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42.ただいまエンジェルズ

サーシャのサラダと、レアステーキの組み合わせはなかなか腹持ちがよく。


フィリアです、お腹いっぱいです、別腹のお茶菓子がちょっとしか入りませんでした。



結局お茶会では、護衛と離れる訳にはいけない!と焦ってしまったせいで、サーシャのサラダとレアステーキばかり食べていた気がします。


殿下も途中でいらっしゃったけれど、まだ子どもとはいえ、見目麗しい殿下はあっという間に令嬢方に囲まれてしまって、近づけませんでした。

これは私が挨拶できなくても当然というもの。



ある程度時間が経ち、交流のある方々と楽しい会話をしたあとは、あっさり帰ってまいりました。



ただいま!マイエンジェルズ!!



***




私はミントグリーンのドレスを蹴り上げるように走りました。

え?優雅?なにそれ美味しいの…?



「レイアちゃん!テオくーん!」


中庭に出てまず目に入る大きな池。来客時だけ動かす、ダミー代わりの噴水。その噴水像のすぐ足元で水浴びするマイエンジェルズ!


「フィーリお姉ちゃん!おかえりなさい!」

「フィーリ、遅い、待ちくたびれた」


夕焼けの陽光が、彼らの鱗肌を艶めかしく輝かせます。

出会ったときは幼児だった2人は、すっかり少年少女に成長しました。

双子とはいえ、彼らの姿は大きく異なります。


レイアちゃんは、成長につれ、灰色の鱗肌が薄くなってきました。

へそから下、下肢全体が鱗に覆われていたのに、今では腰から下と人肌部分が増えてきました。

上半身は変わらず人肌のまま、女性らしくまろやかな体つきになってきて…ママさんお手製のドレスを着るようになりました。


ええ、ダンやカザンみたいに若い男性も出入りする屋敷のなかで、無防備な姿は危険ですから。

レイアちゃんの柔肌が人目にさらされるだなんて、眼福と独占欲の天秤勝負だよ!


ドレスといっても上半身だけなので、女性用のフリルシャツみたいなものです。水中でもできるだけ邪魔にならないよう、生地にもこだわった特製品です。



対するテオくんは、鱗部分がますます濃くなりました。

下肢の足ビレ、左手のヒレと思われるところが、鋭い形となり、水をかく速度が大きく変わったとのこと。

かろうじて顔と、右半身は人肌であるぐらいで、目も鮫を思わせる縦の瞳です。

レイアちゃんと違って、服を着るのが嫌いらしく、ママさんがうきうきと用意する服を未だ一回も着たことがありません。

私にとっては眼福甚だしく…けしからんもっとやれげふんごふん、いえ、本人の自由とはいえ、一回ぐらい着ているところを見てみたいものです。




6年前からずっと仲良しの天使達ですが、約1年前衝撃的な事件がありました。


2人が10歳になる、ある満月の夜、突如2人が姿を消したのです。それも次の新月までの長い間。


何も言わず消えた2人を心配し、一方的に別れてしまったのか、それとも2人の身になにか起きたのか、私は寝る間を惜しんで捜索しました。

陛下には、珍しい魚人の亜人である彼らのことを報告しておらず、国家の力はなく、自力でできる限りの手を尽くしたのです。



再び私の前に現れた2人は、なんと、下肢が分かれていました。

脚になったんじゃないんです。鱗や尾びれがあるまま、脚のように2本に分かれていたんです。


亜人は大人になるまでの間、様々に姿を変えていくと聞いていましたが……

「お月さまに呼ばれたの」「呼ばれたから、仕方ない」

2人は姿を消した理由をそう言って教えてくれました。



基本的には水中にいる彼らですが、2本に分かれたことで、時々地上にあがってくるようになりました。

足じゃないのに器用に歩く2人の姿はなかなか興味深いです。




「フィーリお姉ちゃん?どうしたの?」

「…あっ、ごめんね、ぼうっとしちゃってた」

「フィーリ、疲れてる?」


レイアちゃんが呆けていた私に声をかけてくれました。

危ない危ない。煩悩まみれの本音がぺろりんちょするところだった。


「…どうせ、ろくでもないこと考えてたんでしょ」

ダンが小声で言ってきますが、聞こえません。


「聞いてよ2人とも。今日はせっかくの春のお祝いだったのに、ダンもカザンも偏食ばかりするから、全然お菓子が食べれなくって」

「お菓子いいなあ、私も食べたい」

「ダン!今すぐお菓子を!ありったけのお菓子をここに!」

「…フィーリは、レイアに甘すぎる」


テオくんも 大 好 き だ よ … !



「旦那様も奥様も、カザンも、皆夜会に行ってしまったしね。フィリアが言えば料理長何でも出してくれるんじゃない?」

鼻から溢れそうになる情熱を、ダンの提案で押しとどめた。

「そ、そうだね…今日は皆で夕食をいただきましょう。ちょっとした春のお祝いね。何が食べたい?」


「魚」

「サーシャ」

「貝と海老とお菓子がいいなあ」


な、なんだここは、偏食の集まりか…!


返事をしない私に向かって、テオくんが、鋭い歯を覗かせました。よ、喜んで料理長にお魚オーダーしてまいります!







亜人であるエンジェルズは、ユーメル邸を拠点として近海を統べる王と…なっているかはわかりませんが、テオくんは近海のヌシ達と縄張りを争うファイターに育ちました。

レイアちゃんは、歌と踊りと可愛いものが大好きな女の子です。

主人公はそんな2人に骨抜きクラゲです。

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