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13. vs ラスボス前のド定番 復活ボスを打ち破れ編

長くなりそうなのでちょっと分割してます。

 氷帝が去っていった生徒会室。あまりにも衝撃的な光景に出遅れてしまったがこうしてはいられない。直ぐに奴を追わなければ。


「こら、動くな!」

「くっ……」


 拘束から抜け出そうとするが生徒会役員達にそれを封じ込められる。美奈と理奈も同じようで動けない様だった。くっ、一体どうすれば良い……? このままではあの変態と化した氷帝が神山姫季を手に入れてしまう。そんな焦燥に駆られながらもなんとか拘束から抜け出そうとした時だ。突然、生徒会室の扉が大きな音を立てて開け放たれた。


「何だ!?」

「いったい何を……何!?」


 役員達も驚いた様でそちらを振り返り、そして息を止めた。


「その女を倒すのはオレの役目だ……」

「え?」


 私も驚きそちらに目を向け、そして硬直した。


「見つけたぞ綾宮春華……いや、違うな」


 突然現れた人物。そいつはゆっくりとこちらに向けて歩き出す。

 おお、見よその姿を。


 フリルがふんだんにあしらわれたスカートを揺らす姿は華の様。顔の左右に伸びるは金色の縦ロールはしっかりと整えられており正に乙女の嗜み。しっとりと、しかし力強く歩くその姿から生まれる存在感は淑女の矜持。そんな乙女の塊であるその子の表情は――何故だかとっても厳ついの。だってそいつは――


「お前達を倒して俺は過去の俺を超える。勝負だ、パツキンドリル仮面!」


 パツキンドリルとメイド服を身に着けた不良、荒木健二が拳を握り高らかに咆えた!


「な、何故ここに……? しかもそんな逞しいド変態になって……」

「言っただろう。俺は過去の俺を超えると。その為にはお前達パツキンドリル仮面を俺が倒さなければならない。他人にやられるなどあってなるものか。そして!」


 ばさぁ、と荒木がスカートを翻し、


「お前たち倒す為ならどんなトラウマだって乗り越えて見せる。これは俺のその矜持の証だ!」

「いや、むしろ全力で矜持を廃棄処分してるようにしか見えないんだけど……」


 荒木健二がニヒルな笑みを浮かべる。どうしよう、台詞は正にライバルが主人公のピンチに駆け付ける胸熱展開に似てるのに、荒木の格好がパツキンドリル&メイド服なせいで何ともツッコミ辛い!


「っ、春華様!」


 と、そこで美奈が声を上げる。その意味は直ぐに分かった。荒木健二の突然の登場とその姿。そしてさっきスカートを翻した時に一瞬見えたピンク色のパン―――いや、謎の布の衝撃に、私達を拘束する生徒会役員達の拘束が緩んだのだ。咄嗟に私は抜け出すと拘束していた生徒会役員へと蹴りを入れた。


「しまっ――」

「遅いわ」


 一撃必殺の名の下に打ち倒す。見れば理奈と美奈も同じく抜け出し生徒会役員を地に沈めていた。よし、これで氷帝を追える!


「感謝するわ荒木健二! この恩は―――」

「何を勘違いしている?」


 あれ? 荒木が好戦的な笑みを浮かべ構えた。


「言っただろう、俺の目的はお前達を倒す事だと。さあ、俺と勝ぷっへらぁ!?」


 荒木が言い終わる前に、私は荒木の鳩尾へ蹴りを入れた。荒木はピクピクと痙攣しながら床に落ちる。


「よし、勝ったからOKね」

「いやいやいや!? 春華様!? 流石にそれは無いんじゃ!? 折角助けに来てくれたのに!」


 満足げに頷いていたら何故か美奈が突っ込んできた。


「何言ってるの美奈? だから望み通り戦ったじゃない。見て、彼の顔を。幸せすぎて泡を吹いているわ」

「絶対違いますよねそれ……」

「そんな事よりも春華様、美奈」


 理奈が注意を促す。そうだ、まだ生徒会役員は全滅していないし氷帝も追わなければいけない。


「理奈、美奈この場は任せるわ。私は氷帝を追う!」

「畏まりました」

「色々と言いたいことはありますけど今はそれどころじゃないですよね……」


 いつもの様に落ち着いた理奈の返事と、達観した雰囲気の美奈の返事を背に私は氷帝を追って走り始めた。




 氷帝はどこに行ったか。それは探すまでも無く簡単だった。だってあの変態が走っているんだもの。学園のあちこちから悲鳴と怒号が響き渡っている。それを追っていけばいいのだ。


「思い通りにはさせないわよ。私達の明るい未来の為に必ず―――っ!?」


 ぞわり、とした感覚従い咄嗟に立ち止まり、前方の曲がり角に視線を向ける。するとそこから現れたのは意外な人物だった。


「委員長?」


 そう、姿を現したのはどこか憔悴した様子の委員長だった。彼はフラフラとおぼつかない足取りで現れると肩を震わせながら声を漏らす。


「どうして……」

「なに……?」


 委員長は肩を震わせ、涙を流しながら昏い、昏い眼でこちらを見据え、


「ずっと曲がり角でスタンバって居たのに、何故林川君は僕に愛の激突(物理)をしにこないんだあああああああああああああ!?」

「知るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 錯乱して何故か掴みかかってきた委員長の顎に思わず膝蹴りを入れたけど、私は決し悪くないと思う。委員長は『ぐほぁっ♪』と何故か苦悶と歓喜が入り混じった複雑な表情で呻きを上げて地に伏せていった。


