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VSズルドーガ④

 光が晴れ、それは目の前に現れる。


 黒い獣の四足と、人間の上半身。頭も人型になっており、何とも中世的な顔立ちだった。


 そして、背中には二枚の翼。

 

 現実のモンスターに例えるなら、ケンタウロスに翼が生えた感じか。

 アクションゲーの「ヘル・デーモンズ」終盤に出てくる天使たちにも似た顔だ。


 しかし、その目には黒目は無く、全てが白く塗りつぶされている。

 生命を感じないそれは、まるで彫刻のようだった。


 そのズルドーガは前足を二本折るようにして項垂れており、翼もへたれている。

 どうやら、合体直後は思うように動けないらしい。


「ここからが本番って訳ね……!」

「テンリミ、奴の行動パターンは!?」

「フェーズが変わってんだ、さっきまでの情報はあまり意味はないかな。ただ、紫の波動には注意しな、来栖みたいに持ってかれるぞ」

「それだけ分かれば十分! テンリミ、面をかせ! 今のうちにこちらも体制を立て直す、作戦会議だ!」


 迂闊に攻撃すれば手痛い反撃がある可能性がある。

 まずはこちらも体制を整えるのが得策か。


「わかった」


 俺達突発レイドのメンバーは、佐々木、馬場、ユキ、そしてアイアンナイツのメンバー十名だ。


 佐々木……二刀流の風魔術スキル使い。メインアタッカー。

 馬場……バフスキルを使いこなすバッファー。サポート。

 ユキ……氷魔術スキルを使うフェンサー。サブアタッカー。

 テンリミ……剣士、闇魔術スキル使い。アタッカー。

 

 そして、アイアンナイツメンバーはアタッカー二人、サブアタッカー二人、遠距離アタッカー四人、ヒーラー二人。


 しかし、彼ら十人のほぼ全員が満身創痍だ。恐らく地上での戦闘がかなり激しかったらしい。ピンピンしている佐々木が異常なのかもしれない。


 アイアンナイツは精鋭部隊のようで、俺なんかよりもスキルもレベルも高そうだが、そこまで頼ることも出来なさそうだ。


「安心したまえ、いきなりソロの君にパーティを纏めさせようなどと思ってないさ」


 そう言って、佐々木は笑みを浮かべる。

 戦力を分析していたのが見抜かれていたようだ。


「アイアンナイツの方は私が指揮する。私をメインアタッカーとした正面部隊、斎藤をリーダーとした中・遠距離部隊、馬場をリーダーとした後方支援部隊の三つに分ける」

「俺はどうすんだよ」

「君たちは遊撃として戦ってくれ。恐らく奴の攻撃は近・中・遠すべてを網羅する。私達はそれぞれのラインを守る必要があるから、君たちが臨機応変に対応してくれ」

「いいのかよ、それだと俺がとどめを刺す可能性が高いぜ?」


 すると佐々木は笑う。


「君はフェアな男だな! 安心しろ、最後にとどめを刺すのはこの私だと決まっている! 今日の星座占いでてんびん座が一位だったからな!」


 佐々木は自慢げに胸を張る。


「また星座占いですか……初対面の人に言ったら引かれますって」

「いや、結構面白いじゃん、その考え。いいぜ、遊撃は任せてくれ。ユキ、後方支援頼む」

「え、ええ……!」


 ユキは少し緊張気味に返事をする。


「今度は邪魔するななんて言わないからよ」

「わ、分かってるわ。ここまで来たら、絶対倒して帰りましょう」

「おう!」

「よし、配置につくぞ!」

 

 そうして、俺達はズルドーガから一定の距離を保ちながら、配置につく。

 先頭に佐々木のパーティ、中央に馬場の支援パーティがやや横に広がる形で配置し、後方に斎藤の中・遠距離パーティが並ぶ。


 これで、範囲制限のあるバフやヒール系のスキルも上手く全体に飛ばせる。


 効果範囲は半径約70メートル。

 これを超えると支援が受けられない。回復もバフも。


 この範囲の中で、俺達は遊撃を行うのだ。


『グオオオオオアアアアアアアア!!!』


「「「!!」」」


 瞬間、ズルドーガの雄たけびが上がる。

 目覚めたのだ。八王が。


『眠りを妨げた者はどれだ……? 嘆かわしい……! 我の――』


「行くぞ! 今日がダンジョン史始まって以来、八王の一角が初めて陥落する日だ! 言葉など後で録音を考察連中にでも聞かせてやれ! 突撃だ!!!」


 そう言って、佐々木は誰より早く一気にズルドーガへと駆けていく。


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