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【書籍化・コミカライズ】成り上がり英雄の無人島奇譚 ~スキルアップと万能アプリで美少女たちと快適サバイバル~  作者: 絢乃
第十章:絶望

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153 絶望

「CGじゃないのか……?」


 そう呟かずにはいられないほどの信じがたい光景だった。

 凄惨(せいさん)すぎるあまり呆気にとられて絶望することすらできない。

 そのくらいに衝撃的だった。


「あ、あれ! あそこ!」


 カメラが適当な場所にズームした時、麻衣が声を上げた。


「あの瓦礫がどうかしたのか?」


 麻衣が指したのは逃げ惑う人々と瓦礫の山。

 他の場所と相違ないように見えたが……。


「あれ、私の家だ!」


「マジかよ」


「うん、絶対にそう! そんな、私の家が……」


 麻衣は膝から崩れ落ちた。


「この様子だと私の家も厳しそうっすね……」


 燈花の声も暗い。


「家もそうだけど、家族が無事かも心配」と由香里。


 美咲が「シゲゾー……」と呟いた。


『このような被害が関東全域に及んでいます!』


 アナウンサーの緊迫した声が聞こえる。

 テレビの映像は東京からどこかの港町に変わった。

 津波に押し潰される様子が流れている。


「関東全域だと……?」


 俺はSNSを確認した。

 トレンドワードの上位を災害関連のワードが占めている。

 例えば『東京沈没』や『関東壊滅』、『日本終了』など。


「いったいテレビやネットが見られない間に何が起きたんだ」


 手分けして情報を収集する。

 しかし、これが思ったほど円滑には進まない。

 日本のニュースサイトは軒並み災害発生前で更新が止まっており、テレビの生中継では災害後の被害状況についてばかり報じている。


「あった! いきなり大地震が起きたんだって!」


 麻衣が情報を見つけた。

 彼女はスマホの画面をテレビに映した。


 開かれているのは海外の大手ニュースサイトだ。

 機械翻訳によって記事を日本語に訳してある。


「なるほど、こういう時は海外のメディアを参考にするのか」


「さすがっす麻衣!」


「ありがと! ……って、それより内容を見て! やばいよこれ!」


 俺たちは記事を読んだ。

 それによると、突如として関東地方を大地震が襲ったという。


 地震の発生時刻は14時00分。

 もっと言えば、手島重工がゲートを開いた瞬間だった。


 この地震、揺れ方が通常とは違っていたらしい。

 一般的な大地震と比較した情報が色々と書かれている。

 ただ、その点はどうでもいいのでスルーした。


 そして、最後。

 結論の部分を見て絶句した。


『今回の地震はTYPプロジェクトが原因であると考えるのが自然だろう』


 麻衣が他のサイトを開く。

 そこでも同じような論調で書かれていた。

 もう一歩踏み込んで、「TYPプロジェクトを中止するべき」との意見も。

 他には、「手島重工の技術力だけでは足りない」として、世界的に協力すべきだという記事もある。

 とにかく、大手メディアはTYPプロジェクトが原因だと騒いでいる。


 また、この意見は日本でも大半を占めているようだった。

 SNSでTYPプロジェクト関連のワードを調べると一目瞭然だ。


『手島重工のせいで日本が潰れた』

『TYPプロジェクトが引き越した大災害』

『地震はゲートを開いたせい』


 こうした発言が目立つ。

 誰もが手島重工に対して攻撃的で批判的だった。


 国民が批判的になれば政治家も手の平を返す。

 既に一部の野党議員が「地震の発生原因がTYPプロジェクトにあると判明した場合、それを後押しした政府にも当然ながら責任がある」などと発言していた。

 与党議員もSNSに投稿していた手島重工に関する好意的な発言を削除している。


「これはまずい流れだな……」


 TYPプロジェクトは俺たちの希望だ。

 日本に帰るにはこれしかない、と誰もが思っていた。

 それが今、完全に潰えようとしている。


「今は身内の安否が気になりますかな!」


 琴子がリモコンを操作して生中継に戻す。


「そうだな……」


 両親の顔が脳裏によぎる。

 その瞬間、不安が込み上げてきて泣きそうになった。


 ◇


 絶望の中、俺たちは〈テレポート〉で城に戻った。

 グループチャットを見る限り他のギルドも拠点に帰っている。


 ムードは絶望的だ。

 ヒステリックになる余裕すらなかった。

 この世の終わりが表現されていた。


「お食事のご用意をしますね」


「手伝います、美咲さん」


 美咲と由香里が厨房に向かう。

 麻衣は真っ直ぐ部屋に戻り、燈花は食堂でペットたちと過ごす。


「私はお風呂に入りますかな! こういう時はさっぱりするのが一番ですとも!」


「ならばお姉さんも付き合おう!」


「おほー! いいですねぇ!」


 涼子と琴子が大浴場に向かう。

 この二人も普段より元気がない様子だった。


(俺はどうするかな……)


 城に入ってすぐの場所でポツンと立つ。

 何をすればいいか分からない。


「とりあえず小便でもしておくか」


 廊下を歩いて一階のトイレに向かう。

 移動の最中もスマホで日本の様子を調べていた。


(酷くなる一方だな……)


 被害状況が明らかになるほど、その規模の大きさに衝撃を受ける。

 地震発生から約6時間しか経っていない今ですら既に過去最大級だ。

 関東全域で建物が崩壊し、沿岸部の都市は大半が津波で壊滅。


 推定される死者の数は数十万。

 下手すると数百万に及ぶ可能性もあるという。

 死傷者ではなく死者の数でそれだ。


 建物の倒壊や火災、津波、エトセトラ……。

 どれをとっても過去に例を見ないレベルだ。


 日本中が絶望した東日本大震災ですら比較にならない。

 明治以降最大の被害をもたらした関東大震災をも軽く凌駕している。


 当然、被害は今後も拡大していく。

 最終的にどうなるのか、今の俺には想像もつかなかった。


(今日はもう、何も考えないで過ごすしかないな)


 小便を済ませた俺は、何度もため息をつきながら自室に向かう。

 その時、スマホが鳴った。


「もうご飯ができたのか?」


 えらく早いな、と思いながらスマホを確認する。

 届いていたのはお知らせだったが、相手は美咲ではなかった。

 Xからだ。


9月6日に書籍第三巻が発売します!


挿絵(By みてみん)


この表紙が目印です!

左は涼子、右は燈花となっています☆


挿絵(By みてみん)


魅惑的な挿絵を再掲!


また、特典SSの情報が公開されました!

店舗特典は以下の3本になっています。

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お財布に余裕がございましたら、

何卒1冊、応援していただけると助かります。


何卒よろしくお願いいたします。

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