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OVER-DRIVE  作者: 陽芹 孝介
第八話 それぞれの想いと決着
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カストロは相手がアデル十傑と確信し、戦うモチベーションが上がっていた。

それはカストロの原動力が『強者を倒す』だからだ。よって元アデル十傑であるロックは、相手にとって不足はない。

カストロが強者を倒す事に拘るのには、理由があった。

カストロはロックを睨み付けた。

(オヤジ……待ってろよ……)

カストロは父親であるアドレン・ガンツを、異常な程に崇拝していた。

ただ単に父と息子……ではなく、絶対者と崇拝者……と、いった表情の方がしっくりくる程だ。

アドレン・ガンツ……ガンツ一家の棟梁であり、東の空を駆ける空の運び屋、飛空挺乗りだ。

しかしただの飛空挺乗りではない……世界中の空域に、空賊が蔓延(はびこ)っている昨今……飛空挺乗りには、常に危険がまとわりつく……。

その中でガンツ一家は空賊達と渡り合い、今や十隻の飛空挺を持つ一大組織にまで大きくなった。

カストロはそのガンツ一家の長男である。ガンツ一家の看板を背にまとう以上……。

「俺に負けは許されねぇっ!」

カストロの言葉に、マリーダはバイクを寄せた。

再び互の間合いに入り、カストロはロックに剣を振り上げた。

ロックも負けじと刀を構える……。


ガッキィーーーーンッ!


両者の刃は再び激しくぶつかり合った。

その衝撃は両者のバイクが震えるほどで、運転しているユイとマリーダは、バランスを崩さぬよう必死でハンドルを握っている。

ロックはカストロの表情に違和感を覚えた。

(コイツ……さっきまでと目付きが……)

カストロの口元は笑っていたが……目は鋭く、勝ち気に満ちていたのだ。

ロックは再び剣をいなして、カストロのバランスを崩し、すぐさま斬りかかった。

(こういう目をした奴は……)


キィーーーンッ!


ロックは目を見開いた。

(厄介だぜ……)

カストロはロックの刀を、逆ての腕で防いだ。仕込み手甲で防いでいたのだ。

カストロはロックの刀をガードしたまま、ロックの顔面目掛けて剣を振った。


ザシュッ!


カストロは目を見開き、ニィーと口角を上げた。

(斬ったと思ったが……)

ロックは頬を切っただけで、斬撃を紙一重でかわしていた。

カストロはすかさず二撃目を振り上げたが……。

「ロックッ!」

ユイはロックをフォローすべく、投げ針をカストロに投げようとしたが……。

「邪魔はさせないよっ!」

すかさずマリーダがボーガンの本体で、ユイの手を弾き、ユイに投げ針を投げさせない。

カストロは剣を勢いよく振りおろした。


ガッキィーーーーンッ!


ロックは何とか刀を両手で支え、カストロの剣を防いだが……。

(チッ!……重てぇ……)

カストロはさらに力を込めた。

「テメェの首を……オヤジへの土産にするぜっ!人喰いの……」

ロックはカストロの剣に耐えながら、険しい表情をした。

「オヤジだぁ?」

ユイは苦しそうなロックを見て、バイクをガンツ兄妹から離す……。それによりロックとカストロの間に距離ができた。

これにより、ガンツ兄妹のバイクは、ロックとユイの斜め後方に位置した。

「チッ!……マリーダッ!コーナに追い込めっ!逃げ場をなくしてやるっ!ゴールまでもう僅かだっ!決めるぞっ!」

「あいよっ!」

マリーダはカストロの指示に従い、バイクを再びロックとユイに寄せ出した。

ゴールまでもうそんなに距離はないが……ユイは迫ってくるバイクに焦りの表情をした。

「追い込まれるっ!ヤバイ……」

するとロックがユイに言った。

「おいっ!」

「何だよっ?」

「この勝負……勝ちてぇか?」

ロックの言葉にユイは一瞬目を丸くしたが、すぐに激昂した。

「今さら何を言ってんだっ!?勝ちたいに決まってるだろっ!」

しかしロックは質問を止めない。

「何のためにだ?」

ユイは少しイラつきながら言った。

「言ってる場合かよっ!姉ちゃんやバァのために決まってんだろっ!」

するとロックは懐から予備の通信オーブを取りだし、ユイの首に掛けた。

怪訝な表情のユイにロックは言った。

「これ持っとけ……」

「何をっ?」

ロックはニヤリとした。

「俺が飛び出したら、タコメーターの下にある赤いボタンを押せ……」

ユイは目を見開いた。

「飛び出したら?……ロックまさか、また?」

「俺が奴らを足止めする」

ユイは激昂した。

「アイツらは今までの相手と違うっ!」

「勝ちてぇんだろ?……だったら俺と自分を信じろ……」

ロックは後部座席で立ち上がった。

カストロはその様子に、怪訝な表情をした。

「何をするつもりだ?」

ロックはガンツ兄妹のバイクの正面目掛けて飛び出した。

「行けぇーっ!クソガキッ!」

「クソガキじゃないよっ!」

ユイはそう叫ぶと、赤いボタンを勢いよく押した。

ロックの行動に、ガンツ兄妹はさすがに驚いた。

猛スピードのバイクの正面に飛んできたのだ。正気の沙汰とは思えない行動だ。

たまらずマリーダはボーガンを、ロックに向けたが……。

(この近距離では……)

ロックは既にマリーダの目前におり、そのままマリーダを飛び越えて、カストロ目掛けて刀を振りおろした。


ガッキィーーーーンッ!


カストロはたまらず剣でロックの攻撃を防いだ。

(防げた……。力比べなら俺は負けねぇ……俺の勝ちだ)

カストロに刀を防がれたロックだったが……。

「うおぉーーーーっ!」

ロックは刀に力を込めた。カストロにパワー勝負を挑んだのだ。

カストロは防御に全パワーをつぎ込んだ。

「バカがっ!力比べでこの俺に……!?……」

カストロは目を見開いた。

(俺の腕が……震えてる!?)

思いもよらないロックの力に、カストロの上半身はのけ反っていく。

自分の頭上の少し後ろで行われている攻防を、マリーダは把握しきれず混乱気味だ。

「おうらぁーーーっ!」

ロックは雄叫びと共に刀を振りおろし、そのまま前方に一回転した。

カストロの剣は真っ二つに折れて、カストロの左肩から血が吹き出した。

「ぐおぉーーーーっ!」

カストロはそのまま後方に倒れ、バイクから落ちそうになる。

(俺が……負ける……オヤジ……)

カストロの脳裏に、これまでの一家の想い出が、走馬灯の様に甦る。


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