「はぁ、はぁ、はぁ、この忙しいときに面倒な。早く氷帝を追わな――っ!?」


 再び何かの気配を感じ、私は咄嗟に気配の方向――背後に向けて回し蹴りを放つ。


「あ、委員長やっと見つけってぐはぁぁぁぁぁ!?」

「あ」


 思わず攻撃しちゃったけど、気配の正体は林川だった。彼は私の蹴りをまともに喰らいその場に崩れ落ちていった。


「…………」


 これは、これは完全に私の誤爆。本来ならば彼を助け起こして介抱してやるべきなのだろう。だが今の私にはやらなければならないことがある。少し考え、私は決めた。


「悪いわね。後で謝るからそこに居て頂戴」


 倒れた林川を委員長の横に並べて置いておくことにした。これなら安心ね!

 私は安心すると、再び氷帝を追い始めた。何か背後で『はっ!? 林川君の寝顔が目の前に……っ!?』とか変な声が聞こえた気がしたが気のせいだろうそうに違いない!




委員長達を棄て置き再び走り始めたが、またしても正面に人影が立ちはだかった。ショタ系攻略キャラ、朱鷺信吾だ!


「見つけたよ綾宮春華! お前のせいで僕はくまさんが怖くなっちゃったんだ! しかもそのせいで皆の前で泣いちゃうし、お爺ちゃんにはしごかれてお菓子も禁止令がでちゃうし! だけど夢を見たんだ。夢の中で変な老人が言ったんだ! お前を倒し、乗り越えて強さを証明すればすべてが元通りになるって! だから喰らえ、朱鷺流古武術、雷武怒――」


 ズドンッ、と響く重低音。そして腕に感じる心地よい衝撃。それらと共に私が放った強化ゴム弾は朱鷺信吾の鳩尾にのめりこみ、彼は『ほぇうぇ!?』と奇怪な声を上げて宙に舞い、続いてバシィッ、と音を立てて放たれた電気銃が宙の彼を捕えその意識を奪った。


「……甘いわね、乗り越えるなんて生ぬるい。障害は打ち砕き踏み越えていくものよ」


 私は急ぎながらも念の為と思って道中で回収してきた強化ゴム弾と電気銃を懐にしまうと廊下に崩れ落ちた朱鷺信吾を踏み越え氷帝の追跡を再開した。




「このパターンだと次に来るのは……」


 氷帝を追いつつも、私は胸裏に感じる胸騒ぎに眉をしかめる。

 もうね、本当に嫌な予感がひしひしとするのよ。確信とも言っていいわ。だってこの状況、どう考えだって次があるじゃない。いや、アイツは海外だしもう片方は北国だし流石に……そう考えていた矢先、正面から何かが飛んできた。


「これは……クナイ!?」


 咄嗟に横に跳んだ私の目前を、数本のクナイが通り過ぎてゆく。冷や汗を流しつつ飛んできた方向へ視線を向けると一組の男女がこちらに歩いてきていた。

 それは見麗しい二人組だった。窓から差し込む陽光を浴びる金髪は輝き、白く陶器の様な素肌と相まって神秘的な雰囲気を醸し出している。男の方は長身で、綺麗すぎる程に整えられた顔立ちと柔らかな笑顔を浮かべている。女の方は小柄であるが男に良く似つつも、精巧に作り上げられたビスクドールの様な可愛らしさを持つ少女だ。

 そんな二人が並んだ姿はとても神秘的だった。まるで異世界に迷い込んだかのような感覚さえ覚える。この二人の前では私は脇役だ。路頭の石と変わらない。それほどまでに神秘的な二人が目の前に、居た。そしてその光景に声も出ない私に少女の方が笑みを浮かべて口を開く。


「ふふ、うふふふふふふふふふふふふふ。夢を、夢を見ましたの。夢の中で老人は言いました。金色の縦ロールの悪魔を討伐すれば私とお兄様は永遠に幸せになれるって! さあ、覚悟しなさい金色の縦ロールの悪魔っ! 日本の文化を取り入れて一段階段を上がったこの私、魔界忍者セリカと、愛の聖犬クリストファーお兄様がお前を討つ!」


 そう叫ぶ魔界忍者セリカさんはピンクブロンドに輝く忍者服に背中に背中に謎の大剣を背負い、


「わん」


 愛の聖犬クリストファーさんは光を失った瞳に虚ろな笑み(柔らかな笑み)を浮かべ、首に嵌められた首輪をチャリ、と鳴らしながら己も鳴いた。


「…………」


 彼女達は確かに神秘的だった。異世界だった。近づきたくなかった。そして何よりも関わりたく無かった。


「お、おおぅ……っ」


 これが私の罪なのか。目の前の悪夢は私が作りだしたのか。

 私は己のしでかした事の結果を実際に目の当たりにして顔を覆いつつ、強化ゴム弾の撃鉄を静かに引くのだった。

これは、クナイ!?


そんな単語を書いた時ふと思いました。恋愛ジャンルでこのセリフはあり得るのだろうか、と。


うん、ありだ!(自棄

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