16:元愉快な仲間発見!
メイダンと買い物を続けながら、私は考えていた。
攻撃力、防御力、持久力、加速力、色々回復。
カクテルにすると効果が現れるお酒は、この世界特有で、私が作るものにしか効果が宿らない。不思議な存在だ。
というか、全種類飲んでしまえば、私、最強じゃない?
魔法が使えなくても、やっていけるんじゃない?
私、かなりお酒強いし。
よし、もしもの時に備えて、お酒を持ち歩こう!
とはいえ、今のところ、店を出て行く気はない。お金が要るので。
カクテルでの身体強化後に強盗をしてしまえば早いけれど、普通に暮らしている獣人を襲うのは嫌だ。
これ以上、罪状を増やしたくないし。
買い物の途中、メイダンが店の人に冒険者が多いわけを尋ねた。
店員さんは快く答えてくれる。
「ああ、魔物のラッシュだよ。大量に雑魚が湧いているらしい。少し前に、入り口付近に生息していた強いやつが倒されたからかな。それとも、深部の魔物が倒されたからかな。雑魚なら普通の冒険者でも魔石を稼ぎやすいから、こうして集まっているんだ」
それって、ディヤさんとバニさんの言っていた大サソリじゃ……
または、メイダンが深い階層で退治した大物かも……
チラリと横を見ると、銀色の狼獣人は素知らぬ顔をしている。
「余所の人間も、いつも以上に多く来ている。セレーニのような『獣人蔑視』の奴らもいるから気をつけな」
「ああ、そうするよ」
買い物を終えた私たちは、そのまま帰路につこうとしたが……
路地にさしかかったところで悲鳴が聞こえた。思わず、メイダンと顔を見合わせる。
シュルツは比較的治安の良い場所だ。なにかあったのだろうか。
慌てて角を曲がり、声の響く方へ駆け出すと、メイダンもついてきた。
一台の大きな幌馬車が止まっている。
なぜか、窓が檻状になっているんですけど……これってやばいやつですか?
獣人狩りとかですか? 奴隷輸送中ですか!?
ちらりとメイダンを確認すると、ものすごく怖い表情を浮かべていた。
うん、許せないよね。
「お前はそこにいろ」
私を待機させたまま、馬車に向かって進んでいくメイダン。しかし……
「……っ!?」
彼は驚いて足を止めた。それもそのはず。
御者台に乗っていたのは、人間ではなく獣人だったのだから。
そして、荷台には……手枷足枷をつけられた人間がいる。
獣人が人間を捕まえて閉じ込めているということで間違いない。
「あ、あれ?」
檻の中に、見覚えのある人物が座っている。
「あれって……エルシーの八股相手の一人……王太子殿下の側近一号では?」




