ、ごめん。」
俺は美香に一言謝った。すると、美香は俺と面と向かって言った。
「慎也君ってさ・・・・私と帰る時、いつもちょっと距離取って歩くよね。どうして?」
美香の質問は俺は口ごもり、答えられなかった。俺が距離を取って歩くのは、美香の学校での立場の問題だった。俺が学校一の人気者である美香と一緒に帰っていたなんて噂されたら、美香に迷惑がかかる。俺としてもそれは面倒だし、何より、美香に迷惑はかけたくはなかった。
「ひょっとしてさ・・・・ノアのこと、気にしてるの?」
美香の一言に、俺は美香の両肩をつかんだ。
「あいつは俺の両親を殺した!あんな人殺しのことなんて関係ない!!」
美香は俺の剣幕と叫び声に驚いたのか、怖がるような表情を見せた。
「ご、ごめん・・・・」
美香は俺に一言謝った。
「いや、俺の方こそ・・・・ごめん。」
俺も美香に謝った。
俺が怒ったのは、美香の質問に対するものじゃなく、ノアのことだった。6年前、俺はノアに両親を殺された。と言っても、直接的じゃなく、間接的に、だ。6年前のあの日、俺は小学5年だった。ガルタークが東京に襲来した前の日、俺は盲腸炎で病院に入院していた。手術が終わり入院している時に運悪くガルタークが現れてしまったんだ。その日、父さんと母さんは俺を避難用の救助車に乗せた。逃げようとしたところで、父さんと母さんは病院で忘れ物をしたと言って病院に戻ってしまった・・・・そこに、戦闘中のガルタークとノアが現れ、ノアは戦いの中で病院を破壊してしまった。そのまま父さんと母さんは・・・
その日を境に、俺はノアを憎むようになった。ノアはこの日本を、世界を守っている。それは認める。でも、あの日のことだけは、俺は許せなかった。
『・・・・・』
俺と美香の間に、気まずい空気が出来てしまっていた。
その時、俺の視界に、河原の近くに洞窟のようなものが見えた。
「なあ・・・あれ、なんだ?」
「えっ?」
美香も俺に言われて初めて洞窟の存在に気づいたようだ。
「本当だ・・・・こんなのあったっけ?」
「・・・行ってみるか。」
俺は美香と一緒に河原に足を進めた。行ってみると、洞窟は木の板で入口をふさがれ、その入口の近くには小さく古びた神棚が置かれていた。
俺はその神棚にそっと手を伸ばし、扉を開けた。開けてみると、中には祀られているかのように古びた刀が飾られていた。刀と言っても、時代劇に出てくるような日本刀ではなく、歴史の教科書に出てくるような小さい、大昔の刀だった。
「なんだこれ・・・」
俺がその刀を手に取った時、近くで美香の声が聞こえた。
「慎也君!ちょっと来て!」
俺は咄嗟に刀をジャージの入っていた鞄にしまい、美香の近くによった。
「ねぇ、ここ、穴開いてるよ。」
美香が指を指したところを見てみると、そこには穴が開いていた。その大きさは人間が一人通れるぐらいの大きさだった。
俺達はその穴を通り、洞窟の中に入った。
「まさか、いつも学校に通る道にこんな所があったなんて・・・」
俺がこの洞窟のことに驚いていると、美香は俺の隣でスマホを操作していた。
「何やってんだ?」
「ネットでこの洞窟のこと調べてるんだけど・・・・全然それらしい結果が出ないの。」
ネットでもつかめないこの洞窟・・・・テレビ局にこの情報を売ったら飛びついて来そうだが、俺はこの洞窟がなんなのか大体予想がついた。俺が思うに、この洞窟は昔の人が倉庫に使っていた洞窟だ。
そう考えると、俺はなんだか俺達の行動がバカバカしく思えてきた。俺は美香にこのことを伝えて帰ろうとした。
しかし、
「あっ!あれ見て!!」
美香は洞窟の奥を指差した。洞窟の奥をよく見て見ると、そこには卵のような丸い球体が置かれていた。
「な、なんだあれ・・・・・」
近づいて見てみると、その球体は俺達の身長と同じくらいの大きさだった。そして、その球体には黒い石がはめられていた。
「この石・・・・すごくキレイ・・・・」
美香はその石に吸い込まれるかのように手を伸ばした。美香が石に触れると、石は球体から外れた。それと同時に、球体は真ん中から裂けるように開いた。
「な、なんだ!?」
すると、中から出てきたのは、褐色肌の女の子だった。しかも驚いたことにその女の子は服を身につけておらず、裸の状態だった。
俺は思わずその姿をマジマジと見てしまっていた。すると、そんな俺に美香が鞄で俺の顔を叩いた。
「あだっ!!」
「慎也君は見ちゃダメ!!」
その時、女の子は目をさまし、目を開いてゆっくりと上半身を起こした。
美香は咄嗟に上着を女の子に着せた。そして鞄からジャージを取り出し、女の子に着せ始めた。
「見ちゃダメだからね。」
「わかってるよ・・・・」
俺は後ろを向き、着替えを見ないようにした。
その女の子は見た目から判断するに、俺達よりも年下に見えた。しかし、分からないことがいくつもあった。まず、どうしてこの子がこの洞窟にいたか、次にどうして球体の中にいたのか・・・・分からないことはいくつもあった。
「もういいよ。」
美香の言葉に、俺は振り返った。そこにはジャージを着たさっきの女の子がいた。サイズが合わないのか、少しヨレヨレだった。
すると、女の子はゆっくり口を開いた。
「・・・・お兄ちゃん達が・・・出してくれたの?」
「あ、ああ・・・そうだけど・・・・・」
俺がそう答えると、女の子は微笑んだ。
「・・・・ありがとう・・・・」
このとき、俺は知らなかった。この女の子との出会いが、後にとんでもない出来事に発展するなんて、思っても見なかった・・・・




