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【書籍化・コミカライズ】成り上がり英雄の無人島奇譚 ~スキルアップと万能アプリで美少女たちと快適サバイバル~  作者: 絢乃
第八章:ゲート

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120/201

120 キャンプ

 手島の会見について、他所のギルドはどう感じたのだろうか。

 答えを知るべくグループチャットを開くと、既にその話題で盛り上がっていた。


『日本に帰れるぞ!』

『手島重工マジで頑張れ!』


 大半が会見を観ていた。

 見逃した連中も動画サイトで確認済みだ。

 ご丁寧に手島重工が配信の様子をアップしていた。


 皆の反応は良好。

 だが――。


『応援しているけど、あんまり期待できないんじゃないか』

『帰れるとしても数年後とかになりそう』

『別の階層に行くとか、よく分かんないけど難しそうだよな』

『現実的に考えたらちょっと……ねぇ』


 ――期待度はそこまで高くない。

 一言で表すなら「応援はしているが、まぁ無理だろう」になる。

 俺達も同じような意見だ。


 また、女子の大半は手島の容姿で盛り上がっていた。

 SNSでも「イケメン過ぎる!」との声で溢れている。

 トレンドランキングのトップは「イケメン部長」になっていた。

 もちろん手島のことだ。


 果たして手島重工はこの島への侵入を成功させられるのか。

 そして、俺達は無事に日本へ帰ることができるのだろうか。


 期待と不安がせめぎ合う中、俺達は会議室を後にした。


 ◇


 城門から出てすぐの草原にやってきた。


「キャンプですよー! キャンプですともー!」


 重装備の琴子がキャンピングカーから下りる。


「遠目に拠点が見えるせいでキャンプ感が薄いっすよー! もっと遠くに行きたいっすよー!」


 不満を言いながら後ろに続く燈花。

 琴子と違って手ブラだ。

 彼女の荷物はゴリラのジロウが持っていた。


「気持ちは分かるけど徘徊者が出るかもしれないからな」


 今日と明日、俺達の徘徊者戦はお休みだ。

 しかし、他所のギルドは今日も徘徊者戦があるはず。


 というのも、他所は昨日、4時まで戦っていたのだ。

 俺達がゼネラルを倒した後も敵が消えることはなかった。


 おそらく休みになるのは俺達だけだ。

 そうなると、拠点から離れすぎると徘徊者に遭遇しかねない。


「グループチャットでゼネラルを倒したって言わなくていいの?」


 麻衣はパンパンに膨らんだリュックを地面に置いた。


「2時以降に報告する予定だ」


「そのほうがいいかもね。余計な期待を抱かせずに済むし」


 皆でテントの設営を始めた。

 各々が事前に購入しておいた物を組み立てていく。


「うわ! 風斗のテント、しょぼいやつっすよ!」


「テントを組み立てるなんて作業、俺には面倒なだけだからな」


 テントには色々な種類がある。

 どれを選ぶかは各人の自由になっていた。


 俺が選んだのはいわゆるポップアップテント。

 円盤形の状態で折りたたまれていて、一瞬で展開する優れ物。


 一方、琴子や燈花は本格的なものを選んでいた。

 特に燈花は、ペットと寝られるよう大型のファミリーサイズだ。


「やっぱり俺はテントよりあっちのほうがいいなぁ」


 と、キャンピングカーを見る。

 人間7人とゴリラ1頭を乗せられるだけあって大きい。


 レンタル代だけで250万もかかった。

 アビリティ〈レンタル割引〉の効果でレンタル代が半額なのにだ。

 つまり通常だと倍の500万……スポーツカーより高い。


 高いだけあって機能は充実している。

 中には品のいいベッドがあり、シャワー室も完備。

 キッチンもあるし、テレビだって搭載されている。

 空調も抜かりない。

 徘徊者がいなければこの車で過ごしたいと思えるほどだ。


「キャンピングカーのベッドって一つしかないよね?」


 麻衣が尋ねてきた。


「ああ、一つだよ。大きめだから二人でも使えると思うが」


「お! ならお姉さんと寝ようか! 漆田少年!」


 そう言って何故か服を脱ごうとする涼子。

 もはや日常茶飯事なので誰も気にしていない。

 琴子ですら平然としていた。


「テントの設営が終わったことだし、ベッドを誰が使うか決めておきたいな」


「私はテントがいいかなー」


「お姉さんもテントがいい!」


「私もっすー!」


「同じくですともー!」


 女性陣が次々にテントを希望する。


「残ったのは俺と美咲、あと由香里だが」


「私は車がいいです」


「私も」


 二人はキャンピングカーでの車中泊を希望しているようだ。

 もちろん俺も。


「ならじゃんけんで決めるか」


「分かりました」


「いいよ」


「よし始めるぞ! じゃん、けん……!」


 同時に手を出す。

 結果――。


「わるいな、車はいただくぜ!」


 ――俺が勝利した。

 さっそく外に出した荷物を車に戻す。


 作業を終えて車から出ると、すぐ外に美咲がいた。

 愛犬のジョーイも一緒だ。


「お、どうした美咲?」


「皆様におつまみでも振る舞おうかと思いまして」


「それは名案だ。気が利くぜ」


 美咲が入れ替わりで車に乗り込んだ。


(俺は何をしようかな)


