逃げてゆく夏
アナタの影を、追いかけて、歩き続けた
やがて、終わろうとしていた夏
いつも私が、少しあと、遅れるように
だって、見たかった、アナタの後ろ姿
アナタと写した写真に、そっと手のひら重ねてみる
それはただの慰めだって、言い聞かせても
どこか遠くで鳴いている、ヒグラシの声は儚くて
まるで迷い疲れた子供、ため息を知る
逃げてゆく夏、手を伸ばしても、待ってはくれない
見失って、消えてしまう、足跡すら残さずに
過ぎてゆく日に、尋ねてみても、答えてくれない
わかっていた、それはただの、通りすがりだってこと
途切れ途切れの、想い出を、つなぎ合わせる
いつも、傷ついてばかりだった
少女の私、背伸びして、意地を張っては
何も、得られない、空しさばかりを知る
大切なことはたくさん、もっと本当はあったはず
だけど今ここにあるだけが、精一杯で
いったいどこで失くしたか、思い出せない胸の痛み
ホントは捨ててきたんだって、知っているのに
逃げてゆく夏、私の声は、届いてくれない
ひとりぼっち、瞳の中、残像だけ焼き付けて
迎えてく日に、望んでみても、同じ日は来ない
閉じた瞳、浮かぶあの日、今もまだ傷をつけて
逃げてゆく夏、探してみても、もうここにはいない
砕け散って、消えてしまった、欠片すらも残さずに
過ぎ去った日は、なおも冷たく、慰めやしない
消えぬ想い、消したい想い、だけど諦めきれない
(-simplex.269g.net-、2010年9月12日公開)
読み返すと、失恋した女性のことが描かれていますね。
演歌じゃないですけど、昭和ブルース(とはいっても、本場のブルースとは全く違う)っぽい感じになるのでしょうか。
夏の作品は、他に発掘されない限り多分次回で出し切れるかと思います。




