エピローグ『お疲れ様でした!』
渡辺先生からのご褒美の飲み物を飲み終わったところで、俺、優奈、井上さん、佐伯さん、西山は帰路に就いた。
5人で談笑しながら歩き、学校の最寄り駅である高野駅の北口まで来たところで、井上さん、佐伯さん、西山と別れた。
優奈と2人になり、俺達は自宅があるマンションへと向かう。
マンションに入り、自宅のある10階までエレベーターで上がり、1001号室の自宅に入った。
『ただいま』
優奈と俺は声を合わせてそう言い、ただいまのキスをする。家に帰ってきて、優奈とただいまのキスをするとほっとするなぁ。
少しして優奈の方から唇を離す。すると、目の前には持ち前の柔らかい優奈の笑顔があって。そのことにもまたほっとする。
「あの、和真君。さっそくお風呂に入りませんか? 今日は一日中球技大会で汗を結構掻きましたからさっぱりしたくて」
「そうだな。外でサッカーを何試合もやったから、俺も汗掻いてるし」
「では、お風呂に入りましょう」
「ああ。球技大会で疲れもあるから、この前買った入浴剤を入れるのはどうだろう?」
つい先日、あるアニメで温泉に入浴するエピソードを観た影響で温泉気分や旅行気分を味わいたくなったのをきっかけに、檜の香りがする入浴剤を買ったのだ。買った日にさっそく使ったら、檜のいい香りがしてとても気持ち良かった。
「それはいいですね! あの入浴剤を入れたお風呂はとても気持ち良かったですから、球技大会の疲れがより取れそうな気がします」
とっても明るい笑顔で優奈は快諾してくれた。
「ありがとう。じゃあ、入浴剤を入れようか」
「はいっ」
お風呂掃除は既にやってあるので、その後にすぐにお風呂のスイッチを入れる。
湯船にお湯が貯まるまでの間は着替えを用意したり、明日の学校の荷物を準備したりするなどした。
15分ほどしてお湯が貯まったとアナウンスされたので、俺達は着替えを持って浴室に繋がっている洗面所へと向かう。
洗面所に入り、俺達は体操着や下着を脱いでいく。お互いに姿が見える中で。
好き合う夫婦になり、優奈と肌を重ねてからは、お風呂に入る際に優奈が服を脱ぐ姿を見ているけど……体操着を脱ぐのを見るのは初めてだからちょっとドキドキした。あと、汗を結構掻いたのもあって、いつもよりも汗混じりの優奈の甘い匂いが濃く香ってくることにも。
衣服を全て脱いで、洗濯カゴに入れようとしたとき、
「あの……和真君。和真君の体操着のシャツの匂いを嗅いでいいですか?」
優奈がそんなお願いをしてきた。優奈も全て衣服を脱ぎ終わっている。
「ああ、もちろん」
「ありがとうございます」
優奈に体操着のシャツを渡すと、優奈はシャツの匂いをクンクンと嗅ぐ。優奈は汗を含めて俺の匂いが好きなので、脱いだ俺の服を嗅ぐことがある。その姿はとても可愛らしい。
「とてもいい匂いです。今日は一日ずっと着ていましたし、外でたくさんサッカーをしていたので、いつも以上に汗の匂いが強く感じられていいですね……」
優奈はうっとりとした様子になってそう言う。汗をいっぱい掻いたけど、大好きなお嫁さんの優奈にいいと言ってもらえて嬉しいよ。
「それは良かった。……優奈さえ良ければ、俺から直接嗅いでもいいぞ」
「嬉しい提案ですねっ。では、そうしましょう」
優奈は俺の体操着のシャツを洗濯カゴに入れ、俺のことを抱きしめてきた。俺の胸に顔を埋めて、「すー、はー」と深呼吸をする。
「あぁ……とてもいい匂いです。汗の匂いと和真君のそのものの匂いが感じられて。好きです……」
「そうか。良かった」
提案してみて良かったよ。そんなことを考えながら、優奈の頭を優しく撫でる。すると、優奈の髪からはコンディショナーの甘い匂いも感じられる。汗の匂いも感じられて。結構好きな匂いだ。
それから少しの間、優奈は俺を抱きしめながら俺の匂いを堪能した。何度も深呼吸をするので、優奈の生温かい鼻息が胸にかかって気持ちがいい。
「和真君。ありがとうございました。満足です」
優奈は俺の胸から顔を離すと、満足そうな笑顔でお礼を言ってくれた。
「いえいえ。……優奈が俺の胸に顔を埋めて匂いを堪能したから、俺も優奈の胸に顔を埋めて匂いを堪能したいな。どうかな?」
「もちろんいいですよ。好きなだけ感じてください」
「ありがとう」
俺は優奈のことをそっと抱きしめて、優奈の胸に顔を埋める。
優奈の体の温もりや胸の柔らかさと一緒に、汗混じりの優奈の甘い匂いが香ってくる。優奈が出場した女子バスケットボールの会場は涼しい体育館だったけど3位決定戦まで何試合も戦ったし、俺や西山が出場して屋外で実施したサッカーの試合を応援してくれていたから、いつもよりも汗の匂いが濃く感じられる。それがとてもいいなって思える。
「和真君。どうですか? 私の匂いは……」
