異世界ギフトはコンビニ経営権!だけど売れるのは水だけで詰んだ件について
元居た世界で死んだ俺は、神を名乗るやつによって、魂の循環とやらで剣と魔法と魔物が蔓延るファンタジー世界に転生することになった。
身体能力は高くもなく、転生の際に強化されるわけでもない。
それだと、たとえ魔法を使えるようになったとしても、到底生き残れるとは思えなかった。
そんな俺が選んだギフトスキル、それが【コンビニ経営権】!
元々コンビニバイトで日銭を稼いでいた俺の知識が、異世界で活かせるはずだ。
好きな場所にいつでもコンビニ店舗を呼び出せて、仕舞うのも自由。
おまけに超頑丈で、ドラゴンのブレスを食らってもびくともしない建物にしてくれるそうだ。
ただし最初は出せる商品が少なく、稼ぐことでスキルレベルが上がり、仕入れが増えるとの説明を受けて転生した。
最初に立っていたのは、マジで何もない草原。
魔物が怖くて即スキルを発動すると、眩しい光と共に、俺が働いていたコンビニ店舗そのものが出現した。
これだけ目立つ建物なのに魔物は寄ってこない。
試しに仕舞うと、何事もなかったように草原に戻る。
これなら逃げ場になると、少し探索を始めた。
魔物の姿も見えず、しばらくして、土がむき出しの明らかに道という場所を発見した。
ここならだれか通るだろうと、思い切って店を構え、今度は中を調べに入る。
店内は閑散とした陳列棚と冷蔵棚に冷凍ケース。
レジはあるが金はない。
倉庫に備え付けられたタブレットで仕入れを確認した俺は唖然とした。
「……水だけかよ。」
入荷できるのは二リットルのペットボトルのみ。
初回一箱無料で六本。
これが初期資金かと落ち込みかけた時、入店音が聞こえ急いで戻る。
店にいたのは中世騎士風の鎧を着た女性だった。
「いらっしゃいませ!」
「む、人がいたか。ここは店なのか?」
「はい!何でも屋のようなものです!今はほとんど商品ないですけどね。」
口八丁の説明だったが、彼女は頷いた。
「なるほど、クセノスのスキルか。何を売っている?」
「クセノス?……まぁいいや。今は水だけです!」
聞きなれない単語に引っかかりつつも答えると、憐れみの目を向けられる。
「……クセノスにしては悲しいスキルを得たな。飲料水は生活魔法で誰でも簡単に作れる。売れんぞ。」
「……は?」
思わずその場に膝をついた。
せっかく選んだスキルなのに、育てる前に詰んだらしい。




