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【書籍化・コミカライズ】成り上がり英雄の無人島奇譚 ~スキルアップと万能アプリで美少女たちと快適サバイバル~  作者: 絢乃
第六章:クラス

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097 協力要請

 毒嶋及び〈ハッカーズ〉の蛮行にどう対処するか。

 日本ならともかく、この島においてそれは非常に難しい。


 まずは外圧によって改善を促すことにした。

 具体的に言うと、グループチャットで奴等の蛮行を暴露した。

 文字だけだと信憑性に欠けるので、毒嶋と交わした会話の音声も公開。

 そう、実は密かに録音しておいたのだ。


 これによって、毒嶋や彼の仲間たちには非難が集中した。

 人でなし、人間のクズ、レイプ魔、犯罪者……色々な罵声が飛ぶ。


 対する〈ハッカーズ〉からは毒嶋が回答。

 自分たちの蛮行をあっさり認め、さらに大量の動画をアップ。


 動画の内容は嫌がる女子に性的暴行を加える凄惨なものだった。

 男子の下卑た笑い声と女子の悲鳴が耳にこびりつく。

 とても人間の沙汰とは思えない鬼畜の所業の数々に吐き気を催した。


『防壁がある限りお前達がどれだけ吠えようと関係ない。俺達に関わるな。そうすれば俺達が日本に戻る時にお前らも混ぜてやるから』


 それが毒嶋の最後の発言だった。

 日本に戻る方法を見つけた、という設定を最後まで貫き通すようだ。

 もしかしたら本当に帰還の方法を知っているのかもしれない。


「防壁は厄介だなぁ」


 帰路の道中、俺は助手席で呟いた。


「防壁がある限りどうしようもないですよね、残念ですが……」


 運転席の美咲は苦悶の表情を浮かべている。


「まぁ、そうだな」


「風斗の力で防壁をすり抜けられないの?」と由香里。


「無茶を言うな」と苦笑い。


 俺達がどれだけ殴る蹴るの暴行を加えても防壁は壊れない。

 刀で斬ろうがプラスチック爆弾を起爆しようが同じだ。


「じゃあ毒嶋たちが改心しない限りどうにもならない?」


「ですね……」と答える美咲。


 俺は何も言わなかった。

 どうにもならない、とは思っていないからだ。


 打つ手は、ある。



 ◇


 城に着くと自室に籠もった。

 由香里も気が乗らないとして自室へ行き、美咲は料理をすると言って厨房に。


「たぶんできるはずだが、自信ないんだよなぁ」


 〈ハッカーズ〉の問題に対する策はある。

 俺の思っている通りの仕様なら。


「ぶっつけ本番でやるか? いや、それは危険だ。問題は防壁だけじゃない」


 力尽くで〈ハッカーズ〉を懲らしめる場合、問題は二つある。

 一つは防壁で、もう一つは戦力差だ。


 〈ハッカーズ〉で性欲の限りを尽くしているのは約30人の男子。

 毒嶋がグループチャットで人を集める前から所属しているメンバーだ。

 防壁を突破してもこいつらに負けたら意味がない。


 にもかかわらず、俺達の頭数は6人。

 それも対人戦の経験がない一般的な高校生5人と女教師だ。

 仲間に栗原がいれば話は別だが、いないので勝利は絶望的である。


「援軍が必要だな」


 俺は他所のギルドマスターに協力を求めることにした。

 すると、ここで新たな問題が発生する。


 誰に協力を求めるのが正解なのか。


 闇雲に声を掛ければいいというわけではない。

 情報の漏洩に気をつける必要がある。

 毒嶋に悟られたら対策されるからだ。


 リスクを考えた場合、声を掛ける相手は一人のみ。

 口が堅く、作戦を実行できる距離にいて、仲間の数がそれなりに多い。

 もちろんアホではダメだし、寝返る可能性がある奴も避ける必要があった。


 これらの条件を満たす候補をピックアップ。

 ギルドの数はいくつもあるが、選ばれた候補は一人だけだった。

 〈サイエンス〉の増田だ。


『増田先生、ご相談があるのですがよろしいでしょうか』


 俺は個別チャットで増田に話しかけた。


『いいよ、毒嶋君の件かな?』


 増田からの返事はすぐに届いた。

 しかもこちらの用件を察している様子。

 俺は「そうです」と返し、協力を要請することにした。


『――と、こういう作戦で囚われている人を救出したいと考えています。ただ、俺達だけでは数が少なくて太刀打ちできません。また、この作戦が仕様的に大丈夫なのかも分かっていません。それでも協力していただけないでしょうか』


 包み隠さず話す。

 増田に断られたら諦めるつもりだからだ。

 まともな援軍がない中で強行するつもりはなかった。

 毒嶋の件には胸を痛めているが、必要以上のリスクは冒せない。

 それが俺の考えだった。


『結論から言うと協力させてもらいたい。僕も毒嶋君の件は可能なら対処したいと思うから。ただ、漆田君の救出作戦に何人が協力できるかは分からない。無理強いはできないからね』


 ごもっともだ。

 増田の発言はまだ続いた。


『漆田君も言っていた通り、相手に作戦内容が漏れたら対策されかねないから、救出作戦の参加者を募る=了承を得るのは作戦開始の直前になる。もしかしたら反対多数で全く参加者が集まらないかもしれない。そのリスクは事前に承知してもらいたい』


 俺は「分かっています」と返した。


『また、漆田君の懸念している仕様的に大丈夫なのかという点だけど、これについてはまず間違いなく大丈夫だと思う。少なくとも仕様が変わる前は大丈夫だった』


 増田は全面的に協力してくれるようだ。

 一気に戦力が高まったことで、救出作戦が現実味を帯びてきた。


『作戦はいつ実行しますか? 俺達のほうはいつでも大丈夫ですが』


『今日にしよう』


 増田は即答だった。

 減ったとはいえ〈サイエンス〉は50人規模のギルド。

 もう少しじっくり動くのかと思った。


『今日ですか? 別に明日以降でも問題ないですよ』


『いや、今日がいい。毒嶋君がアップした動画によって皆が憤っている。今日なら多くの人が義憤に駆られて賛同してくれると思う。逆に明日以降だと、毒嶋君に嫌われたら日本に戻れなくなるかも、という不安から嫌がる人が増えるだろう』


 なるほど一理ある。


『では今日決行するとして、作戦の詳細を詰めていきましょう』


『そうだね』


 俺と増田は1時間ほどかけて計画を練った。

 その頃になると、もはや救出作戦の成功を確信していた。

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