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もう一体

 俺は剣を構え直し、オルトロスに向けて声を張りあげる。


「さあ、かかってこいよ!」

「ジオオオオオオオ!!!」


「くっ!」


 オルトロスの雄叫びに、ユキ達が耳を押さえる。


 すると、オルトロスは全ての足を一度湖の中へと呼び戻していく。

 水飛沫が上がり、目の前には何もない湖が戻ってくる。


「一旦態勢を立て直すか。なるほど、水の中は俺たちにとっちゃ死角だ。気をつけろ、どこから出てくるかわからねえぞ」

「わかってるわ……それでさっきもやられた」


 俺たちはじっと水面を見つめる。

 波打っていた水面は徐々に落ち着き、凪が訪れる。


 しかし、待てどオルトロスは姿を現さない。


 油断するな、精神を集中させろ……不意を打たれるな。

 どこからくる——。


◇ ◇ ◇


「結局あれから出てこなかったね」

「なんで逃げるんだよ〜戦いたかったのに……」


 俺はガッカリと肩を落とす。

 まだタコ型は戦ったことがなかったから、どんなものか試したかったのに。


「まあ、オルトロスは臆病なモンスターだから。何はともあれ助かったわ、ありがとう」

「いいってことよ。で、そっちは?」

「!」


 端っこの方で少し怯えた表情をした少女は、俺の視線にびくりと肩を振るわせる。


「この子は……」

「訳ありか。ユキが三層なんかにいるんだ、それなりの理由があるんだろ?」

「まあね、そうなるわ」

「配信のマジックアイテムもないし、結構ガチ目?」


 ユキは静かに頷く。


 なるほど……。ダンジョンにはモンスターもいればトラップもある。デッドラインがあるとはいえ、何があるかわからないのは俺がここまで経験してきた色々な出来事が物語っている。


 俺はそれを全力で楽しんでいるが……何かの拍子に取り返せないような過ちに足を踏み入れてしまう探索者がいても不思議じゃない。


 ユキの隣にいる少女は、まさしくそんな様子に見えた。


 少女は節目がちに、恐る恐る俺の方を見る。


「シズネちゃん、テンリミの実力は見ての通りよ。協力してもらう? 私は構わないけど」

「この人なら……彼のこと助けてもらえる……かな」


 彼……?


「わからないけど、さっきのクランの人たちみたいに興味本位じゃなく、ちゃんと手伝ってくれると思うよ」

「わかった。ユキちゃんが信じてる人なら、きっと大丈夫」

「話はまとまったか?」

「ええ、テンリミ。君の力を見込んで手伝って欲しいの」

「何を?」


 ユキはゆっくりと口をひらく。


「ダンジョンの八王の一体に関連する事件よ」

「!」

「アイアンナイツや、考察系の探索者も動き出してる。すでに被害者も出ているの」

「それが……」


 ユキは頷く。

 このシズネって子が八王の被害者……か。

 なるほど、王の情報を得るためにしつこく付きまとわれて心身ともに疲弊してるのか。


「どう、手伝ってくれる? もちろん、ただとは言わないわ。私だけじゃ悔しいけど無理。けど、デュラルハンと打ち合った君なら、何かできるかもしれない。お願い、手伝ってくれる?」


 愚問だな。


「当然。王と戦えるなら断る理由はねえ! 聞かせてくれよ、詳しい話を」

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