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人工物

「おら!」

「ギギギ……!!」


 俺は甲殻の隙間から剣を突き刺し、一気に脚を切り落とす。


 脚を失い、バランスを崩したパラサイトはその場にひっくり返る。

 それを見逃さず、腹の柔らかい部分に剣を突き刺し、そして。


「<闇火球>!」

「ギギギギィィィ!!!」


 内部からの闇の炎。

 パラサイトは最後のチリのかけらとなるまで一気に燃え上がり、完全に消滅する。


「ふぅ……」


 わずかに残ったチリが光となって消えていく。


 いやあ、スキルをもう存分使えるのはいいなあ!

 というか、散々隠してはきたが、そもそもすでにユキとの関係でマークされてる可能性もあるし、別にバレても良い気がしてきた。


その様子を後ろで眺めていたシズネが、唖然とした表情で呟く。


「うそ、この人本当に最近潜り始めた人なんですか……?」

「そう、やばいよねこの人。味方につけておいた方がいいわよ」

「はい……いや、でも心強いです! よろしくお願いします!」


 だいぶ森も進み、次第に虫型の敵が多くなっていく。

 まさに密林。そのうち蛇型のモンスターも現れそうだな。


 蟻のようなモンスターや蜘蛛のようなモンスターが、ワラワラと集まってくる。

 それを、剣と炎で切り刻んでいく。


「三層だけは私無理なのよね……」


 ユキは俺が戦う姿を見ながら唐突に呟く。


「え、虫がですか?」

「そうなの……!! ただでさえハエとかでも気持ち悪いのに、人間大の虫とか地獄でしかない……!」


 ユキは絶望の表情を浮かべ、震える体を抑える。


「えーいいじゃん虫。数が多いから経験値効率もいいし、硬い甲殻は防具とかにもなる」

「ゲームの話でしょ! このリアルで、目の前にカサカサと動き回る虫がいると思うと……だめなのよ、本当に……!!」


 ユキはいつになく弱気な顔で体をくねらせる。


「はは、まあ苦手があった方が可愛げがあるだろ」

「いらないわよ、探索者に……」


 そうして探索を続けていると、だんだんと石造りの床が現れ始める。


「人工物だな……この辺りに何かあるのか?」

「あるとすれば、それが今回の八王に関係してるかもしれないわ」

「はい……私の彼氏もこちらの方に探索に出ていたのは間違いないです。きっとこの先で……」

「じゃあ気を引き締めなおさないとな。油断したらすぐに死んじまう。こういうところは、毒なんかも要注意だしな」


 2人は静かに頷く。


 しばらく石造りの道を歩くと、開けた場所に出る。


「おおおお!! 神殿じゃね!? いや、墓か!?」


 きたー! 森の中の神殿! 墓! 絶対なんかあるだろ!


「待って、誰かいる!」

「?」


 ユキに止められ、木の影に隠れる。

 言われた方を見ると、そこには何人かの集団がいた。


「あれ……あの鎧! もしかして、”アイアンナイツ”!?」

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