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【書籍化・コミカライズ】成り上がり英雄の無人島奇譚 ~スキルアップと万能アプリで美少女たちと快適サバイバル~  作者: 絢乃
第九章:サバイバル

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141 二日目の朝

 昔の人が行っていたという害虫対策の蚊遣り火。

 その効果は流石という他なくて、快適な夜を過ごすことができた。


 そして夜が明け、サバイバルダンジョンの2日目――。


 朝は昨日の残り物である猪肉を食べた。

 脂身が甘くて美味いが、塩がないので薄く感じる。


「あースマホのない生活ってきっつい!」


 木の串に突き刺した肉を頬張りながら叫ぶ麻衣。

 彼女は誰よりもスマホの依存度が高いので大変そうだ。


「テレビがないのもきついっすー!」


 隙あらばテレビを観ている燈花が吠える。

 今の彼女なら大嫌いなニュース番組ですら楽しめそうだ。


「あ! スマホがないとTYPプロジェクト第二弾の状況が分からないじゃん! 私らが無人島(ここ)で遊んでいる間に始まっちゃうかも!」


「本当っすよ! まずいっすよ風斗!」


 麻衣と燈花が血相を変えて言った。

 俺は笑いながら「問題ないよ」と返す。


「実はこの島での5日は現実世界の5分なんだ。だからダンジョンを攻略して元の島に戻った時、日時は8月18日の昼ってわけだ」


「え! そうなの!?」


「そんなわけないだろ」


「違うんかい!」


「このダンジョンの参加者をグループチャットで募った時にも書いたんだけど、手島重工からTYPプロジェクト第二弾の実施日について発表があったんだ。それによれば24日以降になることは確定で、おそらく24日か25日になるとのことだ。23日以前は絶対にない」


「そうなんだ。思ったより時間がかかるんだね。生成器や増幅器はもう修理済みなんでしょ?」


「機械じゃなくてスケジュールの調整が大変らしい。自衛隊だか海上保安庁だか知らんがそういうのも動員するし、今や国家プロジェクトだからな」


「なるほどねぇ」


「燈花はともかく麻衣がそのことを知らないのには驚いたな」


 麻衣は「いやぁ」と舌を出しながら頭を掻いた。


「風斗が頼もしいから丸投げでいいかなぁって」


「おいおい、しっかりしろよ情報担当」


「えへへ」


 そんなこんなで朝食が終了した。


「今日はどうするかね漆田少年!」


「疲れない程度に動き回って薪や果物を調達しよう。あと、何かを作る時に備えて蔓を集めて紐にしておきたい」


「了解! 元気になったお姉さんがしゃかりきに働くよー!」


「いや、しゃかりきには働かないでくれ」


 涼子が「えっ」と固まった。


「12時にスコアの測定がある。朝から頑張り過ぎて疲れられると悪影響が出かねない。だから測定が終わるまでは疲れないことを最優先に頼む。何なら作業をしないで駄弁っていてくれてかまわない」


 俺達の目標は総合1位だ。

 既に後塵を拝している以上、12時のスコア測定は厳しく攻めたい。


「じゃあ私は休憩するっす! たぶんみんなよりスコアが低いっすから!」


 燈花がヘルスバンドを見せる。

 スコアは69で、たしかに7人の中で最も低かった。

 他は74~76で推移している。


「燈花、体調が悪いのか?」


「大丈夫! ただの生理っすよー!」


 平然と言ってのける燈花。

 流石に「ただの生理なら大したことねぇな!」とは返せない。

 少し面食らったあと、俺は苦笑いで答えた。


「ま、まぁ、無理しないでくれ」


「大丈夫っすよ! 私、軽いほうっすから!」


「そうか……」


 ウチの女性陣は俺を男扱いしていないな、と思う。

 生理と言ったり裸を見せたりすることにためらいがない。

 今でも恥ずかしがるのは美咲と由香里くらいなものだ。


「とりあえず疲労を最小限に抑えるため薪と蔓だけ集めようか」


「了解ですともー!」


 琴子が自分のリュックから地図タブレットを取り出した。

 それを使って安全なルートを考えようとするのだが――。


「なんだこれ?」


 地図上に宝箱のアイコンが表示されていた。

 アイコンは北東、北西、南東、南西の四カ所にそれぞれ一つずつある。


「きっとすごいお宝があるのですよ! 行きましょう風斗さん!」


 大興奮の琴子。

 ヘルススコアもグングン上がって80を超えた。

 彼女ほどではないが、他のスコアも軒並み1~2点は上がっている。


「北西の宝箱はここから近いし行ってみるか」


「ひゃふー! 楽しみですともー!」


 右手を突き上げて跳ねる琴子。

 いよいよヘルスコアが90を超えた。


「涼子もついてきてもらえるか? 宝箱の場所にはシマヘビが出るみたいだから念のためにな」


「任せろ少年! 実はお姉さんな、ヘビの捌き方を熟知しているのだ!」


「マジで万能だな……」


 ということで、俺は琴子と涼子を連れて宝箱アイコンの場所へ向かった。


 ◇


 15分ほど歩いて目的地に到着。

 俺達の寝床がある場所と大差ない森の中だ。


「これがアイコンの正体だな」


「やっぱりお宝ですともー!」


 そこには大きな宝箱があった。

 木製で、なかなか年季の入った見た目をしている。


 さっそく開けてみると、中には空のペットボトルが入っていた。

 容量は2Lと500mlで、どちらもちょうど人数分ある。


「これがお宝……? なんだか拍子抜けですかな?」


 首を傾げる琴子。


「どう見ても空のペットボトルだもんな」


 手に取っても変化しない。

 ただ綺麗なだけの空のペットボトルだ。


「いいではないか! 水筒代わりになるぞ!」


「そういう風に使うわけか」


 少し納得。


「サバイバル生活に無駄なものはない! 何だって使い方次第で化ける可能性を秘めているぞ少年!」


「参考になるよ」


 俺達はペットボトルを持って帰ることにした。

 空にしておいたリュックの中に放り込んだ。

 作業が済んだらさっさと帰路に就く。


「思ったんだけどさ――」


 歩き始めて間もなく、俺は涼子に言った。


「――2Lのペットボトルはシャワーに使えないか?」


「シャワー?」


「底のほうにいくつか穴を開けるんだよ。キャップを緩めている時だけ水が出るしいいんじゃないか」


 これは小さな頃にテレビで知った災害時のテクニックだ。


「ペットボトルシャワー! たしかに名案だ! しかし少年! そんなことをする必要はあるのかい?」


「というと?」


「シャワーを浴びたかったら鍋の水を体に掛ければよくないだろうか! 片手鍋は手桶としても利用できる! まさに昨夜はそうしたではないか!」


「たしかに……。するとペットボトルシャワーは微妙か」


「貴重なペットボトルに傷をつけるほどではないとお姉さんは思う!」


「なるほどな」


 涼子の言う通りだと思った。


 ◇


 のらりくらりと過ごして12時を迎えた。


「――! 今なんかチクッとしなかったか?」


「したっす!」


「私だけじゃなかったんだ!」


 左の手首に電流が走った。

 おそらくそれが測定の合図だろう。


 俺はリュックからスコアや順位の記載された紙を取り出す。

 案の定、情報が更新されていた。

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