 すぐ傍では涼子と麻衣が巨大な焚き火を作っている。

 キャンプファイヤーなどと言っているが、車やテントまで燃えそうだ。


 燈花と琴子は離れたところで動物と遊んでいた。

 燈花はタロウに、琴子はウシ君に乗って周囲をうろうろ。

 その後ろにジロウが続く。

 ジロウの両肩にルーシーとコロクが乗っていた。


(星でも見て過ごすか)


 適当な場所にキャンプチェアを置き、そこに腰を下ろす。

 空気は澄んでいて美味しく、夜空には無数の星が煌めいていた。


「うむ、悪くない」


 もう少し寒かったら暖かいコーヒーが合うだろう。

 そんなことを思っていると。


「隣いい?」


 由香里がやってきた。


「もちろん」


「ありがとう」


 由香里はスマホを取り出し、キャンプチェアを召喚。

 どうやら事前の準備には含まれていなかったようだ。


「何をしていたの?」


「空を見ていたんだ。満天の星が綺麗だよ」


 由香里は俺の隣に座って空を見上げた。


「本当だ、すごく綺麗」


「だろー」


「空を見るなんて風斗は大人だね」


「そんなことないだろう」


 苦笑いで否定した。


「風斗、キャンプは楽しめている?」


「ああ、それなりにな。どうしてだ?」


「あんまり好きじゃなさそうだったから」


「心配してくれたわけか」


「うん」


「ありがとう。でも大丈夫だよ。たしかにそこまで好きではないけど、皆と一緒なら何だって楽しいものさ」


「よかった」


 そこで会話が途切れる。

 最初の頃は気まずさを覚えたが、今は気にならない。

 どちらもコミュ力に難があるので仕方ないと割り切れた。


「由香里、手島重工の研究は上手くいくと思う?」


「分からない。でも、上手くいってほしい」


 俺は「だよなぁ」と同意。


「上手くいって日本に戻れたら何をしたい? 両親に無事を知らせるとか、そういうのが終わった後の話な」


「風斗の両親に挨拶する」


 まさかの回答だった。


「え、俺の親に挨拶するの?」


「うん」


「なんで?」


「だって――」


 由香里が話している最中だった。


「お姉さんも混ぜてくれたまえー!」


 涼子が駆け寄ってきた。

 彼女は由香里の膝に「よいしょ!」と座る。


「涼子、重い」


「失礼! お姉さんはおっぱいが大きいからなぁ!」


「むっ」


 由香里は涼子を抱えたまま立ち上がった。

 美咲の料理効果もあって軽々と持っている。


「ほわっ!? 由香里、何をする!」


「胸が大きいのをひけらかすのはダメ」


 ポイッと涼子を投げ捨てる由香里。


「アイタタァ! お姉さんの骨盤がゆがんじゃったよ!」


 由香里は何も言わずにぷいっと顔を背けた。


「お待たせしました」


 美咲が車から出てきた。

 手には楕円形の白い皿を持っている。

 俺の場所からでは何が盛られているのか見えない。


「おー、カプレーゼじゃん!」


 麻衣が言った。

 カプレーゼは日本でも有名なイタリア料理だ。

 スライスしたトマトとモッツァレラにバジルを散らし、オリーブオイルや塩で味付けしたもの。


「んふぅ! 美味しいー!」


「美咲は何を作っても完璧っすよー!」


「すごいですともー!」


 女性陣が順にカプレーゼを頬張っていく。


「風斗君らもいかがですか?」


 いよいよこちらにやってきた。


「もちろんいただくぜ、ありがとう」


 美咲から爪楊枝を受け取り、トマトとモッツァレラに突き刺す。

 皿の隅で難を逃れていたバジルの葉もまとめて口に含む。


「うん、文句なしの美味さだ。流石だな」


「素材がいいだけですよ」


「そんなことないさ、腕もいいんだよ」


 カプレーゼは誰でも作れる簡単な料理だ。

 それでも、美咲が作るとひとしおの美味しさがあった。

 味付けの加減が絶妙なのだろう。


「美咲、ここに座ってゆっくり食べてくれ」


 俺は立ち上がり、美咲からカプレーゼの皿を受け取る。


「よろしいのですか?」


「むしろ働かなくてすまない」


「いえいえ」


 美咲は椅子に座り、爪楊枝を使ってカプレーゼを食べる。


「美味しいです」


「だろー、美咲の料理は最高だぜ」


「風斗、私にもちょうだい」


「漆田少年、お姉さんもまだ食べていないぞー!」


「おっと失礼」


 由香里と涼子にも爪楊枝を渡す。

 涼子には爪楊枝だけでなく皿も押しつけた。


「お姉さんに洗えって言うのか少年!」


「おう!」


「くぅー、言ってくれる! よし由香里――」


「やだ」


「んがっ!? まだ何も言っていないのに!」


「だって、やだもん」


 大袈裟に崩れ落ちる涼子。

 それを見て俺と美咲は笑った。


「ねね、日本に戻ったらまた今日みたいなキャンプやろうよー! キャンピングカーで日本各地にいってさ! 絶対に楽しいよ!」


 麻衣が大きな声で言った。

 背後では背丈に匹敵する巨大な焚き火が燃えさかっている。


「キャンプをするのはいいけど車はどうするんだ? キャンピングカーってめちゃくちゃ高いぜ」


「そこはほら! 宝くじとか当ててさ!」


「宝くじが当たる前提で語るのはヤバすぎるだろ」


 そんなこんなで、俺達は夜のキャンプを満喫するのだった。

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