「……凄くいいよ。いつもよりも濃い汗の匂いもいい」
「良かったですっ。和真君が私の汗の匂いが好きなのを知っていますけど、たくさん汗を掻いたのでどう感じるかなと思いまして。えっちしたときも汗は掻きますけど、今日はそれ以上なので」
「ははっ、そうか。……本当にいい匂いだよ。好きだ」
「嬉しいですっ」
優奈が弾んだ声でそう言うと、俺の頭に優しい感触が。きっと、優奈が俺の頭を撫でてくれているのだろう。
それから少しの間、俺は優奈の匂いを堪能した。大きな胸の柔らかい感触も。
「優奈、ありがとう。とても良かったよ」
「いえいえ。楽しんでもらえて何よりです。では、お風呂に入りましょうか」
「ああ」
俺達は浴室に入る。先日買った檜の香りがする入浴剤を持って。
さっそく、俺は浴槽に貯まったお湯に入浴剤を入れて、両手でかき混ぜていく。お湯の湯気に乗って入浴剤の檜の香りが浴室全体に広がる。この段階で既に温泉気分や旅行気分も味わえて特別感がある。
優奈、俺の順番で髪や体、顔を洗っていく。髪や背中はお互いに洗いっこして。
優奈は俺の背中を流し終わると、一足先に入浴剤入りの湯船に浸かる。
「あぁ……とっても気持ちいいです。温かいのがたまらないです……」
と、凄くまったりとした様子で優奈がそう言った。そんな優奈を見ていると、俺も早く湯船に入りたくなるよ。
俺は普段よりも早く体と顔を洗っていった。
「……よし、これで顔も洗い終わった。俺も湯船に入るよ」
「はい、どうぞ」
俺は湯船に入り、優奈と向かい合う体勢で腰を下ろした。優奈が入っているのもあり、デコルテの近くまでお湯に浸かる形に。
「あぁ……気持ちいい」
優奈の言う通り、温かいのがたまらない。体に沁みるけどいい感覚だ。いつも以上に気持ち良く感じる。そう感じられるのは、球技大会で体をたくさん動かしたことや入浴剤を入れたおかげなんだろうな。入浴剤の檜の香りが感じられるのもあり、とても癒やされる。
「本当に気持ちいいですよねぇ。球技大会で体を動かしましたし、入浴剤を入れたおかげですね。和真君、入浴剤を入れようと提案をしてくれてありがとうございます」
「いえいえ。入浴剤を入れてみて良かったな」
「そうですねっ」
優奈はニコッとした笑顔でそう言った。湯船に浸かっている影響か、頬がほんのりと上気していて。だから、可愛いだけでなく艶やかさも感じられた。
「和真君。今日は球技大会お疲れ様でした!」
「ありがとう。優奈も球技大会お疲れ様」
「ありがとうございますっ。教室でみんなと飲み物を飲んだときに言ったように、今日の球技大会は今までで一番楽しくて、一番いい球技大会になりました。高校最後の球技大会がそんなイベントになって良かったです」
優奈は柔らかい笑顔で俺のことを見つめながらそう言ってくれる。そのことで、体だけでなく心もポカポカになっていく。
「そうか。良かったな。……俺も今までで一番楽しい球技大会になったよ。最後の球技大会が最高の球技大会になって良かった」
「そうですかっ。良かったですっ。……今後ある高校最後の体育祭や文化祭も今までで一番のイベントにしたいです」
「そうだな。ただ、優奈と一緒ならどっちも一番いいイベントになるだろうって思うよ。今日の球技大会がそうだったから」
俺は優奈のことを見つめてそう言う。今日の球技大会であった様々なことや、優奈が見せてくれた笑顔を思い出しながら。
優奈は笑顔をとても嬉しそうなものに変えて、
「そう言ってくれて嬉しいです。私も同じ気持ちです。和真君が一緒ならとても楽しめて、今までで一番のイベントになると思います!」
優奈は弾んだ声でそう言ってくれた。そして、俺に近づいてきて、キスしてきた。
優奈にキスされるとは思わなかったのでちょっとビックリした。ただ、その思いはすぐに消え、柔らかくていつも以上に温かい優奈の唇が心地いいと思えて。
少しして、優奈の方から唇を離す。目の前には変わらず嬉しそうな優奈の可愛い笑顔があって。
「とても嬉しくてキスしちゃいました」
「ははっ、そうか。……今後のイベントも一緒に楽しもうな。今までで一番のイベントにしよう」
「はいっ!」
「ああ。約束だ」
今度は俺からキスをする。その際に優奈のことを抱きしめて。
その後も優奈と抱きしめ合ったり、優奈が俺を背もたれにしたりする形で湯船に浸かり、今日の球技大会の話をしながら、優奈と一緒に体を癒やしていくのであった。
特別編6 おわり
これにて、この特別編は終わりです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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